百十三話 目的達成
プルザールはには夢があった。
大金持ちになることだ。
しかし簡単なことではない。
父親はしがない鍛冶屋だ。
とある理由からディオーレに住んでいるとは聞かされていたが、肝心な部分は聞けていない。
それより先に家を出た。
幾度と父親にも言ったが、聞く耳をもたなかったため、黙って消えたのだ。
継ぐなどはなから考えていなかった。
鍛冶屋なんて儲からないものを継ぐよりか外に出たほうがましだからだ。
歳にして、十七である。
ロイと同じぐらいの年齢だ。
故に自分と重なって見えた。
反抗する目も、説得しようという気持ちも自分と瓜二つで、昔がフラッシュバックしたのだ。
「いやぁ、ねぇ。懐かしいっつか、思い出すねぇ」
「昔を、ですか?」
「そーだな。さっ、もう仕事に戻れ」
「へ、へいっ。おい、行くぞ」
ほかの猪人を連れて、そそくさと奥へと消えていった。
「さぁ、君たち。ここにヴァイスロートの原石が置いてある。運んでいくがいい。武器を作るんだろう?なんで必要なんだい?」
「人を助けるためだ」
「へぇ……」
驚きと感心、半分ずつの表情を浮かべる。
「そうかい。いい報告が聞けることを期待しているよ」
「おう!」
荷車に入った原石を運び出す。
「世話になったな」
「ああ、また来たまえ」
「じゃ」
別れを告げ、鉱山を後にした。
どうにかヴァイスロートを手に入れ、コスタスの鍛冶屋にいた。
荷車に入ったそれを見たコスタスは、驚いている。
「こいつはいったいどうやったんだ?あいつが渡すなんて」
「あいつ?プルザールのことか?わりと素直に渡してくれたぞ」
「……まあいい。でどんなナイフをご所望だ?」
「ソードブレイカーと……そうだな、細身のものだ」
ううん、と唸ってコスタスは聞く。
「細身はわかるが、ソードブレイカーって注文する奴ぁ初めてだ」
「前例がないなら作ればいいだけの話だろ?」
「……若ぇのに言うじゃねぇか」
「どうも」
したり顔のロイ。
「細身の方は……どれくらいだ?」
「そうだな……」
ザミーラの持っていたものを思い出す。
「普通のナイフよりちょっと大きいぐらいかな」
「扱いも難しくなるがいいか?」
「だって、いいか、フランカ?」
「ええ、わ、私!?」
突然名前を呼ばれ、驚きを隠せずにいる。
「そうだ、使う奴に聞くのが一番だろ?」
「使うって何でよ!?」
「言ってなかったっけ?前衛を任せたいって」
「言ってないわよ!」
怒るフランカをどうにかなだめる。
「いやいや、悪かった。嫌なら別にいいんだ」
「嫌とは言ってないわよ」
「へ?」
「いいわ。どれくらいの細身でも扱ってみせるわ」
ふん、と気丈にふるまう。
「じゃ作らせてもらうぜ」
「できれば早めにしてくれるか?」
「若いのが生き急ぐんじゃねぇぜ」
「それでも時間がないんだ」
コスタスはロイの目を見て、頷いた。
「……わっーた。できるだけだぞ?」
「ありがたい」
「じゃ、クラインに言っとけばいいか?」
「頼む」
これで目的の一つが達成された。
ロイたちは軽い足取りで隠れ家と向かうのであった。




