表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/41

四十一話 見つけた


 敵地に偵察を送り出してから約一週間。サンは朝の十時頃、疲労を滲ませて帰ってきた。連絡用にルーク王とサンはヴェルザードが繋いでいる。



 サンはブランチを食べて直ぐに気絶する様に寝てしまったそうなので、ほぼ休まずに仕事をしてくれたのだろう。そんなサンから貰った報告書は、俺が予想しつつも回避して欲しかった内容が多く記載されていた。


 首謀者は貴族の知り合いか、本人だとは思っていたが、階級はまさかの侯爵家。サンの生家であるエトワール伯爵家よりは一つ上で、元お客であるスウィート公爵家より一つ下の階級。これだけでも俺の貴族嫌いが加速しそうな内容だ。



 そして俺が今回の調査で一番避けたかったのが首謀者の所属している国が、オブシディアンの竜ヶ丘を除いた初めての交流相手でもあり、友好国でもあるクローシアだという事。


 だが、フラグが立った以上は回収せねばなるまいと、運の神は思ったのだろう。

 しっかりクローシアだし、ルーク王やアルストロとまではいかなくともそれなりに強い発言力を持っている由緒正しき家の当主。



 報告書を見る限り、侯爵家が興る前、クローシアという国が出来る前から魔族の兵器化が行われている様だ。地図に載っていなかったのは、恐らく露見したらマズいとわかっていたから。


 ヒリュウと同程度の実力を持つ魔族を従えるなら、戦績とかで侯爵家になったと考える事も出来なくは無い。他にも魔族を狙う家は有っただろう。



 サンは運良く捕獲の様子を確認する事も出来たそう。その時は何も手は出さなかったらしいが、どこに連れて行ったか、戦いといっても何に強化させるのかは把握しているとの事。


 見つけたのが俺ならその場で首を突っ込んでいたが、今回はサンが仕事で見つけた現場。サンのした事を咎める事はしない。寧ろ、隠し場所が分かって良い。



「オリヴァー、ちょっと良いか?」

「うん、良いよ」


 自分の昼食を摂り終えた俺は、今後について話していく為にオリヴァーの執務室に向かった。今日は学校が休みなようで、マリーも一緒だ。



「わたし出てった方が良い?」

「いや、広報にも伝えさせるけど、学校でも伝えて欲しい事が有るから聞いてて欲しい」

「分かったわ。何?」


 俺は大陸地図とサンからの報告書を広げて説明を始めた。普段使っているのは国内地図で、サージスと竜ヶ丘、ラ・モールの森の重要地点や施設名が載っている。が、大陸地図は所謂世界地図。

 ここ以外の大陸――クローシアやエクレシア、エクレシアの敵国グランベリアも載っている。



「魔族の誘拐を首謀している人間の一人をサンが突き止めた。誘拐の瞬間まで確認済みだ」

「助けには入らなかったの?」


「俺達の存在を悟られたら終わりだからな。サンも泣く泣くその瞬間での救出を諦めたんだろうし」

「そっか……。でも、後から助けてあげるつもりではいるの? わたし、ハナエちゃんとずっと一緒に居るから魔族の誘拐って許せない。どんな理由が有ったとしても絶対にね」



 どうせ子悪党の考える事なんだからしょうもない理由だろう、という悪態は喉の奥で留め、俺は再び話をした。


「ルーク王と話してみるけど、被害を受けた子が希望すれば、森か魔王の所に送り届けるつもりだ。犯人の処遇についても、こっちの意見が少しでも多く反映される様に交渉してみる。あっちとしてもヒリュウ達の逆鱗に触れるよりも人間に賠償を求められるだけの方が安全だしな」



 国自体が滅ぶより、金を請求される方が傷は浅くて済む。金だけで解決させる気はまあ無いけど。

 由緒が正しかろうが正しくなかろうが関係無い。家は取り潰してもらうくらいじゃないと。こっちとしてもメンツが有る。吹けば簡単に飛ぶ様なものではあるけど、それでも無くはないのだ。



「ルーク王って、確かこの大陸全体をフェリーチェの物だって言ってくれたんだっけ?」

「ああ。ヴィーネが何かしらした後にそう言ってくれた。二カ国以上の同意が無いと無理だけど、今回の事件を期に、急ぎめで他国から承認をもぎ取って来るから。強力な協力者も居る事だし」



 あまり多用はしたくないが、最悪ヴィーネを差し向ける事も出来なくはない。ただ、それは全ての手段が消えて詰んだ時に使うか判断する奥の手。

 俺一人で片付けられないと思われるのは今後の信用に関わってくる。取るに足らない弱小国家として認識されるのが一番駄目。



「そう、助けてくれる人が居るなら良いわ。わたしの方でも魔族の子供達に注意喚起はしておくわ。先生達に共有しても良いのよね?」

「ああ。頼む」


「僕も魔族の幹部達と騎士に警戒する様に指示を出すね。特に小人族は他の種族に比べて戦闘能力が低いから気を付けなきゃ」

「だな。ミラもライムもポンも、技術以外は人間とそう変わらないからな。身長が低い分、人間以上に不利かもしれないし」



 見回り警護の騎士を増やすか……。

 今は竜飛車の開発で竜騎士が増えたが、懐かれない騎士というものは一定数居る。一般騎士の人達に役職を与えるのは手だと思う。

 夜行性の鳥人族が夜の警備に当たっているが、昼は人目もあるからと手薄になるから。後は街灯設置も急がせよう。

 光属性の魔鉱石から安定してライトの魔法具が作られる様になるのを待っていたら、いつまで経っても街灯設置は進まない。生産したら交換していくって事で今はランタンで妥協しよう。



