五十六話 試験
城内は見たこ事がないほど広く、そして豪華であった。
部屋の中だというのに明るい。
何百本、何千本という蝋燭が並べられていて、夜だろうが明るさを保っているに違いない。
さらに絵画、鎧、武器などが要所要所に飾られている。
下には赤い絨毯が高級感を演出しておりまさに城といった感じだ。
あまりの豪華さに思わず息を呑み、話す声も小さくなってしまう。
「これが城かぁ……」
「こんなに広かったんだ。外から見てるよりずっと広い」
「城はその持ち主、領主の格やら権力やらを象徴する役割もある。だからどこもこんなもの、これ以上もザラにある」
「へぇ……」
これで普通ぐらいとかぶっ飛んでんなぁ。
途中で大きな通路を左へと曲がった。
それはどうやら城とは別の場所へと通じているようだ。
「こっちにはなにがあるんだ?」
「訓練場だ」
「へ?」
「手合わせ願おう」
本当に主席かどうかを試すためだろうか。
俺は別に主席でもなんでもないのになぁ。
「でも俺」
「心配ない。少しだけだ」
消された。
言葉をかき消された。
否定できずに話が進んでしまう。
「アリアスが先にやってくれ」
「えっ?私?」
「二人同時でもいいぞ」
嘗められてるみたいだ。
遠慮なく二人でいかせてもらおう。
「一気に片をつけちまおうぜ」
「あんたプライドとかないのね」
「あ~聞こえない」
プライド?わっけかわんね。
「あれが訓練場だ」
「すげぇ」
某クラインと戦った隠れ家の訓練場規模が違う。
広さ同じくらいだが設備が整っている。
剣から槍、弓まで揃っていてまさに訓練場という感じだ。
「ちょうど今は兵士は飯の時間だ。気兼ねなく戦えるだろう」
「いらねぇ気遣いだ」
「早速で悪いがもう戦えるか」
「お、おう」
グレゴールは背負っている剣を手に持った。
剣は幾分普通のものよりおおきいが、グレゴールの体格の所為でぴったりと合っている。
「では始めようか」
「ちょ、ちょっとまって!」
「ん。いいぞ」
アリアスを呼んで作戦会議を始める。
「どうする?全力でいく?」
「魔法使っていいの?」
「いいんじゃね」
二人で来いというぐらいだから魔法もいいだろ。
「なら援護するから……あ、ロイは近接無理だったわ」
「ソードブレイカーならあるぞ」
「それなら前線で耐えて。離れた瞬間に魔法の一撃をいれるから」
「それでいこう」
作戦は決まった。
「もういいぜ」
「そうか。では向こうの位置へついてくれ。足元に印がある」
「これか」
グレゴールとの間は十メートルない程度。
ロイの右にはアリアスがいる。
ロイは懐にしまっていたソードブレイカーを持つ。
「ほう。珍しい武器だ。速さを活かすためか、それともその他武器が使えないか」
「うるせぇ。さっさと始めろ」
バレているみたいだ。
この男はクラインと同じレベルの者だろう。
「では、始め!」
大声でグレゴールがそう言った瞬間、ロイは前へと走り出す。
グレゴールも負けじとロイへ走り出す。
「追い風」
振り上げたアリアスの手からグレゴールに向かって風が吹く。
グレゴールは減速、逆にロイは加速する。
「もらったぁ!」
ロイは速度そのままにナイフを突きだした。
だがそれは空を切るだけだった。




