四十六話 仲間の存在
女はその理由を聞いた。
「随分目の敵にしてくれるじゃないか?」
「当たり前だ!」
怒りを感じずにはいられなかった。
抑えていたがもう我慢できない。
「へぇその理由を聞いてもいいかね?」
「いいかよく聞け!まずその作戦が気に入らない!」
「へえ」
ロイは一息置いて発した。
「後ろからそっと近づくのはまだいい。人質を取ろうとするのも許そう。だがそれは誰かが気を引く役をしないとダメだ。それが許せない」
「つまりそこで寝てる奴らを犠牲にするのがダメってわけね」
「そうだ。仲間だろ?」
「仲間ねぇ……」
その女は遠くを見ているようだった。
がすぐにこちらを向き腰に手をあてつつ言った。
「いやぁ、昔はそんなもんも持ってたな。今じゃそれは間違いって気付いたけど」
「仲間がいたってのが間違いだって言うのか?」
「そうだろう?お前の後ろにいる奴。どうみても足手まといだろ。そいつの所為でピンチなわけさ」
「助け合うのが仲間だ」
言うと女は高笑いをした。
ロイには高笑いした理由がわからなかった。
「そんな戯言は聞いちゃいない。いいかい?はいかいいえで答えるんだ。そいつの所為で」
「うるせぇ。その答えはいいえだ!い・い・え!わかったか!」
「ちゃんとわけもあるんだろうね?」
「ある!全部お前の所為だ!」
女はキョトンとして口が開いている。
ロイは構わず続けた。
「お前らが町でクソみたいにアホな迷惑行為してるからだろ!それに巻き込まれた被害者だぞこっちは!」
「えっ、思ってた回答とちが」
「お前が答えろとか言うから言ったんだろうが!」
女は、こいつわかってねぇな、と言わんばかりの顔をしている。
「もういい。まどろっこしい話はやめだ。あんたはアタシでもわかるぐらいのバカだったよ」
「やめろ。ごろつきの頭領に言われたらお終いだろ」
「お終いかどうかはあんたが決めな」
女は袖に仕込んでいた双剣持ってを構えた。
レイピアにも似た無駄のない細さを持ち、しかしレイピアより斬撃を意識した形だ。
それを逆手で持っている。
銃の攻撃方法を見て至近距離戦に持ち込む魂胆だろう。
「お前らは手ぇ出すんじゃないよ。これはアタシの戦いだ」
「へ、へぇ」
顎で合図を送る。
「さあ、これで邪魔は入らない。久々に殺し合いってやつをやろうじゃないか」
「俺は殺す気ねぇけどな」
それを聞いた瞬間に女は冷めた目をした。
「お前本気で言ってんのか?」
「当たり前だ」
「それを言う奴は敵も救うってバカか、自分の手を汚したくないって臆病のどっちかになるんだぜ?」
「なら俺はバカでいい!」
照準を合わせる。
女はまだ立っているだけだ。
眠らせればこの勝負は確実だ。
合ったところですぐ引き金を引く。
だが魔法陣の色は思っていてのとは違う色だった。
「赤色……!?」
それは攻撃系統を示す色。
だが放たれた弾丸はもう女頭領の目の前まで迫っている。
「これねぇ」
女は双剣を使ってから上へと斬り上げた。
弾丸は真っ二つに割れ、後ろへと飛んで行った。
「意外と簡単に斬れたねぇ」
これで弾を斬られるのは二度目だ。
「クロエ!なんでだ!」
かったるそうに答えた。
「思い通りにならないなら自分で全部すればいいでしょ」
クロエはロイに対して何らかの嫌悪感を抱いているように感じた。




