《夢追いし》営業中(終)
翌朝、僕の眠りを妨げるものがあった。
鳥のチュンチュンという鳴き声が一つと、もう一つ。
ゆさゆさと身体を揺する動作だった。
「ナヅキさん……今何時だと思ってるんですか……」
勿論目をあけていないので、時間なんてわからない。
でも絶対に早朝であることは確かだ、僕の体内時計がそう言っている。
ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「勘弁してくださいよー……」
しかし身体をゆする動作はなかなか止まらない。
「朝ごはんはもう少しまってくださいよ……」
まて、おかしい。
思考が少しずつ回ってきた。
そもそもナヅキさんが、そんな早朝に、しかも僕の体を揺するか?
いや揺すらない、仮に早く起きたとしても僕を蹴って起こすだろう。
おなかがすいたぞ九朗君!とかいって!
じゃあいま揺すっているのは……。
静かに目を開ける。
揺すっている犯人を見るために。
「……え?」
そこにいたのは。
僕が《ダンジョン》で助けた。
真っ白で長い髪を持つ、女の子だった。
「……おはようございます、九朗」
「ええええええ!?ナヅキさあああん!?」
早朝の《夢追いし》に、僕の大声が響く。
一筋縄じゃいかない、波乱に満ちた1日がまた始まった。
第一話がついに終わります。
次からは《カミド》の街で活躍する人々の話や、《ダンジョン》から救い出した女の子と九郎の日々が展開されていきます。




