三十九話 帰り道
これにて一章終わりです。まだまだ続きますのでどうかこの先も末永くよろしくお願い致します。
ロイたちは盗賊を倒して町へと戻る途中の道のり。
パウロは赤い鎧を着ずに担いでいる。
それは二度と勇者を名乗らないと宣言のようなものか。
「君たちは強いんだな。驚かされたよ」
「なんたって反乱軍の一員だからな」
「あんまりそういうの言わない方がいいんじゃない?」
「いや、言いふらしたりはしないよ。でもそうだったんだな」
パウロはもう驚いた顔はしなかった。
何を言っても今日ほど驚きの連続はないだろう。
「それに銃?だったっけ。本当に不思議だな」
「俺でも詳しく知らないしな。これも言わないでくれよ」
「わかってるさ」
パウロは天を見上げた。
ロイも連られて見上げる。
空は快晴。
カラっと晴れているが、十二月なので風が吹くと一層寒い。
「学んだよ。世界は思ったより狭かった。自分が小さいだけだって」
「でも今日でちょっと大きくなっただろ?」
「え?」
「それに気付けたんだったら、さ」
パウロは目を閉じて言った。
「そうかもしれないな」
「さっきまで仲悪そうだったのに今は随分いいようだけど?」
「少しだけど見直した部分ってのもあったしな」
声が震えて周りにビビッてるのがバレバレでも勇者としての鎧を捨ててでも人を助けようとしたのには感心した。
もうその心は勇者ではないだろうか。
「これからどう生きてくんだ?」
「これからか。そうだな。考えてなかったけど、久しぶりに故郷のルーツィエに帰ろうかと思ってるよ」
その国を聞いた瞬間にロイとアリアスは雷に打たれたような衝撃が走った。
「故郷って……あのルーツィエか!?」
「あ、ああ……そうだ」
「俺らもあそこで育ったんだ」
「ほ、本当か?偶然ってのも凄いものだな」
ルーツィエ国はオルトルート連邦に属する国の一つで、ロザリンド国より南に行った場所にある。
壁は他の国と同じようにあるものの中は畑が大半を占めている。
オルトルート連邦の食糧庫的存在だ。
「懐かしいわね。……ルーツィエか」
「今頃どうなってんだろうな」
住んでいた頃はとてものどかな国だった。
あれから十年ぐらいか。
「なら君たちも行くかい?」
「そうしたいけど俺らはやらなきゃいけない事があるから」
「そうなのか。それじゃ仕方ないな」
「誘ってもらったのに悪いな」
自分で言っておいてあれだけど何かやらなきゃいけない事があったような。
話しながら歩いていると目の前にロザリンドの壁が見えてきた。
日は暮れ始めもう見慣れた景色へと町が変わっていく。
「おっ、着いたな」
開いている門から中へと入る。
「ここでお別れだな。本当にありがとう」
「まあいいて事よ。それよりもう嘘なんてつくんじゃねーぞ」
「わかってるさ。じゃあ」
「おう」
手を振って別れの挨拶をする。
偽勇者と逆の方向へと歩いていく。
「あ~、やっぱり人助けはいいね」
「俺はもともとする気はなかったけどな~」
「うん、ありがとっ」
でも。まあ、アリアスのその顔が見れたから良しとするか。
「ん?」
兵舎の前にクラインが経っている。
腕を組んでご立腹といった感じで。
「ろい、お前に与えた罰はどこへ行ったんだ?」
「あっ!忘れ」
「もういい、その展開は慣れた」
怒るを通り越してあきれ顔のクラインを見て思う。
罰の罰があるのか、と。
「これで俺はわかった。お前に罰を与えても無駄だと。でもそれも許そう。なんだって」
クラインは一呼吸おいてそれを口にした。
「なんたってディオーレに戻る時またあれに乗らなきゃなんねぇからな」
「やめてくれ。あれが一番俺に効くから!」
「特別に一番前に乗せてやるよ」
「クソみたいな配慮するんじゃねぇ!」
空の旅は楽しくなりそうです。




