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キミと私の日常

「ねぇねぇ凌空(りく)、今日の夜予定ないよね? えっ、ない?! じゃあ今日一緒にゲームしよーねー!」

「俺に聞いといて勝手に決めるなよ、予定ないなんて言ってないだろう!?」

「え、あるの? 予定」

「……ない」



 オレンジに輝く空の下、いつもの路地裏を歩く私と凌空。

 路地裏を抜け住宅街に出て楽しく話す私達を、すれ違う人達はみんなくすくす笑いながら見て行く。もしかしたら、すれ違う人達からは仲の良い恋人とかにみえるのかもしれない。現に前一度間違えられた。

 だけど私と凌空は、そんな関係じゃない。私達の関係は、所謂幼馴染み。家が隣同士で、生まれた時からの腐れ縁。

 そんな私達は、高校生になっても一緒に登下校している。それをみんなは、そんなの有り得ないっていうけど、私達はこれが昔から普通だったからなんとも思ってない。


「実は昨日新しいゲーム買ったんだー!」

「由希……それってまさかとは思うけどさー」

「勿論! 乙女ゲームだよ?」

「またかよ…」

」またかよって酷い! 乙女ゲームは私のバイブルだよ?! 聖書聖書!」


「はいはい」


 ブーッと頬を膨らませたら、その頬を凌空は突きながら溜め息を吐いていた。


「ということで、今日は私の部屋に6時に集合ね!」

「まじかよ…」「まじです! 今日私の部屋に来たら、じゃじゃん! もれなくバームクーヘンとジュースが付いちゃいまーす」

「行く! バームクーヘンがあるなら喜んで行く!!」

「やったー! 本当に凌空は小さい時からバームクーヘンが好きだね」

「おう! バームクーヘンがあれば何もいらない位な!」


 バームクーヘンの名前を出した途端、コロッと態度を変えた凌空に、私は内心ガッツポーズ。バームクーヘンっていう単語を出せば、絶対に凌空がOKしてくれるのも知ってた。


「それじゃあ六時に私の部屋に集合ね! あっ、お風呂も入って来てよー?」

「はいはい、分かってるよ」 自分達の家の前に着いた私達は、それぞれの玄関の取っ手を掴んで言葉を交わした後、家に入って行く。


「お母さんただいまー! 今日凌空と一緒に徹夜でゲームするね!」

「おかえり~。あらそうなの? でも明日休みだからって、あんまり遅くまで頑張っちゃ駄目だからねぇ?」

「はーい! あっ、バームクーヘンあったよね?」

「ちゃんとあるわよ。ジュースと一緒に用意しておくから」

「本当!? お母さんありがとー!」


 靴を脱ぎ棄てて大慌てでリビングに入った私に、お母さんはエプロン姿で濡れた手を拭いていた。大はしゃぎの私に、お母さんは笑みを浮かべて頭を撫でてくれる。 そしてお母さんの了承の言葉に、私の興奮はピークに達し、目を輝かせて「着替えて来る」とリビングから出て、自分の部屋へと続く階段を駆け上って行く。


「今日は十二時までゲームして~、十二時になったら凌空にお誕生日おめでとうって一番最初に言うでしょ? それでプレゼント渡して……よし完璧!」


 指折り数えて、机の上に置いてあるプレゼントの袋を確認する。実は今日六月十五日は、凌空の誕生日の前日。十二時丁度に、十七歳になる凌空を最初に祝いたいと、前々から計画をしていた。

 昨日ゲームを買ったのは本当だけど、別に今日すぐプレイしなくてもいい。ただ、何の疑いもなく凌空を部屋に呼びたかっただけ。 前から毎年代わり映えのしない凌空への誕生日に、私はつまらなさを感じていた。

