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再戦

戦闘描写は相変わらず難しい

 ……というわけで今は演習場。


 観客はメーアを初めとしたいつものメンバー。黄色い声を少し期待しても見るが視線を移すとみんなは真面目に見ていた。

 特にメーアとフィアは前のサバイバルを見ていなかったため、真剣に見ている。


「アインの剣って真っ黒いんだ」


 そう聞こえたので視線を戻す。

 深い青色の刃を持つ槍を携えたリアナがいた。

 その小さい体躯には似合わないくらいデカイ槍。リアナの身長は150ほど。

 それに対して槍は倍くらいだろうか。柄の部分に赤と青の装飾が施されている。相当な腕を持つ鍛冶屋が造ったんだろう。太陽の光を反射して眩く刃が光っている。


「じゃ、そろそろ始めようよアイン」


「ああ、そうだなリアナ。観客もお待ちかねのようだぜ?」


 そう言って俺はコインを空中に放り投げた。リアナは俺がコインを投げた意味を察したようで、本腰を入れて構える。


 コインがスローモーションに見えて空中を回転しながら落ちてくる。そして、チャリンッと地面に音を立てて落ちた。


 先に動いたのはやっぱりリアナ。血気盛んな事は良い事だ。

 リアナは容赦なく俺の心臓を目掛けて突きを繰り出す。それを剣でいなし、バックステップで距離を取る。だがリアナは槍のリーチと自らの身体能力を活かして、距離を一瞬で詰め、また突く。


「ハァァ‼︎」


 いつもの可愛らしい声とは打って変わり、気迫の篭った声。

 でもさ、俺だって一年間伊達に鍛錬マニアになってたわけじゃないんだぜ。


「我流抜刀術」


 そう言った瞬間にリアナは後ろに下がる。

 だがもう遅い!


雷電らいでん‼︎」


 剣を地面に90度の角度で切り上げる。この技は攻撃用ではなく言うなれば撹乱用。地面から巻き上げた砂埃で姿を隠し、雷の如く移動し相手を横から切りつけるなり距離を置くなりする事が出来る。

 そして、俺が選んだのは距離を置く事。


「またぁ?大層な名前の癖して埃を巻き上げる技なんて……名前負け」


 何とでも言えばいいさ。


「我流剣術攻式壱ノ型『絶乱(ぜつらん)』」


 体勢を低くし、思いっきり大地を蹴る。そのまま勢いに乗って相手に突っ込む‼︎


「真っ直ぐ突っ込んで来るなんてバカじゃないのですか!」


「誰が猪武者だって?」


 リアナが槍を俺に向けて構える。このまま突っ込んでくると踏んだからだろう。でもそんな事はしない。剣を左側に構え、槍の穂先が当たる寸前で深くリアナ側の足を踏み込む。


 その時に剣先を下に向け、柄を上げて槍を流す。リアナの側面まで入り込んだら瞬時に切り下げる。


 って、あらら。これも防がれちゃったわ。


 切り下げて決まったと思ったのに、リアナは槍を側面に回して、剣を受けていた。


「びっくりしましたけど、反応出来ないほどの速さじゃないです」


 リアナ、こいつ本当強いな。

 女の子だからって舐めてかかると一瞬でやられてしまう。

 手抜きはなしだ。

 ここからは連撃勝負。

 リアナと俺の得物が交差する。刃と刃が当たるたびに火花が散る。金属がぶつかり合う高音。刃が風を切り裂く音もする。

 この鍔迫り合いが永遠に続くかのように感じ、このままでは消耗戦だとリアナが槍の速度をさらに上げた。

 俺の剣術はほとんど、いや完全に親父の模倣。あの抜刀術もすべからく親父の剣技。

 今の俺じゃ親父の足元にも及ばない事も分かっている。

 だが今出来る事は模倣だけ、まだ機は熟していない。その時はまだ後の話だろう。

 だから今は全力で親父の模倣をするだけだ。


「抜刀術終ノ型『無絶』」


 目にも留まらぬ速さで剣を振る。

剣戟を何度も何度も繰り返す。

 気がつくとリアナの手から槍が消えていた。


「アイン、今何をしたですか」


 そう言われても分からない、俺だって無我夢中で半ば無意識的に剣を振ったんだから。


「あ、いや……自分でも少し何をやったのか分かりかねる」


「わ、分かりかねるってあんたねぇ」


 まあ、いいです。と言ってどちらにしても私の負けですと両手を挙げて降参のポーズ。

 若干、身体が震えているのは負けたのが悔しかったからだろうか。

 仕方ない少し慰めるか。

 俺はリアナの頭に手を置いて、わしゃわしゃと掻いた。


「な、何するですか!」


 そして一言。


「お前は強いよ。だからそんな落ち込むなって。なっ?」


 俺が出来る限りの笑顔を造ってそれを言う。

 まだ俺は笑えるらしい。親父にも言われた事がある。


『お前の笑顔は世界一だ』


 それを思い出してやってみた。


「あっ……あ、ありがとぅ……です」


「ほらみんなと合流するぞ」


 何故かリアナは頬を染めて下を向いている。風邪でも引いたのだろうか。とりあえず合流する趣旨を伝えて一緒に出口まで戻った。


「ひどいです。私をこんな気持ちにさせるなんて……」


 リアナは何か呟いたようだったがあまりにその声が小さかったため聞き取ることが出来なかった。

私は決してロリコンではありません

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