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始業

初めての連載なので温かく見守ってくれると嬉しいです。

投稿は不定期になると思いますが、よろしくお願いします。

 私、千秋菫は市立稜華中学校の教師です。

小さな頃から学校の先生になりたくて必死に勉強して、念願の母校の教師になることが出来た。

学校での仕事は学生時代の恩師が色々教えてくれるし、同僚の人達もみんな良い人ばかりです。

私の受け持つ子どもたちも思春期のせいか、素っ気ない振りをしたりかまって欲しかったりして可愛い。

本当に夢を追いかけ続けて良かったと思っている。


でも夢ばかり追っていた私は、ろくに恋愛が出来ないまま青春時代を終えてしまった。

大学を卒業して、学校で働き始めてもう6年。

28歳になった私に、親からは「誰でもいいから早く結婚して孫の顔を見せなさい」とまで言われる始末…。

私だって早く結婚したい!


恋愛経験がないまま28歳を迎えた私は、誰でも良いという考えにはならず、変に理想が高くなってしまった。

普通の男性とは違った、個性あふれる容姿、性格、雰囲気を持った人に私を愛してもらいたいと思うようになった。

しかし、そんな人がいるはずもなく、教師生活7年目に突入しようとしていた。

 そんな私に自分でも思ってもみないような転機が訪れようとしていた。


 新年度の入学式、校長先生の長~いお話の最中に新入生である1人の男子生徒が急に席を立ち学ランの上着を脱ぎ始めた。

その光景を呆然と見送っていた男性教諭数人は彼が下を脱ごうとしたのでハッと我に帰り、急いで彼の元に向かおうとしたが、刻すでに遅し。

彼は下のズボンを下ろしてしまった。

彼の近くにいたであろう女子生徒たちの悲鳴が聞こえる。

かくゆう私も可能ならば叫びたいぐらいだった。

恋愛経験がない私は、男性の下着を履いている状態を見ることはないし、そういうのは結婚した後の事だと思っているので免疫がない私には見るに耐えられなかった。

しかし幸いなことに、私のいる位置からでは彼の下半身は見えなかった。

私はホッと胸をなで下ろすと、再び彼を見る。すると彼は脱いだズボンを再び履き始めているように見えた。

その考えは当たっていたらしく、彼に近づこうとしていた男性教諭数人は、足を止め訝しげに彼を見ることしか出来ないように見えた。

そんな男性教諭たちの心境にはつゆ知らず、彼は再び上着を羽織る。

こいつは一体何がしたいんだ? と、誰もが思ったであろうことは一瞬の内にどこかへ飛んでしまった。

何故なら彼は上下真っ白の学ラン姿になっていたからだ。


 私は呆然と立ち尽くしていた。私だけではない。壇上の校長先生、教頭先生、近づこうとしていた男性教諭数人、彼の周りの新入生たち。

この状況を受け入れるのにはどうしても時間が掛かりすぎる。

そんな私たちの頭の中を知らない当の本人はパイプ椅子の下から何かを取り出した。


ーー真っ赤なバラの花束だ。


彼は花束を持ち、動き始めた。

新入生の前を通り、壇上にいる校長先生と進行役の教頭先生の目の前も通り、ついに私の前も通り過ぎる。と思ったが彼は私の前で立ち止まり、私と面と向かう形になった。


えっ? えっ? な、何? 


注目を集めてしまった私は、顔が茹で上がるぐらい熱くなるのを感じた。

目の前で私の赤面した顔をみる彼の身長は私よりも小さい。

当たり前だ。

まだ中学生になったばかりの子どもなのだから。

そんな小さな彼が更に小さくなった。

彼は跪き真っ赤なバラの花束を私の前に突き出した。

私に優しい顔を向けて


 「僕と結婚してくれませんか? My Lovely Angel」



 唖然とする周りの人たち、呆然と立ち尽くす私。

何か言わないと。

大人な対応を。

そう思った私は彼に告げる。


 「……はい」


この日、照れた私と彼が1番の主役になった始業式でした。

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