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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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四十四話 町中の悪戦苦闘

 ついに食べ終わるまで一言も発しなかった。

 その間の無言の威圧の所為で味がしなかった。

 見られてると思うと苦しくなっていく。

 感じた事がない圧力だ。

 本人は自覚がなさそうだが受けているこちらはたまったもんじゃない。

 まず食堂から出よう。

 その後が問題だ。

 どこに行こう。

 たいしてこの街を知らないから行く先もない。

 ごろつきがどうたらとクラインは言っていた。

 そっちも気がかりだ。

 この際ごろつきはどうでもいい。

 町をくまなく調べる必要があるからだ。

 いや、それがあったとロイは閃いた。

 どうせこの隠れ家の中にいても暇だろう。

 なら町に出て一緒に回った方が楽しいはずだ。

 誘ったらついてきてくれるか心配ではあるが、それ以前になんて誘えばいいんだ。

 頭の中で必死にそれらしい言葉を見繕う。


「そ、外に出てみないか?」

「……はい」


 意外と素直に聞いてくれたけど勝手に連れ出したとなると折檻が入るかもしれない。

 まあいいか、と高を括って立ち上がるロイ。


「じゃあ行くか」


 頷いてセシリアも立ち上がった。

 二人は衝動を出てまっすぐ地上へ向かった。


 外は日差しが照って実にいい天気だ。

 風が冷たいのを除けばこんな日に家に籠る事がもったいなく感じる。

 ディオーレは観光の地として知られているため何かしら見るもや楽しめるものはあるだろう。

 ふとセシリアを見る。

 怯えるではないが不安そうな顔をしている。

 ラーシャもあまり人になれていないと言っていた。

 今日でどれだけ距離を縮められるだろう。

 不安と期待に胸を寄せ、散策がスタートした。

 観光者向けの通りは人がいっぱいいる。

 それは今日も例外ではなかった。

 ロザリンド国の大通りで見た人だかりには劣るがそれでも中々の人数だ。

 ディオーレに来られるのは富裕層や一部の人間だけだ。

 なぜなら翼竜フリューゲルドラッヘに乗ってでなければここにたどり着けない。

 乗るにはそれを行き来させる人間の希望した額を出さなければならないからだ。

 払える人間となると自然に限られる。

 金持ちが来ると羽振りがいいため金をディオーレに落としていく。

 そうやってこの都市は成り立っているのだ。

 とまあ、それはさておきてくてく町を歩く。


「見たいものとかしたい事ある?」

「……いえ」


 年下の女の子と話した経験が皆無だから好みがわからない。

 適当に歩いて目についたのを、って作戦でいこう。

 そう思ったが全く会話がなく進んでいく。

 セシリアはときどき下を向いたり、空を見たりしている。

 

「あ、あれなんかどうだ?」

「……はい」


 店を指すも反応は薄い。

 表情も変えずただぽつりと一言で返した。

 嫌がってる雰囲気ではないがまだそこまでの仲に至ってないから距離ができてしまっているのだろう。

 ロイが見たところラーシャにしか話していなかったし。

 ここで折れると負けた感が出る。

 今日で意地でも仲良くなってやろう。

 ロイの心が燃え滾る。

 まず仲良くなるにはお互いの事をもっと知らなければ。

 とにかく会話を続かせよう。


「セシリアは何歳?」

「……十六です」

「じゃあ二個下だな」

「……」


 失敗。

 だがまだ諦めない。


「好きなものとかある?」

「……いえ、特に」


 範囲が広すぎて失敗。

 まだ余地はある。


「いい風だな」

「……少し寒いです」


 もうわかんなくなってきた。

 ふと思い出した事がある。

 ラーシャ情報を使ってみよう。

 その中でもセシリアの事は……。


「ラーシャから聞いたんだけど回復が得意なんだってな」

「……お姉様がおっしゃったのですか?」


 おっ、初めて食いついてくれた。


「そうそう。自分より上手いって言ってたぞ」

「……そうですか」


 表情は変わらなかったが、頬を赤らめているのはわかった。


「だから今度もし俺がけがとかしたら治してくれよな?」

「……はい」


 その声は今まで聞いた中で最も明るいものだった。


「ちょっとそこのカップル方~」


 突如目の前に現れたのは見た事もないスラッと背の高い女性だった。

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