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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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五十二話 旅立ちの朝

 いろんな人に言わないとなぁ。

 ロイはベッドでずっと考えていた。


「まぁ~さか忘れたんじゃないでしょうね?」

「ん?何を」

「そのまま寝てなさい。今から楽にしてあげるから」

「覚えてる覚えてる!服買いに行くんだろ?」


 それほど楽しみにしていたのかな?


「明日から行くんでしょ?」

「そうなるかなぁ、ってとこ」

「言っとくけど国同士の戦いに一人二人加わったところで変わりやしないから」

「わかってるつもりだ」


  それは前回で痛感した。


「で、どっちにつくの」

「そりゃ、ルーツィエかなぁ……」


 曖昧になってしまった理由は短い時間ではあったがロザリンド国と一緒に戦ったからだ。


「そんな気持ちじゃ絶対死ぬわよ」

「すみません」


 ぺこりと頭を下げる。


「まあ、いいわ。おやすみ」

「おう、おやすみ」


 可視状態を解いて姿が見えなくなる。

 明日も早そうだ。

 枕もとの蝋燭を吹き消して眠った。


 パッと目が覚める。

 今日は珍しく目覚めがいい。

 すぐに起きて銃を肩にかける。

 そして部屋を出てアリアスのところへ行く。

 コンコンとノックすると中から返事が聞こえてくる。


「は~い、開けますね~」


 扉が開いてアリアスと目が合う。

 目を見開いているのがわかった。


「あ、あんたにしては早起きね」

「ああ、早めに出た方がいいと思って」

「そう。じゃあ準備するわね」


 一旦部屋に入っていったアリアスは二、三分で出てきた。


「さ、行こっ!」

「まずクラインとラーシャたちに言わないとな」

「でもクラインは許しが出ないんじゃない?」

「故郷を見てみたいって言えば断りはしないだろう」


 まず向かったのはラーシャの部屋だ。

 部屋の扉をノックした。


「はあ、どちら様でしょうか?」


 返事と共に開く。


「おっす」

「ロイさんにアリアスさん?こんな時間にどうしたんでしょうか?」


 隙間からはセシリアが見えた。


「実はさぁ……」


 ルーツィエ国に行く旨を伝えた。

 ラーシャになら本当の事を言ってもいいだろうと偽りなしで告げた。


「そうですか。わかりました。止めたって無駄というのはわかってますし」

「ありがとうな」

「ただし、条件があります」

「ん?なんだ?」


 ラーシャはニコッと笑って言った。


「無事に帰って来てくださいね」


 それに力強く応答する。


「おう!」


 二人はラーシャに手を振ってその場を去った。

 次にクラインがいるであろう部屋を目指す。

 まだ朝早いので静かで人の気配がない。


「うう、さむっ!」

「冬だしなぁ。そろそろ十三月か?」

「そう。今年最後の月だね」

「早いなぁ」


 毎年早くなっていく感覚がある。

 話しているともうクラインいつもいる部屋だ。

 アリアスの時と同じようにノックをする。


「んん?こんな朝っぱらから誰だったく」


 扉越しに愚痴まがいの言葉を聞かされた。

 そしてゆっくりと扉が開く。


「おお……二人揃ってどうした?悪いが結婚の牧師ならできねぇぞ?」


 オヤジリアンジョークも大概にしてほしい。

 ははは、と愛想笑いをして本題に入る。


「俺らちょっとルーツィエまで行ってくるから二、三日空けるよ」


 それを聞いた瞬間にクラインの表情は変わった。

 目を細め、何かを探るような顔だ。


「お前らまさか……」

「ああ、ルーツィエは故郷だからな。寄ってみたかったんだ」

「そうか。俺の考えすぎだったか……。わかった。いいだろう」

「おし、じゃあ行ってくるわ」


 クラインは変な声を出した。


「ああん!?今からか!?」

「そうだけど、じゃあな」


 文句を言っているようだったがその時にはもうロイとアリアスはかなり離れていた。

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