アカイロストリート1-1
君がいない世界なんて消えてしまえ。
だけど天使はそれを許さない
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陽が沈み、あたり一面を茜色に染め上げていく。
一日の終わりを惜しむかのように、カナカナとヒグラシの鳴き声が響き渡る。
部活帰りの青葉の桜並木、君と僕は一緒に歩いていた。
相変わらず君は憎まれ口を僕に叩きつけてくる。そんな君を僕は苦笑いしながら適当に受け答えをする。
すると君は、気に入らないのか「ちゃんと聞いてるの?」と怒り出す。
僕は「聞いてるよ」とやっぱりあいまいに返事してしまう。それでさらに君を怒らせてしまう。
学校から君と別れる交差点までの道のりで繰り広げられるいつもどおりの日常。
今日も、起こってしまった君をなだめた所で、別れ終わる一日。
なんのとりとめもない一日
そう、なるはずだったのに……
どうして、こうなってしまったんだ?
赤色信号無視したトラックが、曲がり角から飛び出してきた。
トラックは、君を轢きずり回し、炎天下で焼けた道路の上に飛び散り咲き誇る血飛沫の華、紅いラインが駆け回る。
そして、アクセントにブレーキ痕を思い出したかのように添えたあとそのままどこかへ行ってしまった。
あっという間に出来上がった、乱暴な芸術作品を前に僕は、持っていたスケッチブックを取り落とし、何ができるというわけでもなく、ただ近くに駆け寄った。
いたるところで、血の華が咲き乱れ、君の体は乱雑に引っ掻き回されたせいでボロボロに、千切れ飛んでいた。
焼き焦げたにおいと血のにおいが混じり熱気に当てられ、鼻や目から強烈な現実を叩きつけられていく。
頭がチリチリと焼けそうだ。
視界が眩んできた。両目からぽろぽろと涙がこぼれ出ているようだ。
どう見たって、君はもう死んでしまっていた。
怒った顔も笑っている顔も、もう見れない。
なんで、どうして、そんな言葉を叫びたいはずなのに、セミの声にかき消されてしまっているのか、口をパクパクと開け閉めするだけだった。
どうして、僕は肝心なところで失敗してしまうのだろう。
君に伝えようと決めたのに。
ヒグラシの鳴き声が鎮魂歌を歌うように鳴いている。
交差点の向こうで、白い天使が嗤っている。
うるさいな、今でもいいだろう。後でたっぷり嗤ってくれていい。
愚か者でもいい。
伝えさせてくれ、祈らせてくれ。
のろまな僕をいつも引っ張ってくれた君も
照れたときいつも叩いてくる君も
困ったとき手助けしてくれた君を
君と出会ったときから、僕は君のことが好きだったんだ
だから、もう一度君の笑顔を見せてくれ