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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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六十一話 王の問いと四英雄

 中央を行く赤い絨毯がある。

 見たこともないほど豪華なものだ。

 その奥にはこれまた金で派手な装飾をされた豪華な玉座がある。

 そこに座っているのは六十代ぐらいの老人だ。

 金の王冠や赤いマントを身に付け、ひじ掛けにもたれ、手を顎につけてこちらを見ている。

 まるで値踏みでもするかのようだ。

 その目の前までグレゴールは歩いていく。

 二人は後を追う。


「グレゴール、この者たちは?」


 声は低く、重々しい雰囲気を漂うわせている。

 それに応答するようにグレゴールは答えた。


「はっ、今日来た志願兵の一部です」

「お前が連れて来たからにはなにかあるんだな」

「はい。彼らは魔術学校を首席で卒業した者たちです。先ほど手合わせをしましたが実力は本物でした」

「それがどうした」


 あまり興味はなさそうだ。

 王はそれどころではないといった顔をしている。

 俺も主席みたいに言われてる?


「そして彼らは反乱軍の一員でもあるのです」


 王は目を見開いた。


「ほう。話を聞こう」

「ロイ」

「俺!?」


 話すことなんてないぞ?


「なぜここへ来た?連邦内での争いは手出し無用であるぞ」

「俺は反乱軍としてきたんじゃない」


 グレゴールは驚いた顔をしてロイに制止に入る。


「王の前であるぞ」

「だったら連れて来たのが間違いだったな」

「グレゴール、下がっておれ」

「は、はっ」


 王はロイと二人で話をしたいらしい。


「では理由を聞こう」

「ここは元々俺らの故郷みたいなもんだ」


 今では違う場所に移ってはいるが、その記憶はちゃんとある。

 ここでアリアスと遊んだこと、父と二人で生活していたこと。

 たくさんのことを覚えている。


「故郷を守りたいと申すか」


 ああ、とロイは力強く応答した。


「じゃが、守るとは即ち、敵であるロザリンドの兵を殺すのじゃぞ。貴様に人を殺める覚悟はあるのか?」


 それを言われてはっ、とする。

 今までの敵は帝国やごろつきだった。

 だがて今回は帝国ではない一般兵だ。

 覚悟はしていたが、それは帝国に対するもの、ロザリンドにではない。


「その表情を見ればわかる。出直せとはいわん。戦いが始まるまでに考えておくのじゃな」


 ロイは返事をしなかった。

 王を見れない。

 目線は下を向いている。

 グレゴールは二人に言った。


「さあ、部屋へ案内する。行くぞ」

「う、うん」


 返答したのはアリアスだけだ。

 ロイがショックを受けているのを見て、アリアスは手を引いて歩き出す。

 そこに言葉はなかった.

 あえてかけなかったのかもしれないが、その時のロイは勘ぐるほど頭は回ってはいなかった。


「さあ、ここだ」


 気付けば見知らぬ場所だ。

 長く前を見ていないような気がする。

 目の前には木でできた扉がある。


「すまない。ここは二人部屋になるが……構わないか?」

「構わないわ」


 では、と言ってグレゴールは去っていった。

 兵長ともなれば忙しいのだろう。

 困り顔のアリアスはずっとロイの手を握っていた。

 その逆の手で扉を開けた。

 中には両端にベッドが二つと机がその間に置かれているだけの殺風景な部屋だ。


「やっと一息つけるわね」

「……ああそうだな」


 感情は込もっていないようだ。

 作業にみたく返事したロイはゆっくりとした足取りでベッドへと向かった。

 そして倒れるが如く頭からうつ伏せにダイブした。

 部屋にはロイの呼吸音だけが聞こえる。


「ねえ、さっきの話だけど……」


 アリアスが切り出した。


「その話はやめてくれ……」


 どうせ王に言われたやつだろ、と。


「違うわ。四英雄の話よ」


 アリアスはなんとここの空気を変えるべく、グレゴールの話にでてきた四英雄を出した。


「そうか。じゃあ聞く」


 顔だけアリアスの方へ向けた。


「は、話しにくい……」

「あ、そうだな」


 ロイは身体を起こして座った。

 アリアスももう一つのベッドに座った。


「まず四英雄のイーヴァイン様の話ね」


 長くなりそうだ。

 質問すればアリアスも手間が省けるだろう。


「わざわざ様なんかつけなくてもいいだろ」

「つけないと教徒に何されるかわからないわよ」

「まじかよ。宗教怖い」

「もう進んでいい?」


 逆に延ばしてしまったようだ。


「どうぞ」


 仕切り直しといった感じでアリアスは一つせき込んだ。


「で、イーヴァイン様なんだけど、言っちゃえば四英雄の中でも一際目立つ存在よね」

「へぇ……」

「前に勇者を名乗る人に会ったでしょ?」

「……お、おう?」


 思い出し中……。 

 確かパウロって名前の奴だ。

 けど結局は偽物だったはず。


「勇者っていうのはこのイーヴァイン様の子孫のことなのね」

「だったらそこらじゅうにいそうだけどな」

「でも証拠がないでしょ?」

「あいつらだって……あっ」


 一つだけあった。

 鎧だ。

 パウロは派手派手な赤の鎧を着ていた。

 あれが証拠の役割を果たしていたらしい。


「イーヴァイン様についてはそんな感じね」

「他の三人は?」

「あとはバシリウス・リヒター・ド・ランジェ=エール様と……」

「名前長くないか!?」


 久々に元気ある発言だった。


「まあ、昔の人はそういうの結構多いらしいわ」

「半端ねぇな」

「それで残りの二人がアナスタージア・ミュンハヴィラント様とラインヒルデ・シュパンベルクね」

「最後だけ様が抜けてるぞ」


 仲間はずれ、ダメ絶対。


「それはいいのよ。四英雄に入れるかも怪しい人だから」


 えっ?と聞き返さずにはいられなかった。

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