四十九話 連邦内で起こる亀裂
残されたのはごろつき五人とロイとセシリアだ。
全員キョトンとした顔をしている。
「お、俺たちどうすりゃいいんすかねぇ」
「と、とりあえず空いてる部屋に案内するから来てくれ」
これでいいんだよな?とおもいつつ部屋に案内した。
ロイやアリアスの部屋の通りは個人の部屋となっているためそこへ連れて行った。
案内を終えた後はセシリアと共にアリアスとラーシャがいる場所へいく事決めた。
「でもどこにいるかなぁ」
「……?」
当然セシリアもわからないだろう。
部屋にいるかもしれないとセシリアを連れ向かう。
今思えばあの時クラインに聞いていればよかったが、過ぎた事は仕方ない。
ここのすぐ近くだ。
四個、五個隣の部屋にある。
まずアリアスの部屋をノックした。
「はい、どちら様?」
「あ、俺」
「ロイね。入って」
扉をを開ける。
アリアスはベッドに座っていた。
「で、何かよう……ってそれどういう事?」
アリアスが言っているのは多分この事だと推測できた。
セシリアがロイの腕に抱きついているからだ。
「俺もよくわからん」
「へぇ、一応ラーシャには報告しておくわね」
「冷静に迅速な対応するのやめて。よくわかんないなりに考えたらヤバそうだから」
いや何がヤバいっていうかもう全体的にヤバい。
それよりアリアスはなぜか浮かない顔をしていた。
また原因を取り除いてやるとするか。
「また困り事かな?」
「そうね。全く役に立たないと思うけど言うわ」
「さりげなく罵倒は言えるのにそれ以外言いにくい事が?」
案外人は傷つきやすいのをアリアスには特に知っていてほしいところだ。
「実は私達が以前行ったロザリンドがあるでしょ」
「あるな」
「そこがまた戦いを起こすそうなの」
「またか?」
行ったのはついこの間だ。
まだ戦力も整っていないだろうに。
「また帝国とか」
「それが違うらしいの」
「えっ?」
ロザリンド国もといオルトルート連邦の敵はヴァルフガング帝国のはずだ。
それ以外に目立った敵などいない。
「オルトルート連邦内でよ」
「仲間同士でやろうってのか!?」
オルトルート連邦は元々いくつもの国が集まってできたもの。
国が違えば争いが起きるのもわかるが今は連邦内は休戦状態だったはず。
「相手はロザリンドから南のルーツィエ……だって」
「ル、ルーツィエって……!」
よりにもよってロイとアリアスの故郷だ。
ロザリンド国からライムント平野を挟み南に直進した場所にあるルーツィエ国。
「連邦内でもいろいろあるみたいね」
「どうする?」
「まあ、お前らがどうこうできる問題でもねぇけどな!」
どんっ、と大きな音がなるほどの勢いで扉を開けたのはクラインだった。
息が荒く汗も出ていてレノーレとの戦いが終わらせてやってきたのだろう。
「連邦対帝国の時のみ、うちは手を貸せるんだ。連邦の中の干渉はご法度だ」
「でもあの平原での戦いみたいなやつがおこるかもしれないんだろ?」
「そうだ。しかも今回のこれは厄介だぜ。なにせ兵力が五分五分だ。もともと兵力が少ないルーツィエと先の戦いで兵力を消耗したロザリンド。どう考えても泥沼だな」
手出しができないためこのまま指をくわえてみている他ない。
それも重要だがレノーレとどうなったか知りたい。
「話は変わるけどレノーレと戦ったんだろ?どっちが勝った……って聞くまでもないか」
「ああ、しかしいい相手だ。お前よく勝てたな」
「セシリアのおかげだ」
まだ腕に抱きついているセシリアに目をやる。
頬を赤に染め、無言ながらに照れているのがわかる。
「いつからそんな仲良くなったんだ?」
「本当に怪しいわよねぇ~」
「だからなんもしてねぇよ!」
疑いが晴れるのはしばらくかかりそうだ。