 凌空の友達と同じ様にプレゼントを渡して、みんなと同じ様に「誕生日おめでとう」と言う自分。


 皆と同じ自分が、私は嫌だった。自分は、凌空にとって特別でありたい。プレゼントの袋を凌空にバレないように、机の下の隅に隠して私は部屋から出た。



****



「御馳走様でした! ふー、お腹いっぱい」

「お粗末さまでした。あっ、由希もう六時過ぎちゃってるわよ? 凌空君もう由希の部屋に来てるんじゃない?」

「あ! 本当だ、んじゃ行ってくるねー」

「ちょっと待って由希。バームクーヘンとジュース、忘れてるわよ?」


「あ、忘れてた。バームクーヘンないと凌空が拗ねちゃうとこだったよ!」


 バームクーヘンとジュースの乗ったトレイをお母さんから受け取って、私は足早に自分の部屋へと向かう。

 階段を上りながら、お風呂にも入ったしご飯も食べたと、最終確認を頭の中で行って、階段を上って右の突き当りにある自分の部屋のドアを開けた。


「あ、由希おせーよ。俺ちゃんと五分前に来たんだぞ?」

「五分前って言っても窓から入って来るんだから、もっとゆっくりでも良かったのに」

「何言ってんだよ! 例え一分掛かんなくても、約束の五分前には来るのが礼儀だろ?!」

「そういうもん?」

「そういうもん!」


 私のベッドで寝転んで力説する凌空に、私は内心関心しながら、ベッドの前に置いてあるガラステーブルの上にバームクーヘンとジュースを置く。

 その次に、ガラステーブルの前にあるテレビにゲームの本体を繋いで、ゲームソフトをセットする。


「今回のゲームはどんなんなんだ?」

「今回? 今回はね~、戦国時代が舞台のゲームだよ!」

「戦国時代!? お前武将とか好きだな~。この前はなんのゲームだっけ?」

「この前は幕末だよ! 新選組とか坂本龍馬とか~、桂小太郎とか。あっ、後は高杉晋作! 高杉と沖田のルートは泣けたね~」

「そこまでかよ…」

 テーブルの前に座って、涙を拭う振りをする私に凌空は呆れながらベッドから起き上がり、コントローラーを持ってゲームを開始する私の隣に座りこんだ。


「んでその前があれだろ? 妖怪とか天狗? とかが皆イケメンなやつ」

「天狗じゃなくて、"大天狗"ね!」

「大して変わんないだろ」

「変わります! あっ、真田幸村かっこいい~」


 ゲームのオープニング映像に映し出される美形の男の人達に、私が大騒ぎで見てる隣で、凌空はオレンジジュースを飲み溜息を吐いていた。

 あーでもないこーでもないと興奮して言う私に、凌空は呆れた様に合相槌を打ちながらも、ちゃんと聞いてくれてる。 それが嬉しくてたまらない。


「へ~、このゲームのヒロインって、現代から戦国時代にタイプスリップしちゃう設定だったんだあ」

「"へ~"って、知ってたから買って来たんじゃねーの?」

「ううん。パッケージの絵がかっこよかったし、声優さんも好きな人だったからいっかーって」

「何が"いっかー"だ! それで失敗したらどうするんだ? ん?」

「い、いひゃい…」


 ニヤニヤしてる私の頬を両方に引っ張って、口元を引き攣らせながら、凌空は恐い位の笑みを顔に張り付けてる。


「安い物じゃねーの。仮に古本屋に売りに行ったって、すげー安くしか買い取ってくれないだろ?」

「ふあい…」

「お前、確か半年前にもそんな風にゲーム買って失敗したよな? そんで、売っても全然高く買い取ってくれなかったって、半べそかいてたのって……誰だっけ?」


 私の頬から手を離した凌空は、赤くなった頬を擦る私に、未だにあの恐い位の笑みをむけていた。


「……私です」

「だよな」


 凌空の笑みを見ない様に顔を背け、私はガクッと肩を落とす。

 確かに全部、凌空の言う通り。

 テレビからは軽快な音楽が流れてるけど、私はコントローラーを握ったまま体育座りをして、陰気臭いと言われるような雰囲気を纏っていた。

 それは、今にもキノコとか生えてくるんじゃないかって位じめじめだと思う。

 

「そんなじめじめしてんなよ、頭にキノコ生えてくるぞ?」

「だってさ~…」

「ゲームやらねぇなら帰るからな!」

「それは駄目!!」


 言葉の通り立ち上がって窓に向かおうとする凌空に、私は瞬時にその腕を掴んで止める。

 凌空が帰っちゃったら計画が台無しになっちゃう!

