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間引き

「間引きですか。たしかにそれは、効果的かもしれません」

軍師は言った。


「しかし、どうやって間引きます」

軍師は尋ねた。


「長距離からの攻撃でしょうね」

ミリオタは言った。


「となると、弓ですね」

軍師は答えた。


「弓はマズい。人間の仕業だとバレる」

物理は言った。


「人間の仕業でしょう」

軍師は不思議そうに言った。


「たとえば、魔族や魔獣が一枚岩ではなく、統率が取れておらず、同じ魔族や魔獣でも、種類が違えば食ったりするのなら、どうですか?」

チェスは言った。


「人間の仕業だと断定できないほうが賢いですね」

軍師は悪そうな笑みを浮かべた。


「しかし、それでは倫理的な問題が」

マービンが言った。


「こんなに被害を出されておいて、倫理的もなにもありません。

このまま国を滅ぼされたら、天国でご先祖様にどう謝罪したらいいかわかりませんよ」

王女がマービンの肩を叩いた。


マービンはうなづいた。


『間引き』その一見残酷な選択は、

この国が選んだ答えであり、苦渋にまみれた良心でもあった。


「弓ではない手段があります。

投石です」

ミリオタは手を上げて答えた。


「しかし、石を投げるのだと威力が弱いのでは?」

軍師は尋ねた。


「私たちの世界で、巨人討伐の英雄が使っていた道具を作ります。

ボロ布をご用意ください」

ミリオタは言った。


侍女はボロ布を用意した。

ミリオタは慣れた手つきで、何かを作りはじめた。

30分ほど経ち、ひも状の道具が出来上がった。


「これが投石機です。巨人討伐の英雄が使っていた道具と完全に同じではないと思いますが、威力は強いです。実際に試してみましょう」

ミリオタは言った。


「では庭で標的をつけてやってみましょう」

軍師は言った。


皆は庭に向かった。

軍師は衛兵に指示させ、離れたところに鎧兜のセットを置いた。

「あれを標的にしてください」

軍師は言った。


「壊れても大丈夫なのですか」

ミリオタは尋ねた。


「ふふふふ。あの鎧兜は熟練の職人によって作られたもの。石などで傷一つ与えられませんよ」

王女は笑った。


「もし出来たらどうします?」

チェスは尋ねた。


「そうですね。要望をなんでも聞きましょう。但し、王家に著しく不利益をもたらすもの以外であればですが」

王女は笑った。


「そうですね。熟練の職人によって作られたなら、傷をつけるのも難しいでしょう。まぁとりあえずやってみます」

ミリオタは言った。


ミリオタは投石機に石をつけ、ふりかぶった。

(ひゅん)

石はすさまじい速度で鎧兜にぶつかり、鎧兜はふっとんだ。


軍師があわてて鎧兜を確認する。

「王女様、大変です。鎧に穴が空いています」

軍師は叫んだ。


皆、あわてて鎧兜を確認しに行く。

そこには、大きくはないが、確かに穴が空いていた。


「要望は皆と相談して決めますので」

チェスは笑った。


「想像以上でしたね。しかし、この武器があれば、魔王軍にもすぐに勝てるのでは?」

王女は言った。


「模倣しやすいですからね。全面配置すると、それはそれで面倒です」

ミリオタは答えた。


「では、やはり間引きでしょうか」

軍師は尋ねた。


「そうでしょうね。道具は投石機とするとして、問題は、どの程度の量を、どこで間引くかですね」

ミリオタは答えた。


「やはり脆弱なのは、境界付近ですね。群れと群れとの」

ハッカーはニヤニヤして言った。


「しかし、境界付近にどう近づきます」

軍師は尋ねた。


「試していないので、なんとも言えませんが、魔獣の糞を体に塗って近づくと、バレにくいと思います」

化学は言った。


「魔獣の血をつけると良いと聞いたことがありますが、なぜ糞なのですか?さすがに臭いですよ」

軍師は笑った。


「基本的に私たちも血のニオイがしたら危険を察しますよね。

動物も同じだと思います。

血は異常のニオイ。

糞は日常のニオイです。

しかし、これもあくまで仮説です。

テストしてみないとわかりません」

化学は答えた。


「まぁ私たちが糞を塗るわけではないので、構いませんがな」

マービンは笑った。


一同誰も笑わなかった。いや、笑えなかった。

生死の危険を伴う業務であるのは、誰の目にも明白だったからだ。


「それで、糞を塗ってみるとして、どれくらいの数を間引きますか?」

軍師は尋ねた。


「数学的に言うと、

不足が5~10%の場合、節約・内部配分・狩場の拡大で吸収されがちです。

侵攻は例外でしょう。

境界は不足が10~20%の場合です。

備蓄が削れ、弱者が出始めます。

集団なら、侵攻の期待値がプラスになりやすい帯域です」

チェスは答えた。


「非常にわかりやすいが、数字が苦手で困る。わかりやすい削減目標は出せますかね」

軍師は尋ねた。


「数学的に言うと、

10~15%の静かな間引きが最適解です。

5% → 反応観測

さらに5% → 行動変化確認

まだダメなら +3%

という風にするといいでしょう」

チェスは答えた。


「なるほど、数字はわかりました。

しかし、運用はどうしましょう」

軍師は尋ねた。


「我々は、こちらの世界の常識がわからない。例えばどのような運用があるのですか?」

ミリオタは尋ねた。


「そうですな。

侵攻があれば防衛する。追撃することもある。強襲することもある。

そんな所でしょうか」

軍師は答えた。


「例えば、侵攻があった時には、弓で応戦。入ってきた相手のみ槍や剣で戦う。

そして追撃はしない。こういう戦い方はどうでしょうか?

これなら10%程度削げるのでは」

物理は尋ねた。


「1割くらいの損耗で一時撤退はありえますよね。そこで攻めてこなければいいですが」

軍師は答えた。


「その魔獣の死骸を、その魔獣の縄張り近くまで持っていき、そこに置いてくるというのはどうですか」

化学は尋ねた。


「多少危険だけど、食料を提供することになるわね。あと襲ってきたのとは別の種族の魔獣の食料になれば、魔獣同士の争いの火種になるわね」

ハッカーは答えた。


軍師はしばらく地図を見つめたまま、言葉を失っていた。


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