二十四話 ローラント平原の戦い
飯は食ったはいいがその後が大変だった。
明日の大まかな作戦を説明されたり、自分の持ち場の話などで午後が全て埋まった。
晩飯を食って指示された部屋に行く。
一気に言われて全部入るわけがないが、特に覚えるほどでもない。
自分は治療班だ。
気楽にいけばいいだろう。
クロエに少し愚痴をこぼした後すぐに眠りに入った。
こんな朝にだけしっかりと目が覚める。
すっきりとした表情で、銃を肩にかけてテントを出た。
空は快晴。
絶好の戦い日和だ。
キャンプは昨日と同じぐらいに盛り上がっている。
誰が一番多く倒すとか、生き残るとかたわいもない話だ。
「お~い、ロイ。ちゃんと起きたのね」
「おはようございます、ロイさん」
声をかけてきたのはいつもの二人だ。
「おはよう。クライムは?」
「朝から呼ばれてるみたい」
午後から開始する戦いのために最終打ち合わせ的なものか。
「そうか。まあ、俺たちほとんど裏方みたいなもんだし楽にしとけばいいよな」
「ですね。私たちの出番は終わった後ですもんね」
互いをリラックスさせるように言う。
自分たちは大丈夫だと言いきかすが如く。
戦いの始まりは魔法の花火だった。
空高く上がったそれは昼でもくっきりわかるくらいに大きく咲いた。
「やっと始まったなー」
遠く離れた場所で戦いの様子を見守る。
帝国兵五万に対しロザリンド国と反乱軍を合わせた四万。
両軍が線が引かれているみたいにその内側へと並び、花火と音が鳴った瞬間に相手に向かって走り始める。
どちらも弓兵が天に矢を放つ。
魔道兵も壁系の魔法を展開して防御する隊と、攻撃する隊に分かれている。
勝てるかと言われれば正直微妙だ。
それに相手は明らかに体格の違う獣人種が混じっている。
これが終われば治療班はこうして休む暇もなくなるだろう。
「どうでしょう、クラインさん。こちらの軍は?」
ちょうどこっちの様子を見に来ていたクラインにラーシャが話しかけた。
「ん、ああ……ちょっときついってのが本音だな」
「そうですか……。確かに人数比でも違いますしね」
「目的は勝つ事じゃなくて引き分けだからな」
「なんでだ?」
言うと、全員が冷たい目でロイを見る。
「聞いてなかったんですか?」
「聞いてなかったみたいね」
「もう一回説明するからよく聞けよ?」
戦いの最中にも関わらずクラインにそれについて説明された。
長い説明を要約すると、戦いというのは両者が同意しなければできないという規約があるらしい。
しかし二回拒否をするとその次は必ず受けなければいけない。
それが今回の戦いである。
しかしロザリンド国は現在兵力が少ない。
連邦内では戦い事を任されるロザリンド国は兵を消耗している。
それによって立場をいている。
連邦であるため他国に兵を出させる事もできるが、それでは連邦内での立場が弱くなる。
だから反乱軍を使ったのだ。
それでも帝国に対し一万人少ない結果となってしまった。
だから勝つ事が目的ではなく兵力を削がれないようにしつつ、次回に持ち込む作戦をとったのだ。
「へえ、なんとなくわかった」
「へえ、ってなあ、お前」
呆れはてた表情のクラインは、それと一つ、と思い出したように言った。
「魔遺物の件、まだ問題がたくさん残ってる。これが終わったら覚悟しとけよ?」
と、前回の詰問を彷彿とさせる事を言って持ち場へと戻っていった。
「うわ、マジでか。だりーな」
「まあ、仕方ないんじゃない?それより今は治療でしょ?」
「そうだな……切り替えて行くわ。でもちょっとテント入っとくわ」
言葉には出したものの心までは時間がかかりそうだ。
皆と離れ一人治療場となるテントに入った。
するとテント外で何やら騒がしくなってきた。
自分が入ってきた入口の扉のような仕切りのカーテンがさっと開いた。
そこには他の治療班の人に肩を担がれ運ばれてきた血だらけの兵士の姿があった。
「おい!どうしたんだ」
「へへっ……しくっちまったぜ」
その男は昨日会ったバショットだった。
簡易ベッドに横にして、治療班でその男たちを治療を受ける。
「俺がお前らに生き残れなんて言ってこのざまだぜ」
「もういいしゃべるな」
「一つ……願いを聞いてくれるか?」
血は未だに止まらず、話す言葉もとぎれとぎれになりながらもロイにそれを言った。
「お前……戦場に立てるか?」