 なんとしてもこの計画は成功させなきゃならない私は、キノコが生えそうだった雰囲気を蹴散らす。

 私の何時もに戻った様子に、凌空は仕方ないなって顔で、それでも隣にまた座ってくれた。


「帰るなんて冗談に決まってんだろ。俺まだバームクーヘン食ってねぇし」

「やっぱりバームクーヘンなんだ…」


 どこまでもバームクーヘンを食べる事に固執する凌空に、帰らなかったのは嬉しかったけど、冗談でも一緒に居たいからって、言って欲しかったな。

 私はちょっと口を尖らせながらゲームを進めた。




****




「ねぇねぇ凌空」

「んあ? なんだよ」

「これどっちがいいかな?」


 ゲームを始めて一時間。既にもう飽きた凌空は、私の後ろのベッドで雑誌を読みながらゴロゴロしてる。

 そんな凌空に、私は画面を指差して後ろを振り向く。凌空は起き上がって、私の指差す画面を見て顔を顰める。


「"幸村が行く所だったら、何処までも一緒に行くよ"か、"幸村の言う通り、お城に残る"どっちがハッピーエンドになると思う?」

「どっちでも一緒だろ…」

「一緒じゃないから! ハッピーエンドになるか、グッドエンドになるかのかなり重要な選択なんだからね!」

「はいはい、そうですね~…」


 力説する私に、凌空はまた寝転んで雑誌を読み始めたから、凌空のお腹にチョップを入れ一喝。


「それで、凌空だったらこういう場合どっちで嬉しくなる?」

「俺? そうだなー……言う通り城に残ってくれる方が良いけど」

 

