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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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四十六話 仲間の存在

 女はその理由を聞いた。


「随分目の敵にしてくれるじゃないか?」

「当たり前だ!」


 怒りを感じずにはいられなかった。

 抑えていたがもう我慢できない。


「へぇその理由を聞いてもいいかね?」

「いいかよく聞け!まずその作戦が気に入らない!」

「へえ」


 ロイは一息置いて発した。


「後ろからそっと近づくのはまだいい。人質を取ろうとするのも許そう。だがそれは誰かが気を引く役をしないとダメだ。それが許せない」

「つまりそこで寝てる奴らを犠牲にするのがダメってわけね」

「そうだ。仲間だろ?」

「仲間ねぇ……」


 その女は遠くを見ているようだった。

 がすぐにこちらを向き腰に手をあてつつ言った。


「いやぁ、昔はそんなもんも持ってたな。今じゃそれは間違いって気付いたけど」

「仲間がいたってのが間違いだって言うのか?」

「そうだろう?お前の後ろにいる奴。どうみても足手まといだろ。そいつの所為でピンチなわけさ」

「助け合うのが仲間だ」


 言うと女は高笑いをした。

 ロイには高笑いした理由がわからなかった。


「そんな戯言は聞いちゃいない。いいかい?はいかいいえで答えるんだ。そいつの所為で」

「うるせぇ。その答えはいいえだ!い・い・え!わかったか!」

「ちゃんとわけもあるんだろうね?」

「ある!全部お前の所為だ!」


 女はキョトンとして口が開いている。

 ロイは構わず続けた。


「お前らが町でクソみたいにアホな迷惑行為してるからだろ!それに巻き込まれた被害者だぞこっちは!」

「えっ、思ってた回答とちが」

「お前が答えろとか言うから言ったんだろうが!」


 女は、こいつわかってねぇな、と言わんばかりの顔をしている。


「もういい。まどろっこしい話はやめだ。あんたはアタシでもわかるぐらいのバカだったよ」

「やめろ。ごろつきの頭領に言われたらお終いだろ」

「お終いかどうかはあんたが決めな」


 女は袖に仕込んでいた双剣持ってを構えた。

 レイピアにも似た無駄のない細さを持ち、しかしレイピアより斬撃を意識した形だ。

 それを逆手で持っている。

 銃の攻撃方法を見て至近距離戦に持ち込む魂胆だろう。


「お前らは手ぇ出すんじゃないよ。これはアタシの戦いだ」

「へ、へぇ」


 顎で合図を送る。


「さあ、これで邪魔は入らない。久々に殺し合いってやつをやろうじゃないか」

「俺は殺す気ねぇけどな」


 それを聞いた瞬間に女は冷めた目をした。


「お前本気で言ってんのか?」

「当たり前だ」

「それを言う奴は敵も救うってバカか、自分の手を汚したくないって臆病のどっちかになるんだぜ?」

「なら俺はバカでいい!」


 照準を合わせる。

 女はまだ立っているだけだ。

 眠らせればこの勝負は確実だ。

 合ったところですぐ引き金を引く。

 だが魔法陣の色は思っていてのとは違う色だった。


「赤色……!?」


 それは攻撃系統を示す色。

 だが放たれた弾丸はもう女頭領の目の前まで迫っている。


「これねぇ」


 女は双剣を使ってから上へと斬り上げた。

 弾丸は真っ二つに割れ、後ろへと飛んで行った。


「意外と簡単に斬れたねぇ」


 これで弾を斬られるのは二度目だ。


「クロエ!なんでだ!」


 かったるそうに答えた。


「思い通りにならないなら自分で全部すればいいでしょ」


 クロエはロイに対して何らかの嫌悪感を抱いているように感じた。

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