3 魔王様のお考え
今回は魔王様(?)の視点です
それを触った時、さらさらと手の隙間から流れる感覚が気にいっているので、何度も何度も髪を手ですいているうちに、どうやら寝入った様子のその人物の寝顔を見つめる。
いつの間にやら眠ってしまった、最近城に居付いた少女を見下ろす。すやすやと寝息を立てて寝ている顔のなんと無防備な事か。
流れる蜂蜜色の柔らかな髪に、透き通る程白い肌に赤く膨らんだ唇からは、安らかな寝息が聞こえる。
最初に、この少女に出会ったのは、あろう事か、深夜の樹海の森だった。まともな考えを持つ者なら、獣も多いし、立ち入ろうなどとは思いもしないだろう場所だが、なぜかこの少女は、深夜の森にいたのだ。自分を見つけると、喜び勇んで駆け寄ってきたのだが、こちらとしても、人かどうか怪しい人物だと疑った程だ。
こっちは、隣の領主に前から誘われていたチェスの集会の帰りだったのだ。泊まっていけと、引きとめる隣の領主の誘いを断り、城に帰る道を走っていたからあんな深夜になったのだが。
この城をとても気にいっている。周囲の反対を押し切り、わざと共も連れずに、半年程前から、この別荘でもある城で一人気楽な暮らしをしているが、そろそろ帰ってこいといい加減、痺れを切らしている事だろう。しかし、王都での暮らしは煩わしいから面倒な事だ。
安らかな寝息の聞こえる少女に視線を落とし、その無防備ともいえる寝顔を見ているとなぜか、笑みが出てくる。
だいたいこの少女は、自分が起きている時は、何を言うでもなく、自分の事をじっと見ている。それも影から食い入るように見つめていて、決して自分からは近寄ってはこない。
ある時は、本棚の隙間、扉の影、机の下。場所は様々だが、真剣な表情で時には、何やら眉間に皺をよせ、またある時には、ブツブツ独り言を言いながらも、こちらを見ている。かと思えば、自分が呼べば寄ってくるし、多少行動は奇妙だが、よく世話を焼いてくれる。そしてあんな気難しい顔で人を見ておきながら、髪を触らせやすやすと寝入ってしまうとは、まるで猫のようだと思った。
きっと人間観察が趣味なのかもしれないと思う。まぁこちらは害がないので、そっとしておいているが。
この少女はなぜか自分の事をなぜか「マオウさま」と呼ぶが、なぜにマオウさまなんだろうか。
そもそもマオウとは何だ?そう疑問に思いつつも、そのままでここまで来てしまった訳だが。
不意に少女が顔を歪めて
「…やだ…!いかないで…!」
何やらうなされてきたので、その手を握りしめてやる。そうする事で安心したのか、彼女はまた安らかな寝息を立て始めた。
この少し力を入れて握れば容易く折れてしまいそうな小さい手を握りしめていると、彼女の手の温かさが伝わってきた。その少女の手を見て、少し顔をしかめる。少女の手は労働者の手をしていた。白く小さいはずの手は、傷だらけで荒れていた。そっと荒れた手を力加減を間違えないように握り返す。
なんだか、自分の気持ちまで落ち着いてくるような安心する感覚に、この気持ちは何と名前がつくのだろう?と少し疑問に思った。
なんか…だんだん一話が短くなってきたよ。 ヒィィィ
お付き合いありがとうございました♪