 ランタンは電気ではなく炎で灯りを確保するタイプだから日本の街灯よりも間隔は狭めに取らないとな。大体十メートルに一台、魔法具になったら二十メートルに一台って感じが丁度良いかな。



「フェリーチェ様、オリヴァー様。今よろしいですか?」

 オリヴァーの執務室の扉が軽くノックされ、サンの声が聞こえた。あまり時間は経っていないが、起きてしまったのだろう。


「うん、どうぞ」

 オリヴァーの部屋だからオリヴァーが入室許可を出す。


「ヴェルザードが、ルーク王からの手紙を受け取りました。『緊急』、だそうです」


 『緊急』って、アルストロがルーク王からの返事を催促する為に使ってたアレだな。



「今読むよ」

「はい」


 手紙はクローシア王家の国花、カーネーションが浮き出たシーリングスタンプで封がされていた。因みに俺の国は麦が国花。繁栄の花言葉を持つから選んだので、俺が送る時は麦の模様が入ったシーリングスタンプを押す事になる。



「えっと……なになに……。あーー。サン、今から返事書いちゃうからヴェルザードに届けさせてくれ」

「はい」


 手紙の内容は会談の日程打ち合わせ。クローシアの交流国であり友好国の一つ、ヴァレンシア王国の国王に紹介出来るという旨が書いてあった。



 ヴァレンシア王国は簡単に言うと代々女王のみが治める魔法都市。中規模な魔鉱山が自国に有り、その加工技術も持ち合わせているから魔法具を使って急速に発展したと言われている。

 俺が住んでいたエクレシアでは到底無理な話だが、ヴァレンシアでは平民も最低限の魔法具を家に揃える事が出来るそうだ。



 うちが魔鉱石関係でアピール出来るのは富裕向けになる。


 手紙の返事には一週間後、用意を済ませてクローシアに行く旨を書き、その時に魔族誘拐について言及する可能性が高い事も記しておいた。




「ヴェルザード、これをルーク王に」

 サンに呼ばれて来たヴェルザードは黙って頷き、手紙を受け取った後、周囲の空気に同化して消えていった。



「ヒリュウ」

「はい」

「危険が有るのは分かってるんだけど、そのままの姿で着いて来てくれるか?」


「勿論です。どこまでもお供します」

「サンはあの侯爵家以外のどの家が誘拐に関わっているか調べて欲しい。一週間後から暫く留守にするから報告書はオリヴァーに渡しておいて大丈夫。休暇はいつ取っても良いから」



「承知いたしました。では明日休みを取る事は可能でしょうか?」

「ああ、構わないよ。ゆっくり休んでくれ」


 サンはヒリュウが来るまでは一人だったし、来てからもどこか不安そうにしていたが、最近はちゃんと休んでくれる様になった。

 俺的には一日程度の休みで本当に疲れが取れるのか疑問ではあるが、せっかくその気になってくれているサンを刺激する事は避けたいので何も聞かず、許可だけ出した。俺が居ない時でも自由に休みが取れる様に、休暇申請制度をなる早で作りたいな。



「ありがとうございます。では明後日以降、また調査に入ります」

 サンから貰った報告書、早めに写しを取っておかないと。原本をオリヴァーに預けて、クローシアへはコピーを持っていこう。



「ルナ、フェリーチェが受け取った報告書の写しを取っておいてくれる?」

「はい。今日一日、少しお時間を頂いても?」


「良いよ。って事だから、フェリーチェはあんま無理しないでよ」

「あ、ああ。ありがとう、ルナ」


「救っていただいたご恩はこの程度では到底返せません。何かありましたらご遠慮なくお申し付けください」

 オリヴァーの補佐であるルナが写しを作ってくれるとの事なので、俺は別の仕事に意識を戻した。

 マリーも学校の方に行ったからそのうち先生伝いに子供達にも不審者注意のお知らせが出されるだろう。広報の方にもそう伝え、その日の号外で魔族誘拐についての注意喚起を配布してもらう事となった。



 次は竜ヶ丘だな。進捗が有り次第、オブシディアンに情報共有する約束をしているから。

 ヒリュウに乗せてもらって、また一瞬で竜ヶ丘に着く。






「貴族……。許さない……」

「救助の方はどうなってる?」


「捜索隊を編成して朝夕問わず、探してる。何回か魔族の子供が連れ去られそうになっている所は確認出来たって。犯人は死ねない様にして捕えてるけど、欲しい?」



 激怒している割に冷静な判断が出来るオブシディアンは、犯人の身元が分かるように関係者を誰一人殺さなかったらしい。怒りで我を忘れて大暴れした前科を持つ俺とは大違い。



「顔だけ拝んでも良いか?」

「良いよ。でもその程度で満足するの?」


「元々は竜ヶ丘の手柄だし、こっちも犯人の目星と身元は確認出来てるんだよ。今は他に協力者が居ないかってのを探してる所」

「そう。じゃあ着いて着て。少し見苦しい物を見せることになるけど」


 見苦しい物?




「……これは…………?」

「どこに何を隠しているか分からないし、とりあえず裸で良いかなって。腰布だけは当ててあげてるから問題無いでしょ?」



 捕えてあると言うから、てっきり牢獄の様な所に収容しているんだと思っていたが、街の中心部で磔にされていた。殺さなければ好きにしていいよ、の看板まで設置されて。



 普段は温厚で優しい魔族の冷徹な一面を知った。間違っても怒らせるのだけはやめておこう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