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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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四十七話 闇魔法の代償

 何回か経験はしているが未だにクロエが考えている事がわからない。

 それに今言葉に出してしまった。

 また視線が集まる。

 ここは冷静に行こう。


(俺に考えてる事ならわかるんだろ?)

「ええ、わかるわ。でもそれとは関係ないわ」

(だからなんで攻撃にした?眠らせれば)

「相手はごろつきなのに生かしておくなんて甘いわね」


 悪行をしてきたのはわかっている。

 だがそれでも一人の人間だ。


(殺さない)

「じゃあ野放しにしておくつもり?」

(そうとも言ってない。償いはさせるさ。だから言う通りにしてくれないか?)


 クロエはため息をついて言った。


「この主は……いつか壁にぶち当たるわよ」

(その時はまたいい策思い浮かぶだろ)

「ホント、あんたらしいわ」


 了承は得られたようだ。


「よくわからないがもう初めていいのかい?」

「待っててくれてありがとよ。おかげで決まったぜ」

「何が?」

「お前もそこに寝てる奴も全員殺さねぇ」


 言っている内容は先ほどと同じだ。

 ただ一つ違うのはロイの目。

 それを見た女頭領は反応が変わった。


「へぇ。いいねぇ。いい目だ。全力で行かせてもらうぜ」


 女頭領は右手持っている双剣の一つで自分の上腕を突き刺した。

 反対側から出ている剣先を伝って下に鮮やかな血が流れ落ちていく。


「何やってんだ!?」

「これかい……これは」


 女頭領は痛みからか引きつった笑いをしている。

 そして魔法を唱えた。


血操ブルートマニプラツィオーン


 下に溜まってドス黒くなった血が腕に絡みつく。


「この魔法は使用者が血を流さなくちゃいけなくてね。まだ一回しか使ってないもんだよ。ただそんな武器持ってるお前だ。きっと強いんだろ?」

「そう言ってくれるとは嬉しいが……えげつねぇ魔法だ」


 クロエはこほんっ、と咳払いした。


「あれは闇属性ね。闇属性は何か代償にして使うものが多いわ。あれでも弱い魔法だから代償はマシな方」

(もっと上があるのか)

「今知る?」

(知りたくねぇ)


 いつかは自分も知る事になろはずだ。

 自分は闇属性が得意属性だ。

 心の準備はしておいた方がいい。


「これで倒せなかった相手はいないよ。っつても一人だけだけどねっ!」


 血と共に距離を詰める。

 やはり至近にで仕掛けてくる。

 まだあの魔法を理解していないうちは危険だ。

 

「やりにくいな」

「……はぁ。もういいわ照準もやってあげる。ホントに今日だけだから」

「頼む!」


 ロイは懐からソードブレイカーを取り出し左手で持つ。


「へぇ!接近戦用もあるんだ。退屈しなくて済みそう!」


 銃口を女頭領へ向ける。

 青の魔法陣に灰色の弾。

 睡眠の弾が飛んでいく。


「だから効かねぇって!」


 女頭領は走り方を変えない。

 当たる前に血が盾役となって立ちはだかる。

 

「そんなのありかよ!」

「へっ、捉えた!」


 血の盾の間から一本の双剣が伸びてくる。


「死にな!」


 それにソードブレイカーの峰を絡ませ、へし折りにかかる。

 だが折れる前にもう一本の双剣がロイを殺しにかかる。

 狙いは胴体。

 一番大きい場所狙ってきた。

 いつもなら焔壁フランメヴァントを使うところだが、今使ってしまえばここ一帯焼野原だ。

 できるだけ身体能力で躱す他ない。


「ぐッッ!!」

「もらったっ」


 脇腹に強い痛みが走る。

 服が裂け血が流れだす。

 倒れそうになるが踏ん張って態勢を崩れないよう保つ。


「まだ残ってるぜ」

「なにッ!?」


 双剣の二段攻撃で終わりと思っていた。

 だが予想は外れた。

 三段目の攻撃。

 それは血であった。


「誰が双剣だけで終わるって言ったよ!」


 盾となった血が今度は剣として形を変え飛ぶ。


拒絶する極光ヴァイガーンポラールリヒト


 ロイと剣と化した血の間に眩く薄い虹色のカーテンのようなものが、向かう剣の攻撃を妨げた。


「な、何なんだいこれ?」


 唱えたのはセシリアだった。


「よくわかんないけど助かったぜ。セシリア」

「……うん」


 ここからは俺の攻撃だ。

 銃を女頭領へ向け撃つ。

 催眠系統の睡眠弾。

 弾丸は一直線に女頭領へ向かう。


「何回もおんなじ攻撃は効かねぇって!」


 またも血の盾が立ちふさがる。

 その盾に為す術なく弾かれる。


「そんなの承知の上だぜ!」


 女頭領の頭上。

 ロイは跳躍、そして盾で前が見えなくなっている間に上にいたのだ。


「クッソガキがッ!」


 血は盾を形成していて間に合わない。

 ロイは落下速度を武器として襲いかかる。


「ッッッ!!」


 双剣でガードを試みる。

 だが仇となってしまった。

 ロイが持っているのはただのナイフではない。

 ソードブレイカーだ。


「もらったッ!!」


 片一方の剣をまるで龍の鱗を剥ぐようにむしり取る。

 双剣の一本が女頭領の手を離れ無情にも地面に突き刺さる。


「俺の勝ちだッッ!!」


 超至近距離からがら空きの胴体へ銃口を当てて最後の一撃を見舞う。

 青の魔法陣で灰色の弾丸。

 言うまでもなく命中。

 女頭領は地面に転んだ。


「はぁ……はぁ……」


 ロイは息が上がって脇腹からは血が流れている。

 立っているのもやっとの状態だ。

 銃を杖代わりにしつつ何とか二本の足で立っている。


「まっ、あんたにしては上出来なんじゃない?」


 クロエからのお褒めの言葉も掠れてよく聞こえないがこれだけははっきりしている。


「俺……勝ったんだ」

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