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一時間目

入学式後、校長室に連れて行かれ、校長、教頭、僕を捕えた男性教師と何人かの教師が僕を怒鳴りつけていた。

僕は我関せず、校長室に響く説教を右から左に受け流していた。

三十分程経つと、説教をしているのが僕を捕えた男性教師一人だけになった。

校長先生は説教を聞いているのが飽きたのか、女性教師にお茶を汲んできてもらい談笑を始めていた。

それを少し羨ましそうに見ている教頭先生。

涙目で僕に何か訴えかけている男性教師を哀れな目で見る他の男性教師数人。

この状態がさらに三十分続くと、それに耐えかねたのか教頭先生が校長先生に耳打ちをした。

すると校長先生はやれやれといった感じで席を立ち、僕たちに近づいてきた。


「あー、治田先生。今日はもうこのぐらいにしておきましょう。鹿海くんも十分反省しているようですし」

「何を言ってるんですか、校長先生!? こいつは千秋先生にとんでもなく失礼なことをしでかしているんですよ!? 何もお咎め無しというのはおかしいじゃないですか! 」

「治田先生、生徒に対しこいつ呼ばわりはいけませんよ? それに誰もお咎め無しとは言っていません。

う〜ん、そうですねえ、鹿海くん」

「……はい」


右から左に受け流していた僕は、咄嗟に名前を呼ばれたので返事をするのに間が空いてしまったが、反省しているようにもみえるのでこれはこれでいいか、と思っていた僕に


「君は千秋先生のどこに惚れたのかね?」

「はっ!?」


真っ先に反応したのは治田と呼ばれていた教師だった。


「校長先生、何をいってーー」

「どうなのかね?」


校長先生のよく分からない剣幕になぜかよく分からずにたじろぐ治田先生。


「愚問ですね……。 もちろん……尻です! 」


絶句する教師たちを余所に同時に声が上がった。


「「わかっているじゃねえかっ!」」


さらに絶句する教師たち。


「顔とか言ったらどうしてくれようかとおもっていたところだぞ」


と、治田。


「うむ、彼女の素晴らしいところはタイトスカートから覗くあの綺麗なヒップラインだと私はおもう……」


と、校長。


その後一時間、千秋菫の尻の話に花を咲かせた三人だった。


気付くと校長室には僕と治田、校長の三人だけだった。


「いやいや、つい熱が入ってしまったな」

「そうですね、いつの間にか皆さん帰られたようですし私たちもそろそろ帰りましょうか」

「うむ、その前に鹿海くん」

「はい」


僕も話していたのが気持ちよかったので今度は呼ばれてすぐ返事が出来た。


「君は何か部活動を作りなさい」

「はい!……えっ? 」


いい会話の流れだったのでつい応えてしまったが、よくよく考えてみると校長は何か部活に入りなさい、ではなく部活動を作りなさいと言っていたのを思い出す。

僕と同じく頭に疑問符が浮かんでいる治田。


「どういうことですか?」

「どういうこともなにもその通りの意味だよ、鹿海くん。 何か部活動を作りなさい。 幸い千秋先生はどこの部活動にも顧問をしていない。 これはチャンスなのだよ。 たかが中学一年生の君が本当に彼女を愛しているのか見せてもらおうか。 」

「…………」


言葉を紡げない僕に校長は続けざまに


「期限は……そうだな、君がこの学校を卒業するまでの三年間でどうかね? 長いと思うかな、治田先生? 私は短いと思いますよ。 十六歳の差が三年で縮まるとは私には思えない。 しかし心の何処かでそれを望んでいる私もいる。 不思議なものだ……。 おっと失礼、話が逸れてしまったね。 さて、君がこの勝負に勝てば恋人となった千秋先生とこの学校を卒業出来る。ただし、恋人に出来なかった場合は……そうだね、明るくない未来が待っていることだろうね。」


こんなに長く喋るのが校長という生き物なのだろうか、とふと考えていた僕は気になったことを聞く。


「一つお聞きします。 もし僕が勝ったら校長先生はどうされるのですか?」

「もちろん君が負けた時に待っているものと同じだ。 いや、年齢的に私の方がリスクは高いな。 君はまだ若いが私はもうやりなおすことは出来ない。 それほどの覚悟を持って言っているんだ。 君も男なら覚悟を示しなさい! 」

「……っ! わかりました。 この勝負、受けてたちます」


目まぐるしい怒涛の展開と、校長となぜか握手をしている鹿海を見て治田は何が何やら、という感じだった。


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