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愚者の復讐  作者: 加賀谷一縷
第一章
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二十七話 使い手との対面

 ロイは戦場で炎の花を咲かせていた。

 何発撃とうが体内魔力は減っている気がしない。

 まだまだ残っているようだ。

 傷はまだ一つも負っていない。

 ロイに近づく前に撃たれてしまうからだ。

 地面に目をやるとそこに散乱しているほとんどが二つのうち、どちらかだ。

 一つは死体、もう一つは槍だ。

 死体となった猪人エーバーが装備していた、人間の身長を超すであろう長い槍だ。

 この戦いに帝国は猪人エーバーを兵として使い、歩兵に限れば人間より多い。

 当然人間用の装備は小さすぎる。

 だからそれ用に作られたのだ。

 これらもベルンフリート鉱山で取れた黒淵石シュバルツティーフェで作られているため黒く輝いている。

 帝国の歩兵のほとんどが剣を使わない。

 持っているかもしれないが、基本槍を使っている。

 リーチの事を考えての策だ。


「なあ、俺ってなかなか活躍できてねぇか?」

「はいはい、自慢するのは生き残ってからね」

「この調子じゃ無傷で凱旋だぜ」

「調子に乗ってないで集中しなさい」


 するまでもないと思ったが、ここは戦場だ。

 クロエの言う事も一理ある。

 少しなめていたと反省。

 気合を入れなおし、また戦場を煉獄へと変えていく。


 しばらくして一旦銃口を下に向け、息を整える。


「はぁ、はぁ、やっぱり結構魔力使うもんだな」

「そうね。でもそれだけ撃てれば今のとこは上出来じゃない?」

「今のとこって?」

「さあ?」


 クロエは逃げるように可視状態を解いた。

 何か隠し事があるようだが、気にしている場合ではない。

 周りを見渡すと兵がいなくなっている。


「お、俺にびびって逃げたか」

「違うみたいね。あれ」


 クロエが指を指した先には帝国の鎧、それもみたらすぐにわかるほどの上質なものを纏った人間の姿があった。

 黒に少し紫がかっていて、光り方が普通の物と比べて強い。


魔遺物ツァオベライユーバーレストを使うのは貴様か」


 鋭い目つきでこちらを見てくる。

 こいつも銃について何か知っているようだ。


「そうだ。で、お前は誰だ」

「私か、私はファニクス・フェルナーツ。貴様と同じで魔遺物ツァオベライユーバーレストを使う者だ」

「お前も使えるのか!?」


 衝撃は大きかった。

 聞きたい事が山ほどある。


「なんで出てきた?人間でそんないい鎧を着てるからにはそこそこの地位を持ってるんだろ?」


 ロイは国の鎧に関しては少し知識がある。

 それは自分が元は帝国で兵に似た仕事に就いていたからだ。


「ほう。ちょっとは知っているようだな。話が早い。貴様を殺しにきた」


 それぐらいはロイにも予想できていた。

 地位を持った者がここまで来るからには理由があるのだろう。


「いいぜ倒しみな。そのかわり俺が勝ったらこっちが聞きたい事全部教えてもらうからな」

「安心しろ。貴様は私には勝てない」

「その鼻へし折ってやるぜ」


 距離はある。

 十メートル、二十メートルぐらいだ。

 だが相手も銃を持っている。

 いや銃と確証はあるのか?


魔遺物ツァオベライユーバーレストって銃以外の武器でもあるのか?」


 聞くとクロエは姿を現して答えた。


「う~ん、ないとは言えないわね。でも見た事はないからなんともいえないって感じ?」

「なるほど。まとめるとわからないってわけだな」

「違うわ。どちらとも言えない、よ」


 一緒じゃないかと思うが、ここでクロエと口論するには場所が悪すぎる。

 それにクロエはこういう話になると絶対に認めないのだ。


「クロエ?ね、やっぱり」


 聞き覚えのない女性の声だ。

 戦場に女性はいないし、クロエでもないとすると一人しかいない。


「あ、あんた……また会うとはね……今日はほんっといい日だわ」


 クロエは皮肉めいた一言を発した。

 それはファニクスの隣で浮いていた。

 クロエより大人っぽく、背も大きい。

 それに露出度の高い服を着ている。

 だが着ているより隠しているといった方が正しいように思える。

 魔遺物ツァオベライユーバーレストを使える者は他の魔遺物ツァオベライユーバーレストの精も見えるのか。


「あれは知ってるのか?」

「知ってる。まったく、この腐れ縁もいい加減にしてほしいわね」


 ファニクスの隣にいるそれがロイに話しかける。


「初めましてぇ~、私はアレクサンドラ、クロエちゃんの姉よぉ~」


 その日最大の衝撃がロイを襲った。

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