朝の日常
◆――朝の出来事――(雄二視点)
俺は苦しむ芳紀を、満足気な表情で見下していた。
(あ〜、スッキリした〜)
「目ぇ覚めたか。芳紀?」
そう声をかけると、芳紀はゆっくりと起き上がり冷たい目で俺をにらんできた。
「起きたんなら、俺は家に戻るからな」
俺は、急いでその場を去ろうとした。芳紀の怒りが俺に向けられる前に・・・。
ドアノブに手をかけようとしたその時、いきなり、俺の首に手が回って、絞まり始めた。
「ちょっ、待て、芳紀。俺は起こしただけだろ」
がんばって、逃れるための言葉をさがす。
「だからって、とび蹴りはないんじゃないかなぁ?」
その言葉には少し殺気が混ざっている。
(こ、殺される)
「ギブ、ギブ。悪かったって」
俺は必死に謝ることに専念した。しかし、
「まだ、そんなにしゃべる元気があるなら。まだいけるね。あと10秒逝ってみよう」
「おいっ、今、字が違ったぞ!!」
そんな言葉に、芳紀は耳を傾けず、数を数え始めた。
「1,2,3,4,5,6,7、」
必死に耐える俺。だんだんと強くなっていく腕。
「8,9,8,7,6,5、」
「おいっ、終われよ!」
そういう俺も必死だ。
「6、7,8,9、」
(よしっ、耐え切った)
と心の中でガッツボーズをした時、ドアが開き、
「も〜、いつまで、寝てるの〜」
と間延びした声が、響いた。
「おはよう、母さん」
「あら、起きてたの?」
香里さん、この状況を見て言うことはそれだけですか・・・。
「朝から、夫婦喧嘩もいいけど、遅刻するわよ〜」
「「夫婦じゃない!」」
俺と、芳紀は同時に否定した。その間も、芳紀の攻撃はやまない。
「まあ、確かに遅刻しそうね」
芳紀にそういわれ、時計に目をやると、7:30、かなりやばい。
「早くしたくしなさ〜い」
俺には、香里さんが神に見えた。その時だけ。
「そうね。じゃあ、ラスト5秒」
「おいっ」
増えましたよ、芳紀さん・・・。
「1,2,3、」
俺はまた、必死に耐える。香里さんは、
「早くしなさいよ〜」
と言い残して下に下りてしまった。
「は〜い。4,5」
(終わった)
「6、」
「ッ!!」
なんと、信じられないことに最後に芳紀は俺の意識を刈ったのだ。
俺はそのまま、その場に倒れこんだ。
このあと、学校に遅刻し、こってり絞れれたのは、言うまでもない。
作:いやぁ、結構、はちゃけちゃってるよな。
芳:だってよ。雄二。
雄:・・・。(気絶中)
作:あらら。
芳:あー、だめだねぇ。雄二は。じゃあ、私は学校行
くわ。じゃあね。
作:いってらっさーい。まあ、次には目が覚めるでし
ょ。がんばってね。
雄:・・・。