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八話 移住先の発見


「で、出来た……」

 遂に完成したぞ……! 船の外装がっ……。


 内装は家具置いていくだけだから楽。キッチンとかも作るけど、水道の仕組みがあやふやだから水魔法で。本当に便利だな、魔法。

 そりゃ産業革命が起きないものだわ。だって大抵の事は魔法と権力で事足りるんだから。



 次は待ちに待った内装。手伝いたいと言ってくれた母さん達の言葉に甘え、内装は皆で作った。

 皆で作るって、小学校の図工以来かも。久々にやると楽しい。俺は配置センスが皆無だから、指示に従って物を運ぶだけの簡単なお仕事。ただ運ぶだけで家具屋のセットみたいな部屋が出来上がっていく。楽でしかない。



 個々の生活スペース、共用の風呂とトイレ、後はロビー。キッチンはロビーの奥に作るし、作業部屋や子供の勉強部屋なんかも用意した。

 平民だと勉強していない人が大半だから、そこは母さんとかマリーに指導してもらうつもり。俺はこの巨体、目的地まで動かさないとだから。



 現在、海底で作業中だが、まだ一度も見つかった事はない。ブラインドの大型結界が長時間維持できるようになったのが大きいな。

 偶に漁船が沖に出ていくのが見える。オリヴァーと父さんから逃げる事を希望した人間の名簿を貰っているから、それに合わせて部屋を作った。予備でまだ少しだけ部屋は余っているが、基本使わないものとして家具は置いていない。



 俺の部屋は勿論、操舵室。大層な事をする予定はないし、夜も最悪ベッドだけあれば事足りる。両親にもここは手出し無用としておいた。


「母さん、今からちょっと出かけるから遅くなる」

「え、もう暗いわよ」

「暗い方が都合が良いんだ」


 島を探しに行くから、誰かに転移を見られるのは非常にまずいのだ。志半ばでログアウトなんて、俺は耐えられない。



「そう? じゃあ気を付けて言ってらっしゃい」


 作業を終わらせて家に送り返したら無限収納に船を仕舞って証拠隠滅。ヴィーネに世界地図を出してもらって、大陸が無いところを調べていく。

 大陸がある=誰かの監視があるって思った方が良い。海のど真ん中とかに出る可能性は十分あるから、結界の張れる俺以外には絶対に出来ないことだ。



 平面地図を見る限り、東側は島が少ない……というか殆ど無い。ということで、俺が狙うのは東だ。

 極東の国、とかまた言われるんだろうか。俺の時はそんなこと言われてなかったが、昔の日本は他国から見てそんな呼ばれ方をされていたと思う。

 後は、黄金の国ジパングとか。黄金の国って呼ばれるようになった経緯がやば過ぎるのは覚えている。ヨーロッパでは貴重だってされていたような金をポンポン渡していたから「資源が豊富な国だ」って意味でマルコ・ポーロ? だっけか。その人が称したはず。



 この辺は中学で少し触れたくらいだから朧げだけどさ。俺が行くところも鉱石が有ると良いのだけれど。

 他国と貿易することになったら鉱石はかなり需要があるからな。まあ、掘り過ぎには注意しないと鉱物なんてすぐ無くなるけど。



 ということで、地図をタップ。出てみると、海のど真ん中だ。海底にいる。結界を常時発動にしていなければ、今頃水圧で鼓膜が破れていただろう。危ない危ない。


 だが、収穫はあった。地図には海しか載っていない筈なのに、目の前には鬱蒼と茂る森があるのだ。しかも、目視出来る範囲いっぱいに広がっている。これは相当面積大きそう。今まで空白だったのが疑問なくらい。



 島? 大陸? に上陸すると、暖かい風が俺の髪を撫でた。日本のような湿っぽさは無く、カラッとした風だ。


 今の所は地中海性気候っぽいな……と思っている。俺も実際地中海の方とかオーストラリアみたいな該当箇所に行ったわけではないが、中学地理の知識をフル活用した結果、大体そんな感じ。

