二十一話 近づく戦いと魔法基礎知識
この世界では一年三百二十五日で十三か月、二十五日です。
反乱軍とは帝国に逆らうために作られた組織である。
始めは人数が少なく活動の幅も狭かったが、徐々に巨大化していき今に至る。
同じ考えを持つオルトルート連邦と協力関係になったのは四年前。
その時に起こった戦いがきっかけとなり関係が築かれた。
だからこうしてロザリンド国の兵舎を利用する事ができるのだ。
「仕方ないだろ。それとも野宿でもするか?」
「わかったわよ」
「安心しろ。ここにいる全員一部屋ある」
クラインに先導され部屋に向かう。
歩いているとふと疑問に思った事がある。
「反乱軍からは誰も来てないのか?」
「お前らより前に出発してもう着いてる。俺らが最後だ」
空と地上を大勢で行き来する方法はない。
早めに移動を開始していたのだろう。
その場所に着くと、クラインが三人に告げた。
「戦いまであと三日だ。それまで各自十分に身体を休めておくように」
「でも俺たち治療班だけどな」
「まあ、そう言わず与えられた事をきっちりとこなしましょう」
どんだけ立派な性格なんだよ、とロイは心で呟いた。
「じゃあ、また明日な」
「ああ、お休み」
就寝の挨拶を交わし自分の部屋へ入る。
「やっと戦いよねぇ~」
そうだ。
このまま寝られるわけではなかったのだ。
邪険に扱うと後が怖い。
寝るまでの間少しだけ相手をしよう。
「参加できるのはいいけど自分が直接戦うわけじゃないからなぁ」
「あんただけじゃやられるのがオチだわ。あたしがいないとなんにもできないからね。それをよく覚えておくのよ」
「即答で否定できないからもどかしい」
クラインとの戦闘では助けられる事がほとんどだった。
クロエ様様である。
「本当のあたしの力を引き出せたら勝てないものなんてないわ」
「で、今の俺は何パーセントぐらいだ?」
「せいぜい十パーセントがいいところね」
つまり頑張れば十倍強くなれるという事だ。
まさに可能性は無限大!
「でもあくまでそれはあたしの引き出せる力であって主と合わせれば二百でも三百でもいくんじゃない?」
「ほう。主は責任重大だな」
「他人事みたい言ってるけどあんたの事よ……」
わかってはいるが、そもそも引き出す方法を知らないのでは無理な話だろう。
「どうやったらその二百、三百にできるんだ?」
「魔法への理解を深め、魔遺物をもっと知る的な」
魔法の勉強なんて学校出てからした覚えがない。
防衛学専攻ではあったけど学力、実技と共に下位で単位が取れればいいぐらいの感覚でしかいなかったため、魔法への理解が低い。
「あたしがせんせーになって教えてあげよっか?」
「ホントに頼むわ」
「まず魔法っていうのは
「今から早速!?」
今日ぐらいゆっくりしたい。
「そんなんだからこれまでバカが露呈して散々恥ずかしい思いしてきてんじゃないの?」
「刺さった!心に鋭利な言葉が刺さった!抜けるのに一生かかるわ!」
一字一句間違いないです。
勉強会は夜遅くまで続いた。
「はい。今日はここまでー。じゃ、今日の内容を要約して言ってみて」
「魔法とは自然に関わりがあるもので、火、水、風、土、雷、天体、音、光、闇、無属性の十属性がある。個人で必ず一つだけ得意属性があり、また苦手属性もある」
「あんたってやればできるのね」
昔から言われてました。
「でも天体属性なんて聞いた事ないな」
「それは最も得意属性として数が少ないのよ。それに得意属性でないと使えないしね」
「へぇ。俺もそれがよかった」
「因みに全属性最弱よ」
それじゃなくてよかった。
火に最大の感謝を捧げた。
「直接攻撃がないどうしようもないものね」
「華がねえな」
「そうね……」
「ん、どうした」
クロエは目をこすっている。
「眠くなってきちゃった」
「クロエも眠くなるんだな」
「あんたは眠くないの?」
「授業の始めと変わらず眠い」
その一言に一瞬驚いたようだ。
「ま、いいわ。お休み」
「ああ、お休み」
クロエが可視状態を解いたのを確認し、机の上の蝋燭を息で吹き消した。




