無理やり契約
◆――資格――(シルフィード)
この子、めずらしい力を持ってるのね。
「この世界って、一体なんなんですか?」
私は、少し意地悪なことを思いつき、少し笑うと
「メディオン。・・・精霊と魔法の世界よ」
と言った。
「そんなことより、あなた。私が見えるのよね?」
雄二君は困ったような驚いたような顔で、
「ええ、まあ・・・」
彼はそう答えると、私の顔から目を背けた。
(私の顔のなにかついてるのかしら?)
少し顔をさわって何もついていないことを確かめると、
彼に向き直って、今考えていることを口にした。
「あのね、雄二君」
「はい」
なぜか、ビビッている雄二君は静かに答えた。
「私と、契約してみない?」
「は?」
意味が分からないように、彼は口を開いた。そりゃそうよね。
「それより、この世界について教えてもらえませんか?」
普通に正論な事をいってきた雄二君。
「うーん」
私は、少し考えてこの機会を逃すのはもったいないように感じた。
(ここで、契約しないと後々暇よねぇ)
私は、いままで100年ほど暇な日々を過ごしていた。
(そうだ)
「私と契約したら、細かく教えてあげるわ」
少しあくどい取引をつかったけど、まあ気にしない方向で・・・。
「えっと」
やっぱり、雄二君は戸惑っている。
「契約すると、なんかあるんですか?」
悩んでるのはそこか。
「別になんにもないわよ。ただ単に私の力を少し使えるようになったり・・・」
「はぁ」
「少し天気とかの影響を受けやすくなったりとか」
「へ?」
「霊体になった時、もしかしたら精霊になるかもしれないってくらいで」
「おい・・・」
「ん?」
「むちゃくちゃ、あるじゃないか!!」
「そう?」
「そうだろ。しかも、俺、異世界から来たんだぞ。
そしたらこっちに住まなくちゃいけないだろ!!」
雄二君は血相をかえて、一息で言うと肩を上下させて疲れたように私を睨んできた。
「フフッ、やっぱり雄二君おもしろいねぇ」
「笑ってんな!!」
これは、本気で動揺しているようだ。
「私と、契約したら。この世界で、何かと便利だよ」
「もう来ねぇよ!!」
そこまで、嫌か・・・。なら、しょうがないか、
「あーあ、ならしょうがないか。こっちの世界もいいものがあると思うけどなぁ」
「・・・」
かなり、落ち込んだように肩を落とすと、彼は少し気まずそうに黙り込んだ。
効くかなぁ、泣き落とし。
「せっかく、仲良くできる・・・と思ったのに・・・」
少し、涙ぐんで雄二君を見つめると、かなり動揺したようで元の世界に戻ることと、
こちらの世界でしばらくの間生活することとの天秤がこちら側へ傾いてくるのを感じた。
(やっぱり、女の武器は涙だなぁ)
と、実感した。しばらく、待つと雄二君は、しぶしぶ頷いた。
「じゃあ、早速契約しようか」
「うう・・・」
彼はいまだに不服なようだ。
(まあ、気にしないでさっさと済まそう)
そう思って、さっさと魔力をためていく。
私の周りに、風が吹き精霊が集まってくる。
「我、シルフィード・ハクリオウはかの者に誓おう」
ゆっくりと、出来るだけ間違えないように言っていく。
(あと、なんだっけ?まあ、いっか)
私は、彼の手の甲にそっと口をつけて、
「かの者に祝福あれ」
と言った。
私の周りの精霊が雄二君の周りについていく顔をあげると、
雄二君の顔が徐々に驚きに変わっていった。
私の髪をなでる暖かな風はいつ感じても、とても心地よかった。
「久しぶりだなぁ、この風」