三話 第三都市フレーデガルト
「ロイ。起きて。お~い」
身体をさすって起こそうとするがロイは瞼を閉じたままである。
「ロイさん起きませんね」
聞き覚えのない声だ。
誰かを確認するためロイはすぐに身体を起こした。
そこにいたのは昨日岩に寄りかかって寝ていた少女だった。
「え~と、誰?」
「申し遅れました。私はラーシャ・カトレアといいます」
正直名前はどうでもいい。
「なんでここにいたんだ?」
「ええ、私はこれからフレーデガルトに用がありまして、ここで休息を取っていたところです」
フレーデガルトとは奇遇だ。
「それで一緒に行こうって話してたの」
人をほったらかして仲良くなるとはいい度胸だと思ったが起きなかった俺が悪いのか。
旅は仲間が多い方が楽しいだろうからその案には賛成だ。
「で、飯持ってない?」
そろそろ空腹が限界だった。
ロイはラーシャからもらった食べ物を食べながらフレーデガルトへ向かっていた。
「まだかな~」
「もうそろそろ着くだろ」
「あ、あれではないですか?」
ラーシャが見つけたのは黒い煙だった。
近くの海の風を受け斜めに上がっている。
さらに歩みを進めると帝国特有の町を囲うように造られた城壁が姿を現した。
「やっと着いたな」
「私もうお腹ぺこぺこ~」
「俺金持ってねーぞ」
「え?私もないんだけど」
町を目前にして出てきた問題は生死にかかわるものだった。
「大丈夫ですよ。私が持ってますから」
ラーシャが神様に見えた。
「ごちそうさまです!」
「あんた躊躇ないわね……」
近くで見ると門の造りまで一緒だ。
フレーデガルトはイェレミーアスと同じで海が付近にあるためそれを利用して発展していった町である。
早速中に入ると活気に溢れた声があちらこちらで聞こえてくる。
大通りを線対称としたような綺麗な街並みはさすがは一番新しい都市を実感させてくれる。
「おお、これがフレーデガルトか。でかいな」
「ここ第三都市フレーデガルトは帝都ラインヴァルトに次ぐ大きさで人口も四つの都市で最も多いんですよ」
「そうなのか。詳しいな」
「ええ、……その方面を勉強していたので」
とりあえず真っ先にすることは決まっている。
「飯だな」
「はい。ではあちらなどいかがでしょう」
勧められたのは高級感漂うとまではいかないがそれでも今自分たちが行くには少しばかり値が張りそうな店だった。
ただごちそうになるのに文句言うのは筋違いだろう。
「どうしたんですか?もしかして嫌ですか?」
「いや、嫌っていうわけじゃないけど……なぁ?」
「そうね。嫌ではないけど……ねぇ」
どうやらアリアスも同じ事を考えていたみたいだ。
「では行きましょう」
なんだかんだで店には入った。
しばらくして店から出た三人。
「いや~、美味かったな」
「どれだけ食べれば気が済むのよ」
「仕方がないだろ。昨日からほとんど何も食べてないんだから」
「私は全くだけどね」
そういえばアリアスは何も食べてなかったな。
心の中で謝ったロイであった。
「で、次の行き先は?」
ここまで来て何も考えていなかったなどという腑抜けた回答は許されない。
どう答えるかで寿命が伸び縮みしそうだ。
「私はこれからディオーレに行こうと思いますが」
ありがたい事に先に答えたのはラーシャだった。
一番寿命が延びる選択といえる。
「えっ?ディオーレってここから行けるの?」
「はい。空中にあるとはいえここからでも行けますよ」
「ちょっと待ってくれ。そのディオーレって浮いてるの?」




