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七話 協力


 あの日以降、父さん達が俺の顔を見る度に更生を促してくる様になった。

 息子を反逆者にしたくないからなんだろうけど、譲らない相手によくめげないなぁと思う。


 もうずっとこの調子だ。必死な二人には申し訳ないが、流石にこのやり取りも飽きてきた。潜水艦も徐々にパーツが出来てきているから、その気になればゴリ押しで行ける。

 まあ両親も友達も、いずれ納得させる気ではいるけどさ。



 皆には隠しているが、開発した攻撃魔法の発動率は上がり続けているからそのうち十割を叩き出せるようになるだろう。

 今は大体八割くらいの確率で正確に発動する。ただ、本物で試した事が無いから何とも言えない。いつも使う肉は自分の体から切り出したものだし、実寸大と比べると小さいから。



 分身の魔法……欲しかった。自分がこうやって実験しているからか、人体実験に走るまでの道のりがよく分かる。自分だけでは捗らないからな。出来ない事も多い。


 そろそろ候補地も上げておきたいな。俺の張る結界はブラインド? 目隠し? にもなるらしいし、俺達が行く時まで隠しておきたい。





「フェリーチェ、本当に考え直す気は無いの?」


 十歳になり、ある程度のパーツは完成した。特級にはなったが、流石にぶっ続けのスピード工事は無理だった。

 そして漸く海底で組み立てに入った頃、両親にまたそんな事を聞かれた。最近はそういうのが無かったから忘れかけていたが、そうだ。反対されていたんだ。



「無い。後に引く気も無いし、ここまで来て諦められるほど俺、物分かり良くないし」


「その、私達も何か出来ないかなって……」


「………………は?」

 自分でも驚くくらい間抜けな声が出た。あんなに反対していた両親が自ら協力を申し出てきたのだ。仕方ないよな。



「僕もセレンと話し合って腹を括ったんだ。五年間、何とか諦めて貰おうとしていたけれど、守護者を信じてみるのも悪くないかなって思ってさ」


「えっと……良いの? それで。俺がやってるのって、ここじゃ犯罪なんでしょ?」

「止める気が無い奴が何を言う」

 父さんから向けられる呆れの視線が強くなる。



「…………。ありがとう。今は出来るだけ多くの協力者を募りたい。俺がしたいのは亡命じゃない。建国だから。色々な職種の人が必要なんだ」

 建築士とか、家具職人とか、服飾師とか。


「頑張ってみるよ。知り合いに声をかけておく」



 正直言ってあまり期待はしていない。そもそも守護者どころか、俺を知らない人も多いだろうし。まず、どうやって切り出すのかも分からない。「国出ようと思ってるんだけどさ――」みたいなことか?


「うん、お願い」

 顔には出さず、笑顔だけ向けておいた。やるのは自分じゃないし、父さん達に任せよう。よし、あとはオリヴァー達だな。カミングアウトしてから会ってないし、もう直接突撃するか。


 家の場所は知っている。俺の家から数十メートルしか離れてないから。

 コンコンと木の扉を叩くと、暫くしてオリヴァーのお母さんが出てきた。


「お久しぶりです。オリヴァーは居ますか?」

「ええ、さっきマリーちゃんも来たわよ」

 丁度良いな。マリーん家に行く手間が省けた。



「フェ、フェリーチェ……? えっと、久しぶり……」

「久しぶり。オリヴァー、マリー」


 何か、畏怖の視線? を向けられているような気が……。別れる前に何かしたっけ。無意識に怖がらせるような事とか。いや、してないよな。




「オリヴァー? 俺、何かした?」

「い、いや……そういうわけじゃ……」

「どういうわけ?」


「無自覚かもしれないんだけど、威圧感が五年前の比じゃない」

 威圧? 魔力がダダ漏れってことか?