私にチョップされたお腹を擦りながら画面を見て言う凌空に、「なんで!?」驚いて声を上げてしまった。

 だって、まさかそっちだとは思わなかったんだもん。


「なんでって言われても…」

「だって普通、どんな困難にも一緒に立ち向かう! みたいなのが良いんじゃないの!? それに、どんなに辛い状況にも2人一緒なら大丈夫! じゃなかった!?」

「どんな偏見だよ……。それって人によるんじゃねーの?」

「えー、そう?」

「そう」


 凌空の言葉に私は途端に面白く無くなって、「なんだつまんない」とベッドに寄り掛かった。凌空は、私が放り投げたコントローラーで勝手に選択して、勝手に決定して居る。

 それによって、止まったままだったキャラクターが動き出し、声優の声が私の耳に届く。 その声に漸く気付いた私は、慌てて画面を凝視する。


「ど、どれ選んだ!? どっち!?」

「"幸村の言う通りお城に残る"」

「えぇぇ!! なんでそれにしちゃったの!? セーブは!? セーブはちゃんとしてた!?」

「セーブなんてしなくても大丈夫だって」

「ハッピーエンドじゃなかったらどうすんの!? また最初からやり直しだよ!?」

「大丈夫大丈夫」


 焦る私を横目に、凌空は大丈夫だと物語を進めて行く。そんな冷静な凌空とは対照的に、私は内心大丈夫な訳がないよ不安だった。

 たかがゲームだと思われるかもしれないけど、私にとってはたかがじゃない。 一つの選択肢で、その後の物語が大きく変わってしまう。

 それはまるで――天国から地獄の様に。

 鼻歌なんて歌ってる凌空を見て、私は肩を落とした。

 数十分後、エンディングが流れるテレビ画面を見て、私は目を瞬く。

 その隣で、凌空は誇らしげに驚く私を眺めていた。


「嘘だ…」

「嘘じゃねーから、今もちゃんとエンディング流れてんだろ」

「グ、グッドの方でしょ?」

「ちげーって! 現実を受け留めろ」

「うう~……」


 めでたく二人が幸せにくっ付いているのを見ながら、私は頭を抱える。

 私の予想に反して、凌空の選んだ選択肢でハッピーエンドになった。 長年色々なゲームをプレイして来た私には、絶対の自信がある。

 全然乙女ゲームをプレイした事が無い凌空に、まさか当てられるなんて夢にも思わなかった。


「凌空に負けたー!! なんで分かったの!? なんで!?」

「別に勝負してねぇから。それに由希はな、男心が分かってないんだよ」

「お、男心…?」


 首を傾げて、何それって表情を浮かべて凌空を見つめる。

 私のその様子に、凌空はバームクーヘンを口に入れ大きな溜息を一つ。


「男が頑張れるのはさ、自分の帰る家があるっつー事なわけ」

「う、うん…」

「それで、その家に帰りを待っててくれる奴がいるとマジ良いわけ!」

「う…うん?」

「それがすげー綺麗な奴だったら最高だろ! 疲れて帰って来たら、綺麗な女が出迎えてくれんだぞ? これこそ男の夢!!」

「……」


 ホーク片手に熱く語る凌空に、最初は関心してた私だったけど、だんだん話が違う方向に進んで行ってるのを感じた。

 なんだか面白くなくなって来て、眉を寄せて口がだんだん尖がって来る。


「それってさ…男心じゃなくて、凌空の願望じゃないの?」

「んな訳ないだろ、男はみんな大体こんな事思ってるもんなんだよ!」

「そうかなぁ…。凌空だけだと思うけど」


 ギロリと軽蔑を含んだ目線を送る私に、凌空は心外だと肩を竦める。

 それでも私はなんとなく、隣に座る凌空との距離を少し空けて座り直す。


「なんで離れて座ってんだよ」

「え、うーん…。なんとなく?」

「なんとなくって……流石の俺も傷つくぞ?」


 若干避けられた事にショックを受ける凌空に、私は笑いながらその左腕に抱き着いた。


「冗談冗談! 今更凌空の変態発言に避けたりなんてしないよ!」

「お前…。それ喜んでいいのかわかんねぇよ」

「えーどうして? 褒めてるのにっ」


 凌空の腕に抱き着いたまま、コントローラーを持ってまた新たに最初からプレイする。


「そういえばさ、由希って髪伸ばさねーの?」

「へっ、急にどうしたの?」


 突然の呟きと共に、凌空は肩ほどの高さにある私の頭を見下ろして、そんな凌空を画面を見ていた瞳を向けきょとんとする。

 何の前触れもなく唐突に告げられた疑問に、私は不思議だった。


「いやたださー、確か昔は腰位まで髪があったよなあって思って…」

「そうだっけ?」

「なんだよ、覚えてねーの?」

「うん」


 私は肩ほどの髪を触りながら、首を傾げて考える。凌空の言う腰位まで髪が有った昔の自分を、私は全くと言っていい程覚えが無い。


「小学低学年位だった時にさ、お前の家に行ったらいきなり泣きながらハサミで自分の髪切ってたんだぞ? あれは流石にビビったな~」

「えー、嘘だあ」

「嘘じゃねーよ。お前髪長いの怖いとか、長いの嫌だって言ってたみたいだぞ? これでも思い出さねーの?」

「ん゛ー…。思い出しそうで、思い出せない」


 米神の部分をトントン叩き、目線を宙にさ迷わせていたけど、結局何も思い出せなくて笑って誤魔化す。


「まーいいんじゃね? ほら、ゲームやらねーの?」

「そうだよねー! あっ、今日中にクリアするんだった!」

「はあ!? 無理だから!」

「さあがんばろー!!」

「だから人の話聞けって!!」


 怒鳴る凌空にお構いなしに、ケラケラ笑いながらゲームを進めて行く。だけど、未だ文句を言う凌空に見えない様、私は顔を歪めて自分の髪に触れる。

 肩ほどまで伸びた髪は、定期的に切って肩から下に伸びないようにしてる。

 どうしてかは、私にも分からない。

 ただ、自分の心の深く。

 深く見えない所にある思いが、拒否しているようだった。


 

