百三話 鍛冶屋の場所
「あの追い出されちゃいましたね」
「忙しんだろううな。クラインいなくなっちゃったし」
「でも明日やることは決まりましたね」
「その……鍛冶屋だっけ?のところに行けばいいんだな?」
少しの沈黙のあと、ロイはそっと口を開く。
「その鍛冶屋どこにあるんだ?」
「あっ、そういえば聞いていませんでしたね」
はっと驚いた表情を浮かべる。
「そこ重要なのにあいつもぬけてるよな~」
それなら秘書の方にお聞きするのはどうでしょう?」
しばらく考えて言う。
「……あの雰囲気なんか苦手なんだよな」
「わかります、それ」
「えっ、ラーシャも!?」
それにセシリアもこくこくと頷いている。
姉妹の共通点が見えた気がする。
「私にも苦手なものはありますよ」
「へぇ、そうなのか。てっきりそういうのないと思ってた」
「ふふ、わりと好き嫌いは多いですよ」
じゃなけりゃ父親に対立してここまで来ないだろうな。
「では明日は朝から探すというのはどうでしょう?」
「そうだな。そうしよう」
「ではまた明日ということで」
「ん、じゃあな」
二人とは別れ、自室へと戻る。
静まりかえった夜の隠れ家は、少し肌寒い。
急いで部屋に入る。
ベッドに飛び込むと、すぐに微睡の中へと落ちていった。
「ロイさん、朝ですよ」
いつもならアリアスの役目であるこれも、今日はラーシャがしていた。
「……んん」
返事かかどうか微妙な応答をして、目をこすりながら起き上がる。
「もう朝か……」
もっと寝ていたい気持ちが強い。
「……今日は探しに行く日」
「あ、そうだった」
セシリアに言われ、完全に目覚めた。
よっ、とベッドから起きる。
やらなきゃいけないことを言われると、身体がシャキッとする。
「よし、行くか」
「はい」
「あれ~わたしは?」
クロエだ。
眠そうに目をこする。
どこかの誰かと同じだ。
(あ~どうしよ?)
「眷属を放って出ていくつもり?」
(わかったよ)
銃を背負ってからクロエに聞く。
(これでいいか?)
クロエは答えた。
「う~ん、及第点」
言うとおりにしたのにもかかわらず、評価は厳しかった。
町は寒々とした風に包まれていた。
それでも行きかう人々は減らない。
このディオーレの特徴に一つともいえる。
そんな中、寒さに慣れていない三人は、隠れ家の前で身を震わせていた。
「さむっ」
「早く見つけて戻りましょう」
昨日よりまた一段と寒さが増しているように思える。
戦って身体を動かしていたのも一つだが、それでも寒い。
「で、心当たりがあるような場所は……」
ないのも当然。
この町を散策したことなどないのだから。
「どこから探しましょうか?」
困りが尾のラーシャが尋ねた。
「そうだな。まずは……ぶらつこう」
そのうち見つかる、かもしれないから。




