三十一話 ロイが見たもの
「土石龍!」
全ての弾を一身に受けてもそれは全くびくともしない。
名のとおり土と魔法で作られた龍は人間をはるかに超す大きさで、二枚の翼を持ち、ばさばさと羽ばたいている。
「まったく世話が焼けるぜ。帰ったら勝手に出て行ったわけもきっちりしゃべってもらうからな」
「本当ですよ。アリアスさんから話を聞いた時は私も驚きました」
「次やったら折檻だからね」
クライン、ラーシャ、そしてアリアスの三人がそこにいた。
ロイが自分に弾が飛んできているときに見たのはこれである。
「ああ、助かったぜ。いいタイミングだ」
「すげー爆発音だったからな。飛んで来たぜ」
この龍に乗ってきたのだろうから、実際に飛んできたんだろう。
それにしてもこれは誰の魔法で作られたものなのか?
「よくこんなでかいのを作れるな」
「そりゃなんてったって俺だぜ。土に関しちゃ俺の右に出る奴はいねぇ」
やっぱりクラインか。
相当な量の魔力を使うはずだが、いつもと変わらずぴんぴんしている。
「で、あいつに苦戦してたわけね」
「確かに強そうですね」
「でもこれで四対一だ」
「おい、あいつが持ってるのって魔遺物じゃねぇか?それにあいつずぶ濡れだ」
全員がファニクスを注視する。
「それについては後でだ。今はあいつを倒すのが先だ」
「わかった。で、あいつをぼこぼこにすればいいんだな?」
「そうだ」
「お前は休んでろ。ここからは上のもん同士での戦いだ」
一発でファニクスをただの兵士でないと見抜く辺りさすがと言うべきか。
「ロイさん、こちらへ来てください」
「お、おう」
「魔力結構使ったんでしょ?まあ、無傷だしよくやったわね。ただ、出て行く時はもっと具体的にい言いなさい」
「了解」
ここはクラインに任せて場を離れよう。
「お疲れでしょう。少し待ってください」
ラーシャは目を閉じて唱えた。
「十字回復」
「おお、これは」
目まいの症状が和らぎ、身体のふらつきも楽になった。
「応急処置です。セシリアよりは上手にできないですが」
「いや十分だよ。ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
「和んでる途中に悪いと思うけどここ一応戦場だからね!?」
忘れてました。
「さあ、俺を置いていけ。後で会おう」
「いや、俺も戦う」
クラインは迷ったが、すぐに答えを出した。
「そうか。ならとっととこっちにこい」
「おう!」
ラーシャとアリアスはそれを止めようとする。
「ロイさん、無茶です。したのはあくまで応急手当のようなもので、戦闘は」
「そうよ。あんたは引っ込んでなさい」
「ラーシャが手当してくれたんだろ?だったら大丈夫だ」
ろいはクラインの横へと走った。
「来たか。ならいくぜ」
「あ~らロイ?お友達かしら?」
アレクサンドラもクロエと同じでロイとファニクス以外声は聞こえない、姿は見えないのだ。
「無視~?ならファニクス、あの不愛想なクロエの主を懲らしめて?」
「ああ、最初からそのつもりだ」
「あいつ何ぶつぶつ言ってんんだ?まさか詠唱か!?」
「さ、さぁ。でもそれは違うと思う……」
真向から否定すると怪しまれるからできない。
でも現時点でかなり怪しまれてるので今更ではある。
「ロイ、見ておけ。これが支部を任されてる奴の戦い方だ」
「なめられたもんだ。ここにいる全員殺す」
「あいつやべぇな。ロイ、死ぬなよ」
「そっちこそな」
そこに突如として爆発音が鳴り響いた。




