《夢追いし》営業中(6)
「なんだよ……これ」
僕は思わず呟いた。
丁寧語も、尊敬語も、全て抜けて素の言葉で。
ただただ、この状況を理解しようと必死だった。
「……九朗。ともかく助けよう」
「あ、は、はい」
さっきと同じように、リュックから白い宝石を取り出す。
水槽の傍に、赤く光る操作盤のようなものがあったので、そこに取り付ける。
「……すみません、僕の力量じゃまだ……」
白い宝石に表示される意味不明の単語の羅列に、僕はなす術もなかった。
こんな時、ナヅキさんがいればすぐに解決できたはずだ。
自分がまだ未熟だと思い知らされる。
「わかった、じゃあ下がっていろ」
そういうとバルッタさんは、背中から片刃剣を取り出す。
「どうするつもりですか?!」
「叩き割る」
そう言うとバルッタさんは、正面に刃を構える。
中の女の子まで斬ったらどうするんだと、僕が言う前にその刃は水槽を両断した。
はたして女の子は……無事だった。
「九朗、その少女を受け止めろ!」
「は、はい!?」
バルッタさんに言われるがまま、水槽のなかから重力にまかせて落下してくる
少女を抱き上げる。
衣服も身につけていない、そんな女の子を僕はふわりと抱き上げた。
軽かった、まるで体の中身がないんじゃないかと錯覚しそうなくらい。
力のない僕でも、抱きかかえることができた。
「いい反応だ、九朗……で、その少女は生きているのか?」
「え、えっと……」
とりあえず、脈をはかる。
とくん、とくん、とくん……。
……わずかに動いているのがわかる。
「い、生きてます!たぶん!」
「なら、俺の上着を着せておけ」
ばさぁとバルッタさんは服をなげかける。
「ついでに、いつまで裸の少女を抱いているつもりだ?九朗。気持ちはわかるがな」
「え?あ、すっすみません!」
「あやまるなら、その少女が目をあけてからにしておけ」
はっはっはっと笑うバルッタさんだった。