それでも彼女は笑わない。
それでも彼女は笑わない。
彼女は悲しかった。
食べ物に味はない。
味覚は飛んでしまったようで何を口に入れても美味くない。ただ不味くもない。
彼女は冷たい水で手を洗った。
冷たい。
暖かさは感じない。
冷たさだけが手に感覚として残っていく。
彼女は重たい腰を上げて外に出た。
外の木は葉が全部落ち、風は刺すように身体に吹き付ける。
歩くと季節外れのタンポポが咲いている。
彼女はそのタンポポをそっと摘み上げた。
タンポポがふっと揺れる。
彼女を受け入れるように。
それでも彼女は笑わない。
彼女は息を止めた。
それでも彼女は笑わない。