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プロローグ
──その店は、風貌こそボロボロでちんけな店だった。
普段なら入ろうとさえ思わないだろう。
ただ、《夢を追っている》奴なら……喜んで入っちまうだろうさ。
と、言っている人間を僕は1人しか知らない。
実際のところ、僕の勤めているこの店は、毎日ジリ貧火の車。
明日のご飯どころか今日のご飯すら危うい泥舟なのである。
「ま、本当にすばらしいことは認められ辛いものさ」
僕の師匠はそう言うが、問題は絶対に仕事の質じゃないと確信している。
そういう僕は、この自己中心的な師匠の下で毎日あくせく働いている弟子1号だ。
やりがいこそある仕事だが、やっぱりそれには苦労はつき物で。
今日もいつも通り、師匠にこき使われながら修行を積む毎日です。
「っと、今日も1日。がんばるか」
僕は私記を書く手を止めて、師匠の待つ店《夢追いし》へと向かったのだった。