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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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五十六話 試験

 城内は見たこ事がないほど広く、そして豪華であった。

 部屋の中だというのに明るい。

 何百本、何千本という蝋燭が並べられていて、夜だろうが明るさを保っているに違いない。

 さらに絵画、鎧、武器などが要所要所に飾られている。

 下には赤い絨毯が高級感を演出しておりまさに城といった感じだ。

 あまりの豪華さに思わず息を呑み、話す声も小さくなってしまう。


「これが城かぁ……」

「こんなに広かったんだ。外から見てるよりずっと広い」

「城はその持ち主、領主の格やら権力やらを象徴する役割もある。だからどこもこんなもの、これ以上もザラにある」

「へぇ……」


 これで普通ぐらいとかぶっ飛んでんなぁ。

 途中で大きな通路を左へと曲がった。

 それはどうやら城とは別の場所へと通じているようだ。


「こっちにはなにがあるんだ?」

「訓練場だ」

「へ?」

「手合わせ願おう」


 本当に主席かどうかを試すためだろうか。

 俺は別に主席でもなんでもないのになぁ。


「でも俺」

「心配ない。少しだけだ」


 消された。

 言葉をかき消された。

 否定できずに話が進んでしまう。


「アリアスが先にやってくれ」

「えっ?私?」

「二人同時でもいいぞ」


 嘗められてるみたいだ。

 遠慮なく二人でいかせてもらおう。


「一気に片をつけちまおうぜ」

「あんたプライドとかないのね」

「あ~聞こえない」


 プライド?わっけかわんね。

 

「あれが訓練場だ」

「すげぇ」


 某クラインと戦った隠れ家の訓練場規模が違う。

 広さ同じくらいだが設備が整っている。

 剣から槍、弓まで揃っていてまさに訓練場という感じだ。


「ちょうど今は兵士は飯の時間だ。気兼ねなく戦えるだろう」

「いらねぇ気遣いだ」

「早速で悪いがもう戦えるか」

「お、おう」


 グレゴールは背負っている剣を手に持った。

 剣は幾分普通のものよりおおきいが、グレゴールの体格の所為でぴったりと合っている。


「では始めようか」

「ちょ、ちょっとまって!」

「ん。いいぞ」


 アリアスを呼んで作戦会議を始める。


「どうする?全力でいく?」

「魔法使っていいの?」

「いいんじゃね」


 二人で来いというぐらいだから魔法もいいだろ。


「なら援護するから……あ、ロイは近接無理だったわ」

「ソードブレイカーならあるぞ」

「それなら前線で耐えて。離れた瞬間に魔法の一撃をいれるから」

「それでいこう」


 作戦は決まった。


「もういいぜ」

「そうか。では向こうの位置へついてくれ。足元に印がある」

「これか」


 グレゴールとの間は十メートルない程度。

 ロイの右にはアリアスがいる。

 ロイは懐にしまっていたソードブレイカーを持つ。


「ほう。珍しい武器だ。速さを活かすためか、それともその他武器が使えないか」

「うるせぇ。さっさと始めろ」


 バレているみたいだ。

 この男はクラインと同じレベルの者だろう。


「では、始め!」


 大声でグレゴールがそう言った瞬間、ロイは前へと走り出す。

 グレゴールも負けじとロイへ走り出す。


追い風リュッケンヴィント


 振り上げたアリアスの手からグレゴールに向かって風が吹く。

 グレゴールは減速、逆にロイは加速する。


「もらったぁ!」


 ロイは速度そのままにナイフを突きだした。

 だがそれは空を切るだけだった。

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