ネトゲ友人
教室のドアがガラッと空いた。
「レン?いるか」
茶髪。ゆるふわイケメン風。目はキリッとしており、身長は180をこえるだろう、細身の青年が入ってきた。
ただし、魔法使いのローブを着ていた。
「いたいた、レン。やっぱりお前も、押したな?」
「…ハル。あいつはタクトといって、悪いやつだから、触れないほうがいい」
タクトは同じゲームの仲間、朝のチャットの相手だ。レンと違うのは、うるさいくらいのコミュ力。明るく、気さくで、優しい。チャラいのがなければ、学年1.2を争うイケメンだろう。
ハルを見たタクトは、思い出したように、小声で言った。
「あのさ、今すぐここを、抜け出そうぜ」
「まずいだろ。今、これかなりの非常事態だ…」
ハルはニコニコして頭に浮かんだ小さな文字を見せた。
LV=3
「レベル3!?お前それ…」
レンにヘッドロックして、タクトは囁く
「外に出てみたら、スライムがいてさ」
タクトは快活に続ける
「一番弱いモンスター。あんま動かねえから、魔法と杖で倒してたら、レベル上がって小銭が出てきた。なんか、強くなった気がする!そこでだ…」
彼らはこそこそ話を始めた。
「教師にあれこれ指示されるより、俺らだけの方が、この世界には詳しい。
もう1人つれて来てるんだ。ゲームで「キララ」って名前でタンカー(盾役)やってる、こいつ」
「はじめまして。キララ改め、キサラギといいます」
大きな木の盾をもった、小柄な女の子が、タクトの後ろから、ぴこっと頭を下げた。
キサラギは、古風な三つ編みをしている、眼鏡をかけて、どこか品のある女の子だ。
レンとキサラギは、チャットしかしたことないから、いわば「初対面」だ。
「キララって、キャラはゴツいのに、意外と小さいんだな。よろしく」
コミュ力のないレンらしい、ひどい初対面の挨拶だ。
「レンさんこそ、そんな細身で剣振れるの?」
負けじとコミュ力のない応答だった。
タクトの強引な誘いで、四人は裏山の方に出た。
「さあ、こっからは自由に、かつ効率的にいこうぜ!」
タクトは、さも自分が主人公気取りで、相変わらずお気楽者だ。
レンの袖を掴んだままのハルとキサラギ。二人とも涙目で、役に立ちそうにない。
これはレンの一番嫌いなパターンだ。
「面倒に巻き込まれる」