 もし特徴が合致しているなら火事対策は必須だな。適度に雨が降るなら然程問題が無いのだが、地中海性気候の夏は乾燥していたはずだ。



 俺は石造りを推すつもりは一切無い。出来れば古代〜中世の建造物が欲しいのだ。ラノベでヨーロッパ風の石造りは飽きるほど見た。

 だから、寝殿造りとかの平安っぽい建物が見たい。そのための火事対策……どうしようか。




 …………後で考えれば良いか。俺が思い付くのはさすまたくらいだし、今浮かばないなら他の人の意見を聞けば良い。もう一人じゃないんだから。


 後は農業が出来るかだな。海からなるべく離れた方が塩害の被害を受けにくいはず。地中海性気候っぽいけど、農地は関東平野みたいな所がありがたい。昔、活火山があったりすると嬉しいんだけど……。関東ロームって火山灰が関係あるから。



 確か関東平野って、野菜の栽培量が多かったよな。確かそう。農業については素人だからその辺は農家の人に任せちゃいたい。根粒菌みたいな用語は表面だけ分かるんだけど……。俺じゃ応用が出来ないからさ。


 地図タップ転移で数十キロ分くらい進むと、目の前に草原? が広がっていた。



「何だこれ。…………!」


 それは、日本で普通に生活していたら一度は目にするイネ科植物だった。確か、弥生時代で水田が伝わってくる以前から日本にはその辺の雑草として稲が生えていたよな。



 土も若干湿り気があるこの辺りは、上手くやれば稲作が出来そうだな。この風で土が乾燥し切らないってことは、適度に保水性を持つってことだから。

 他の植物についてはまだ分からないこともあるが、それらは俺の解説が無くとも上手くいくはずだ。知らないと思われるのは経験が無い稲作くらい。




 俺、料理は人より出来ないけど農業の知識は人並みにあるから大丈夫。口で簡単に説明すれば、農家の人が大筋は理解してくれる。だってプロだから。

 一年目は無理だとしても、その後は良くなっていくだけだ。改良が出来るんだから。俺には出来ないけど。



 何もせずとも稲(雑草)が育つなら、水田を休ませるのに使うマメ科の植物も余裕で育つだろう。ここは良いな。

 さっき見た感じだと、海岸沿いは漁港も作れそうだ。地震や台風が無ければ沿岸部に居住区を設けて問題無いかもしれない。防風林や垣があれば、ある程度の潮風も防げる。




 そして、一番重要なことだが、まだ一度も人間に出会っていない。つまり、ここは無人島である可能性が極めて高いということ。地図に無いのならどこかの大陸と陸続きになっている線も薄い。


 よし、ここ隠しちゃおう。結界を張って、家に帰るともう夜。あの島は真昼だったし、エクレシアが冬なのに対して夏っぽかったから、この世界も地球みたいに丸いんだ。



 ここまで来たら内装作業終わり次第、出られるな。長かった。とても長かった。ずっと魔法と脱出に関することしかやってこなかった十年間。漸く一歩進めるんだ。



「ただいま」

「おかえりなさい、フェリーチェ」

 夕食は明日の朝に食べる事にして、その日は泥のように眠った。自分が思っている以上に疲労が溜まっていたようだ。


――――――――――――――――――――


「セレン。僕達、本当に国に逆らうんだね」

「ええ、あの子を信じる判断は正しかったのね。あんな船、今のエクレシアでは絶対作れないわ」


 フェリーチェが眠りについた後、夫婦だけの秘密の会議が執り行われた。フェリーチェが初めて自分の想いを語った後は二人共、どうやって諦めさせようかと頭を悩ませていた。だが今は息子を信じ、国を出るための賛同者を集めている。



 同業者だけでなく、農家や家具職人、服飾師、建築士、楽器職人等、集まった人間は様々だ。どれも自分と同じ様に国に搾取され、かけた労力の割に大した利益も上げられずに苦しい生活をしていた者ばかりだ。


 オリヴァーやマリーに勧誘を受けていた者も多くいたため、話はスムーズに進んだ。まだ正確な日程は決まっていないものの、もう少しこの生活に耐えたら成功は約束されたようなものだ。



 もしこの判断で今よりも苦労することになったとしても、それはそれで良い。フェリーチェは建国すると言った。セレンもヴァングラスも、あの子ならば試行錯誤の末に素晴らしい国を作るだろう、と確信していた。二人の中にもう迷いは無い。あるのは確かな期待だけだった。


「これからもっと忙しくなるわね」

「望む所だよ。僕達はフェリーチェを信じて従うだけだ」

「そうね」



 悲壮感の欠片もない雰囲気で、今回の会議は幕を閉じた。

 出発まであと少し。

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