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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第二章
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四十話 戦いの結果

この話から二章になります。

 帝都に戻ったファニクスは焦っていた。

 陛下から与えられた死傷者一万二千五百以下にぎりぎり収まらなかった。

 戦いの資料を見た時自分の人生が終わったように感じた。

 原因として考えられる魔遺物ツァオベライユーバーレストを使うあの男に当たりたい気分であったが、そんな事をしても事態は進展しない。

 それにその状況でも条件を満たせなかった自分のミスだ。


「どうしますか?このままでは……」


 ファニクスの忠実なる部下であるアスレットは自分の問題であるかのように頭を悩ませていた。

 それはありがたい事だ。

 アスレットならいり込んだ事情でも気兼ねなく持ち込める。

 それほどの男だ。


「騒いだところで解決などしない。そろそろ陛下に呼ばれた時間だ。そこで何とかするしかない」

「お力になれず申し訳ないとしか……」

「気にするな。これは私の問題だから」


 深々と頭を下げるアスレットを見て、自分の不甲斐なさに反吐が出る。

 これからを変えていくしかない。


「では私は陛下の元へ行く。粘って見せるさ」

「はい。では戻られた時のため詳しい資料を作成しておきます」

「頼む」


 と言って、部屋を出た。

 足が重い。

 玉座の間に近づくにつれ重さが増しているようだ。

 それでも立ち止まれやしない。

 ここで振り返って逃げる事もできるがあの老人どもに潰されるだけだ。

 考え事をして歩いているともう扉は目の前にあった。

 門の両端にあの二人が立っている。


「陛下がお待ちです……くっくくく」


 一人が堪えられないで笑った。

 笑い終わったところで扉を開ける。


「へっ、どうぞ」


 まだ残っているが無視をして入る。

 未だに慣れない視線が突き刺さる。

 扉が開かれた瞬間から玉座の間にいた全員の目が一斉にファニクスに向かうのだ。

 一身にそれを受けながら玉座まで続く赤い絨毯を進んでいく。

 丁度真ん中に着た辺りで足を止め、跪く。


「ファニクス、どうやら出していた条件を上回ってしまったようだな」

「はい、申し訳ありません」


 周りにいる大臣クラスがひそひそと話し合っている。

 やれ議会入り取り消しだの、やれ帝都追放だの散々ないいようだ。


「謝る事はない。最初から貴様などに期待などしておらぬわ」

「……」


 それは承知の上だ。

 陛下は他人に期待なんぞするはずもない。

 問題はそのような罰が下されるかだ。


「もう行っていいぞ」

「……!?」


 玉座の間がどよめく。

 老人どもは驚きの声を上げた。

 ここでファニクスへの罰が与えられると確信していたからだ。


「ど、どういう事でしょうか。罰などは……」

「諄い。行けと言っておるのだ。それとも他に何かあるのか」

「い、いえ。失礼しました」


 陛下に背を向け扉へと歩き出す。

 後ろでは老人どもが焦り、陛下へと問う。


「なぜです!?あの者は陛下の条件を満たさなかったのですぞ」


 だがそれを最後に声一つとして聞く事は出来なかった。

 思うに陛下は睨んのだろう。

 それ以外にあいつらが黙るはずがない。

 いい気味だと思う以前になぜ陛下は自分を許したのだろう。

 裏があるには違いないが具体的には検討もつかない。

 まずはアスレットのところへ行こう。

 釈然としないまま玉座の間を後にする。


 アスレットと話していた部屋の扉を開ける。

 ファニクスの顔を見るや否や息を荒立てて問うた。


「ファニクスさん!どうなりましたか!?」

「ああ、それが……」


 あの場所で起きた事を説明した。

 アスレットも不思議そうな顔をしている。


「確かにでもその条件を満たせなかった事での処分の話はしていなかったはずでしょう?」

「そうだ。この戦いに出れば意味がわかると」


 何について意味だろうか?

 戦いに関しては終始こちら側が勝っていた。

 価値は見えていた戦いだった。

 だがそれが揺らぎかけた、揺るがしかけた人物がいる。


「まさか……!?」

「どうしたんです?」

「これはまだ言ってはいなかったが……」


 あのロイと呼ばれていた人物。

 自分と同じ魔遺物ツァオベライユーバーレストを使える者。


「なっ!?ファニクスさん以外にもそんな奴がいたなんて……!?」

「しかし陛下はそれをわかって私をあれに出したのか?さすがの陛下でもそこまで見通せるとは考えにくい」


 それについて考えなければいけないが、同時にこれから何をすべきかも考えなければ。


「話で忘れていましたがこれが今回の資料です。ここをよくみてください」

「こ、これは……」


 ファニクスが予想だにしていないものだった。

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