百二十二話 砦の偵察④
「静かなる爆発」
唱えた魔法は同じだった。
しかし範囲が違っていた。
人を狙うのではなく、今度は床を破壊したのだ。
「おわっ!」
「きゃあ!」
魔法の爆発は静かであっても、崩れて下に落ちた瓦礫が大きな音を立てる。
ロイやラーシャ、セシリア、も瓦礫とともに落ちていく。
「ばっいば~い」
唱えた直後に跳躍して窓をぶち破り、そこに腰を掛けているナターシャは別れの挨拶のように言った。
「蜘蛛の巣」
三人が死体にある瓦礫に叩きつけられるより先にセシリアは唱えた。
すくうように張られたそれは三人をぎりぎりのところで受け止め、とりあえずの危機を脱した。
すたっと華麗に着地したのはフランカだった。
「た、助かった……ありがとな」
「……いえ」
嬉しそうに照れながら、身をよじらす。
「あ、あいつ……!」
ロイが見たのは窓から逃げるナターシャの姿だった。
「とにかく逃げよう。こんな音立てたんじゃもう気づかれてるだろ」
「そうですね、来た道から撤退しましょう」
ゆっくりと起き上がり、間近の地面に着地する。
「こっちから音がしたぞー!」
大賀江がどこからともなく聞こえてきた。
「やっべ、来やがった。あっちの扉から逃げよう!」
扉をそっと開ける。
幸いにもまだ誰も来ていない。
「とにかく上に行こう」
あたりを見回すが階段らしきものはない。
右か左かの二つの道があるだけだ。
「ええと、こっちだ!」
「あの、ロイさん?」
「言わないでくれ、正直勘だ」
悩んで時間を使うより、探しに行くほうが王立がいい。
すっかり明るくなった廊下を小走りで進む。
「隠れろっ」
壁際の資格に立つように指示する。
十字路の左の角を曲がったところ帝国兵であろう者たちが話をしている。
「誰かが入り込んだらしい」
「ああ、床をぶち抜いたんだってな」
「そうと遠くへは行ってない。探し出すぞ」
こつこつとこ足音をたててちら側へと向かってくる。
「ど、どうしましょう……?」
「そうだな……フランカ」
「はいはい」
けだるそうに返事をした。
「それじゃいくぞ。3……2……1」
ちょうど角をこちら側へと曲がろうとした帝国兵を、阿吽の呼吸で同時に攻撃をしかける。
「うおっ!?」
まず素早くフランカナイフで首を掻っ切る。
続くようにロイが催眠系の弾丸を打ち込み、眠らせた。
「ふぅ、簡単だったな」
一人の兵は大量の血が噴き出ており、血だまりができていた。
「さ、先を急ごう」
「ええ」
兵が来た方向とは逆を指す。
「あっちのほうが安全そうだ」
「見てこよっか?」
「頼む」
フランカは頷くと、一切の物音をたてず、かつスピーディーに走った。
数十秒経って戻る。
どうやら成果があったようで、顔にも表れていた。
「階段があったわ」
「よし、さっさとお暇しよう」




