不思議な少女と 適応
校内は、大騒ぎになっていた。教師は、事態の把握をするために、全員、職員室に戻ったままだ。教室は、ガヤガヤうるさいくらいだ。
さっきの女の子はいない。しかし、彼女がいったことは本当だった。
みんなが、それぞれ、ざわざわ、あれこれ、不安がったりする中、レンは意を決意したように、そろそろと電子黒板に近づく。
レンは、「剣士」のボタンをタップしてみる。すると淡い光の中で、レンは初級剣士の姿に変わった。教室のみんなが驚いた。黒いフードつきの革鎧は、足まで覆われている。
そして小さな盾と剣。剣は鉄製か、振ってみると案外重い。慣れないと、これで実戦では、役に立たない。
そんなレンを見て、真似してタップするものが数人でてきたりで、教室は次第にヒートアップしてきた。
レンは、ハルの手をひいて、黒板に近づけた。ハルは拒否した。
「あたしやだよ!」
ハルは、受け入れ難い現実と、動揺からか、涙目になっている。
その目に、顔を近づけて剣士は言った。
「大丈夫、ハルのことは、俺が守る義務がある」
とはいったものの、照れて顔は赤い。
不意打ちをくらい、ハルは下を向いて、うなずいた。
「ハルは『ヒーラー』っていう「回復係」をやってくれ。『看護婦』みたいな役だ」
レンはハルの手を取り、タップさせた。
ハルは薄い光に包まれ、異国の僧侶の衣装になった。白基調のローブに、シルバーに光る杖をたずさえている。いつもより大人びて、絵画のように美しい。
…ばかな、この俺が、恋をするわけがない