後方支援の勇者
「勇者様方しばらくお待ちください」
マービンは侍女に王女を呼びに行かせた。
数分後、王女が現れて、マービンと話をした。
表情は少し困惑しているようだった。
「勇者様方、まずはステータスを見させていただいてよろしいかな」
マービンは尋ねた。
「どうぞ」
物理は言った。
「では、この石板に手を置いてください」
マービンは言った。
物理が手を置くと、石板が光って、ステータス画面が現れる。
「どんな仕様なの?あのタブレット端末」
ハッカーは不思議そうな顔をしている。
マービンと王女は、深刻そうな顔をして、ステータス画面を見ている。
「知力は突出して高いが、その他は完全に凡人だな」
マービンは呟いた。
物理は苦笑いをしている。
「では皆様も」
マービンは言った。
皆順番に石板に手を置いていく。
マービンと王女の顔色がどんどん悪くなっていく。
「皆様、知力は突出して高いが、その他は完全に凡人ですな」
マービンは言った。
皆、苦笑いをしている。
そりゃそうだ。それが引きこもりだ。
そう言わんばかりの目をしていた。
「王女様。前線はムリです」
マービンは首を振った。
「しかし、前線に立たないと士気は保てません。
勇者が前に立たなければ、兵たちは逃げます」
王女は言った。
マービンは目を伏せた。
「あのぅ。前線に勇者が立たなくても、士気が保てたらいいんですよね」
ミリオタは手を上げた。
「もちろんです。しかしそんな事が?」
マービンは不思議そうな顔をしている。
ミリオタは、皆に目くばせをする。
一同うなづく。
「基本的に、士気を保つ為に象徴的な人物が出るのは、劣勢の局面です。
そしてこれは局所的なものです」
ミリオタは言った。
「あなたは何を言っている。その劣勢の局面なのですよ」
王女は冷静さを保とうとするが、語気が荒れる。
「それは戦術的には正しい。しかし戦略的には詰みです。
軍師もしくは、参謀殿はおられますか」
ミリオタは言った。
「呼んできなさい」
王女は侍女に命じる。
10分ほどして、この国の軍師がやってきた。
「お呼びですか」
軍師は言った。
「この者と話なさい。私には理解できない」
王女は命じた。
「今どのようなお話で」
軍師は尋ねた。
「我々が前線に出るのは、戦術的には正しいが、
戦略的には詰みだと申し上げたのです」
ミリオタは言った。
「なるほど。それは一理ありますな。
しかしなにか妙案があるのでしょうか」
軍師は尋ねた。
「軍師殿は、現場の状況を知らずに采配ができるとお考えで?」
ミリオタは答えた。
「たしかに、そうですね。
そんな馬鹿げた話はない。
えぇわかりました。
状況を説明いたしましょう。
ただ、それでもムリなら、前線に出ていただきます」
軍師は答えた。
ミリオタは唇をかんだ。
「ちょっといいですか?
私たちが仮に前線に出た場合、そこで死亡する確率は跳ね上がります。
それであれば、協力せずに、ここで処刑されるのを待ちます。
どうせ皆、魔王軍に滅ぼされるのだ。一緒に死を待ちましょう。
それでいいですか」
物理は皆の方向を見る。
一同うなづいた。
軍師とマービンは王女を見る。
王女は目を閉じ、考え込んでいる。
「わかりました。ただし成果を出しなさい」
王女は答えた。
「ちょっと待ってください。いいですか」
チェスは皆に目配せをする。
一同うなづく。
「なになの?言いなさい」
王女は少しイラついている様子だ。
「成果という言葉が曖昧すぎます。
現在の局面を分析すると、
相手側の殲滅は不可能です。
我々のステータスを見てわかるでしょう。
特別なアイテムもない。
特別な魔法もない。
そして前線は、レベルの低い騎士や魔法使い。
だから勝利条件を提示して頂きたい」
チェスは言った。
一同うなづく。
王女は軍師に顎で指示を出す。
「そうですね。侵攻を食い止めて頂ければ、当面は助かります」
軍師は答えた。
王女もうなづく。
「皆、それでいい?」
物理は尋ねた。
一同うなづく。
「それで皆様方は、何をされるのですか?」
軍師は尋ねた。
「異世界の知識を使った戦略のアドバイスです。
勝ちにくい戦いを勝ちやすくする方法や、
裏技を伝授すると言ってもいいでしょう。
それであれば我々が前線に出なくても、問題ないでしょ」
物理は言った。
「たしかに、我々が知らない知識をお持ちなら戦略的に有利ですものな。
それでしたら、あなた方が前線に出なくても、いや出ないほうが有利な展開ができます。
貴重な資産ですから」
軍師は笑った。
一同うなづく。
「では、さっそく軍事会議といきましょう。まずこれをご覧ください」
軍師は地図を広げた。
そこには王国の形や山、街などが大まかに記されていた。
「壊滅した街と村がこの×の部分です。今交戦中なのが▲の印の部分です」
軍師は言った。
「ちょっと確認したいのですが、魔王軍の統率は取れているのですか」
ミリオタは尋ねた。
「統率が取れてるとは思いにくいですね、我々がやる戦略とは大きく違います」
軍師は答えた。
「どのように違うのですか」
ハッカーは尋ねた。
「長期戦略がなく見えます」
軍師は答えた。
「腹が空いたから、襲っていると考えるとどうですか?」
化学は尋ねた。
「……そうですね。それは一部でしっくりきます。つまり考えられている部分と、そうでないものが混在するのかもしれません」
軍師は答えた。
「その考えられてそうな部分と、そうでない部分を仕分けはできますか。曖昧なものもあってもいいので」
物理は言った。
「それであれば、そうでない部分を■、考えられているを●、曖昧を?として、書きます」
軍師は言い、地図にマークを入れ出した。
「腹が空いていたから襲っているとしたら、何か打てる戦略はあります?」
チェスは尋ねた。
「間引きですね。個体数調整で、なんとかなります」
化学は答えた。