『貴方、私が何のために指輪作ったと思ってるのよ』

『指輪? あぁ! 特級に上がってから貰ったあれのこと?』

『それ以外に何が有るのよ』


 魔力を制御するのが下手な俺にヴィーネがくれた、魔力を抑えることに特化した指輪型の魔法具。外で着けると目立つかなって思って外してたんだ。

 ヴィーネ曰く、オリヴァーは二級。級が上である程こういうのは感じ易いらしい。ちょっと申し訳ないことをしたな、と反省。


 無限牢獄を弄って作った無限収納から指輪を出して、左手の親指に嵌める。



「どう? もういける?」

「うん……大分マシになった」

「それで、この五年で何か有ったの? 私達の所に来るってことは」


 どうやって切り出そうか悩んでいたので、このマリーの言葉は正に渡りに船。



「大体の船体部分は出来上がった。後は組み立てだけ。攻撃魔法の発動率も結構上がったし、二度目の説得に来たんだ。父さん達も説得出来たことだしな」

「そのことね」

「そんなことだろうと思ったよ」

 初めから、俺がここに来た時点である程度は察していた模様。



「ある程度の数は集まってるわよ」

「結構大変だったんだからな?」


「えっと……何のこと?」

 得意気にする二人だが、俺には何が何だか。



「出るんでしょ、国を」

「人手は多くなきゃ」


 え、マジで? あんなに反対してたのに? 勝てるわけ無いとか、無謀だとか。五年でこの変わり様。どういう心境の変化だろうか。いや、ありがたいけどさ。


「出来ることしようって二人で話したんだ。あの日は本当に驚いてたから否定しか出来なかったけど、フェリーチェの負けず嫌いに賭けてみようって」


 俺が負けず嫌いかどうかも知らないうちから俺に賭けたんか。週七でパチ屋に入り浸るようなパチラーもビックリの博打だな。


 じゃあ家に遊びに来なかったのは二人なりに出来ることをしてくれていたってことだ。



「ありがとう。オリヴァー、マリー」

 いやほんとマジで。


「今は僕らと同年代の子供が大体百二十人くらいいる。その親も含めると結構な数いく」

「私達もだけど、まだ守護者がどういうのか分からないから、あまり期待はして無さそうだけど出る時に呼んで欲しい、だって」


「それは父さん達がやってくれるって言ってる」



 ただ、去年辺りに隣国グランベリアとしていた鉱山を巡る争いは、長期化の末に一時休戦。平民の怪しい行動に上層部が気付き易くなる。あまり無理はして欲しくない。



 反逆者は拷問の末に公開処刑だから、表に出た時点で生きていたら助け出せないことは無いが……出来れば見つかる前に逃げ出したい。

 ……にしても公開処刑って……。一体いつの時代だよ。まあ、産業革命前ってことは分かるけどさ。



「それと、出発はいつ頃になりそうなの?」

「船が完成し次第だな」


 後は大陸見つけて隠し終わったら。船に関しては超特急で工事しても一人でやってるからプラスで一年以上かかるかもしれない。

 もう組み立て段階に入ったとはいえね。プラモでしか遊んだ事がない上に、本物も見た事ないネット記事頼りのド素人なわけだから。



「そっか。僕らには何も出来ないけど、待ってるから」

「俺がやって欲しいこと全部やってくれてたんだから、何も出来ないってこと無いだろ」


 それに、オリヴァーは唯一俺の正体を看破した人間だから全面的に信頼をおいてる。



 オリヴァーは少し肩を竦めるだけで、何も言わなかった。そんなに自分の価値を認めたく無いのか。まあ良い。俺は価値を見出しているから。



「それじゃあ、言いたい事は済んだから。俺はまた作業に戻るよ。信じてくれてありがとう。改めて礼を言うよ」


「あの時、信じられなかったからね。今はもう疑ってない」

「私も信じてるわよ」

 そこで一度別れ、俺は二人の期待に応えるべく再び作業に戻った。



 今は操舵室を作っている。分からなすぎて、エンジン系は諦めた。スクリューみたいなのを大量に作るか巨大に作って、それを水で押すことにする。舵は方向転換のためのものだからちゃんと付けるけど、それ以外はもう良い。


 外から見たらこの外見はダサいだろうけど、誰かに見せるわけでも無いし別に良いよな。

 内装さえちゃんとしていればさ。もうレイアウトは出来ている。基本二人部屋で、家族用の五人部屋も作った。大体縦五、横五の高さ三くらいだけど、流石に一世帯分はちゃんとスペース取るつもりではいる。



 俺は狭いと落ち着くけど、ストレス溜まったりする人も少なく無いから。あとは共用スペースも作った。

 ボアソファーもめっちゃ憧れだったから十脚以上置くつもりだし。俺が出せないのは時計とかだけど、それは父さんの置かせて貰えば良い。

 ありがたい。俺も時計までは分からないからな。時計くらい日常に当たり前に有ると思った自分がここにいたら「馬鹿なことを言うな」と、ぶっ飛ばしてやりたい。ラノベの読み過ぎか。懐中時計。



 父さんの作る時計はまだ見た事がない。ぼちぼち貴族には売れるらしいけど、まだ作業風景しか知らない。船が出来たら、置かせてもらえないか聞いてみよう。

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