「由希、今日中ってまさか夜通しじゃねーよな?」

「えー? そんな訳ないじゃーん。十二時まで終わらせるの!」

「そーだよな! まさか夜通しするわ……はああ!? 十二時まで!? 今何時だと思ってんだよ!? 余計無理じゃねーか!」

「大丈夫大丈夫ー! スキップして更にスキップすればおーけー」

「おーけーじゃねーつーの!!」


 ぶつぶつ怒りながら文句を繰り返す凌空に、私はその反応が面白かった。だけど、心の何処かで拒否している思いがなんなのか、気になっていた。


****



 そんなこんなで、なんとか十二時前に無事ゲームをクリアする事が出来た。

 だけど集中のし過ぎで、私は固まった体を解す為に伸びをして。

 凌空は開き過ぎて乾燥した目を、何度も瞬きをして潤そうとしている。


「スチルはまだ何個か残ってるけど、一応はクリアー!」

「ああ゛ー…よかったなぁ」

「うん! よかったよかったっ。人間やれば出来ない事はないね!」

「俺の目は犠牲になったけどな…」


 体の骨をボキボキと鳴らしながら、スッキリとした表情で見る私に、凌空は未だに目をパチパチさせ目頭を押さえている。

 流石にそれを見て、ちょっと浮かれ過ぎたと反省。本当は今日中にゲームをクリアする必要なんてなかった。

 ただ十二時になった時の事を思うと、わくわくうずうずして、凌空の驚く顔や、喜ぶ顔を想像したらテンションが上がってしまったのだった。


「そんなに目、酷いなら…寝ていいよ?」

「急にどうしたんだよ…」


 さっきまであれだけはしゃいでいた私が一変、眉を寄せて凌空の様子を伺っている。それには凌空も、きょんとして目頭を押さえていた手をそのままに私を見つめていた。


「だって、目痛いでしょ? 私が十二時までにクリアする、なんて言っちゃから…」


 俯いて目を伏せた私に、凌空はそっと頭を撫でた。見上げれば、顔には困ったような笑みを浮かべている凌空の姿。


「何落ち込んでんだよ。たく、はしゃいだり落ち込んだり忙しい奴だな~」

「…だって」


 ちらちらと頭を撫でられながら、凌空の表情を伺う私に、凌空は何故か嬉しそうに笑ってる。


「目なんて乾いただけなんだ、もう痛くねーよ」

「ほんと、に…?」

「本当だって! 俺の事、信じらんねーの?」

「う、ううん! 信じる!!」

「ならもうこの話は終わり!」


 ぽんぽんと私の頭を叩いて、ニカッと歯を見せて笑う凌空に私も釣られて、一緒に笑い凌空の腕を掴んだ。


「ねぇ凌空、一緒に寝よ?」

「はあ!?」

「いいじゃん! 小さい時はいつも一緒に寝てたんだから、ね? それに十二時までだし」


 凌空の腕を引っ張り、後ろのベッドに共に乗る。


「それは子供の時だろ!? って、なんだよ十二時までって!」

「えー、それは内緒! 十二時になってからのお楽しみっ」

「お楽しみって。十二時までなんて後二十分もないだろ…」

「大丈夫大丈夫!」


 テレビを消し、部屋の電気が消えて暗くなった室内。一緒にベッドに横になった私と凌空。

 自信満々に笑って言う私に凌空は観念したのか、はーっと溜息を吐いて大人しく一緒に寝ることにしていた。


「おやすみ、凌空」

「ああ、十二時までだけどなっ」


 目を瞑って言う私に続いて、凌空も笑いながら言う。そして私達は、2人一緒に眠った。



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