百二十九話 エリクフォルトの砦攻防戦 壱
エリクフォルトの砦の牙城手前。
そこでは早くも激戦が繰り広げられていた。
闘いが始まってすでに一時間余りが過ぎようとしていた。
多くの血が流れ、一進一退の攻防が続いている。
その中にロイの姿もあった。
相手を寄せ付けず、遠方からの銃撃で、数多の帝国兵の猪人を沈めている。
「最初から飛ばすと後がもたないわよ~」
クロエの忠告も聞こえていないふりをして続ける。
「ふ~ん、でもあれを見ても無視できるかしら?」
答えはしないが、クロエが指をやる方向を見る。
一人の人間であった。
それだけではたいして珍しくもないが、問題はその装備品である。
長槍を持っている。
持ち主の伸長を上回るほどに大きいものを。
「お前がロイだな?ファニクス様から聞いている」
落ち着いた声で、こちらに問いかける。
「そうだ。あいつの部下か?」
「ああ、名はネーフィスト・フォルゲント。お前を倒して来いと直々に命を受けた者だ」
長槍を構える。
穂先を下にして、腰を落とす。
がしゃり、と鎧の継ぎ目同士が重なったとき、ネーフィストは姿を消した。
「うおっ!」
穂先で救い上げるような下段からの攻撃になんとか取り出したソードブレイカーで対応した。
凹凸でからめとり、受け止める。
「ほう、ファニクス様より聞いていた通りだ」
「手の内あかされてるってわけか。やりにくいぜ」
ネーフィストは軽く弾くと、また元いた場所へと戻る。
「アウトレンジからの石火の攻撃を見舞う戦法か。でもそれなら……」
ネーフィストの戦法はロイには通用しない。
遠距離武器、それも長槍よりもはるかに遠くを狙えるものがあるからだ。
引き金を引く。
赤の魔法陣が浮かび上がり、、赤の弾丸がネーフィストへと飛んでいく。
「二倍速」
それはロイも体験したことがある魔法だ。
さらに速さを上げたネーフィストはいとも簡単に弾丸を躱して、勢いを殺すことなく、攻撃へと転じる。
「焔壁!」
自分の前に壁を作り、防壁とする。
「それも計算済みだ」
ネーフィストは読んでいた。
壁ができると見越して、あらかじめ大回りをしていた。
それdめお時間はそれほどかからない。
二倍速の効果があるからだ。
「もらった」
ネーフィストは笑みをこぼす。
完全に打ち取ったと思ったからだ。
しかし感触は肉を抉ったときのそれではなかった。
ロイの肌に届く寸前、何者かの妨害によって遮られてしまっていた。
「これで命助けるの何回目?」
あきれ顔のフランカはナイフを逆手持ちして、長槍の攻撃を受け止めていた。
「助かったぜ」
「仲間か」
例によってネーフィストは初期の位置へと戻る。
「ではこちらも人数をそろえよう。第一の分身」
ネーフィストの隣にもう一人のネーフィストが現れる。
全く区別がつかないぐらい似ている。
「これで二対二。公平だ」
同じタイミングで、同じ構え方をする。
「気持ちわりぃ。鏡でみてるみたいだ」
「バカ、鏡で見たら持ち手とか逆になってるはずでしょ?」
「いちいち指摘しなくてもいいだろうがよぉ!?」
言い合いの中、構わず攻撃を仕掛ける。
厄介なことに作り出されたほうにも二倍速の魔法はかかっているようだ。
「そっちは任せた」
「そっちってどっち!?」
「近いほうだ!」
「わかりにくい!」
言いつつもフランカはナイフで応戦する。
ロイも負けじと反撃の手を考える。
「焼き尽くす焔!」
広域に炎を撒く。
ネーフィストは頭上、かぶとわりの態勢へと入っていた。




