『魔法少女は世界を守るが、魔法少女は誰が守ってくれるのか?』界隈
20XX年、SNSのアニメ界隈では、一つの作品がカルト的な話題になっていた。
『魔法少女は世界を守るが、魔法少女は誰が守ってくれるのか?』
である。
通常の魔法少女視点ではなく、魔法少女を支える側からの視点が斬新だと話題だった。
そして、このアニメは他のカルト的アニメ作品と同じように、
一部のガチオタ勢に熱狂的に支えられていた。
【某SNS界隈】
物理「あと一時間で、はじまりますな」
チェス「吾輩緊張してきました」
ミリオタ「今日最終回でしょ。もちろん二期もするんでしょうね」
ハッカー「我々がいるから、するに決まっているでしょう」
化学「私、WEB原作の時からファンですから、展開がわかってても、何度でも食えます」
物理「拙者も」
チェス「もちろん吾輩も」
ミリオタ「私もですよ」
ハッカー「当然ですよ」
化学「しかし、今日が最終回なんて、早すぎます」
熱狂的ガチオタ勢の書き込みは、ここで途絶えた。
……
ここはトリネギスタン王国の召喚の間。
勇者召喚の為に作られた特別な部屋。
この国の王女と、賢者のマービンが手を取り合い喜んでいる。
「王女様、成功しましたぞ」
マービンは喜んでいる。
「やりましたね。マービン。しかし一気に5人とはすごくありませんか」
王女は驚いている。
「まったくですぞ。これで一気に態勢逆転です」
マービンは笑いが止まらない様子だ。
そこには、
細身で長身の男性。
細身の金髪クリクリの小さい男の子。
細身で背は小さめで地味な男性。
ショートカットの女の子。
黒髪ロングの小さい女の子がいた。
皆、呆気に取られている。
「しかし、勇者様にしては、ずいぶん頼りない感じですな」
マービンは少し不安そうだ。
「しかし神に選ばれた方々ですから、間違いはないはずです」
王女は興奮が止まらないようだ。
細身で長身の男性が手を上げる。
「あの少しよろしいですか?」
「どうぞどうぞ」
マービンは言った。
「こちらはどこですか?」
細身で長身の男性が言った。
「そうでしたな。
こちらはトリネギスタン王国。
私は、賢者のマービン。
こちらは王女殿下です。
あなた方は、
勇者召喚の為に呼ばれました」
マービンは答えた。
「では誘拐という事ですね。
誘拐だと……、どれくらいの刑罰でしたっけ」
細身で長身の男性が言った。
「僕の記憶が正しければ、一年以上十年以下の拘禁刑だったと思います」
細身の金髪クリクリの小さい男の子は言った。
「ちょっと待ってください。
あなた方は、
勇者召喚の為に呼ばれたのですよ」
マービンは言った。
「あなた方は、日本国内にいる我々を誘拐したのですから、これはもう国家レベルの問題になると思います。トリネギスタン王国と、我が国とでは国交はあるのですか?」
細身で背は小さめで地味な男性は言った。
「ちょっと待ってください。
あなた方は、
勇者の意味がわかっていますか」
マービンは言った。
「勇者の意味ですか?
勇敢な者とかそういうものでしょ。
それは性別を示すものでもない。
技能を示すものでもない。
国家資格などの資格を示すものでもない。
たんなる押し付けられた職業・もしくは立場なのでは?」
ショートカットの女の子は言った。
「いや。
そうですが、
私たちは困っているのですよ」
マービンは困惑した顔をしている。
「そりゃそうでしょうね。
困ってもない人が誘拐などしない。
そして私も今困っています。
アニメがもう始まるのですよ。
さっさと帰してください」
黒髪ロングの小さい女の子が言った。
「ちょっと待って。
今の時間のアニメって、魔法少女は世界を守るが、魔法少女は誰が守ってくれるのか?」
ショートカットの女の子は尋ねた。
「まさか、あなたも」
黒髪ロングの小さい女の子が言った。
ショートカットの女の子はうなづく。
召喚された者達が、皆一応に手を上げる。
(おぉ同士よ)
「ではお仲間という事で、
私物理と申します」
細身で長身の男性が言った。
「チェスです」
細身の金髪クリクリの小さい男の子は言った。
「ミリオタです」
細身で背は小さめで地味な男性は言った。
「ハッカーです」
ショートカットの女の子は言った。
「化学です」
黒髪ロングの小さい女の子が言った。
「皆さん、あのSNSの界隈の方と……」
物理が尋ねた。
皆うなづく。
「まぁ、じゃあオフ会という事で……」
物理が言った。
「そうですね。皆さんと一緒なら不安は少ないです」
チェスは少し顔を緩ませた。
「しかし、どうします。このパターン。ラノベやアニメですと、しばらく帰れないパターンですよ」
ミリオタは頭をかいている。
「最悪配信があるから、見れますけど……」
ハッカーは複雑そうな顔をしている。
「私引きこもりなんで、外に出るのムリですよ」
化学は困った顔をしている。
化学の言葉に皆、手を上げる。
「えっ。皆さんもひきこもりなんですか?」
化学は嬉しそうな顔をした。
皆うなづいている。
「すみません。
楽しそうに会話されてる所。
皆さんお知り合いなのですか?」
マービンは困惑した顔をしている。
「まぁ、同士だよね」
物理が笑った。
皆うなづいている。
「ではご協力いただけるのですか?」
マービンは尋ねた。
「皆さん。どうします」
物理が小声で言った。
「とりあえず、皆さんと打ち合わせをしてから決めたいです」
チェスは言った。
皆うなづいた。
「あの。まず状況整理のために、打ち合わせをしたいので、どこか部屋を用意してもらえますか」
物理が言った。
「ではこちらへ」
マービンは皆を部屋に案内した。
王城の中は寒く、悪臭が漂っていて、いたるところに藁が散乱し、ネズミが走り回っていた。
「臭いし、ネズミはいるし。なにココ?本当に王城なの。魔王でも住んでるんじゃない」
ハッカーは複雑そうな顔をしている。
「中世だと、これがディフォですよ。トイレは垂れ流しだし、衛生観念が基本的にバグってますから」
ミリオタは苦笑いをしている。
「しかし、長期滞在することになると、さすがにこの環境はムリですね」
物理が言った。
皆うなづいた。
「こちらです」
マービンは扉を開けた。
そこは、まだ割とマシな部屋だった。
「侍女をお付けしますので、なんなりとお申し付けください」
マービンはそう言い去っていった。




