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三十四話 魔鉱山の発見


 魔鉱山を探し始めて三ヶ月程が経過した。五月に入り、サージスは少しずつ気温が下がって来ている。あと二ヶ月もすればオブシディアンの所も俺の所も平均最低気温が氷点下に到達し、初雪が降るかもしれない。


 どのくらいの降雪量か読めない以上、本格的に冷えて来たら魔鉱山は一旦休みかなぁ……と思っていた矢先。サンから報告を受けた。



「魔鉱石に酷似した石が見つかったそうです」

 と。貴族だったサンは魔鉱石を使用した魔法具が身近な物だったのと、多少は学が有るから魔鉱石自体も知っていた。が、少し自信が無さそうだった。

 “酷似した物”と言った。本物とは言っていない。普通の物とは違うのか、魔鉱石じゃ無くて一般的な鉱石なのか。



「分かった。案内してくれ」

「はい」

 鉱山は少し街外れに位置している様で、人気は無かった。


「あ、来たね。フェリーチェ」

「ああ。何が出たんだ?」

「これなんだけど……」

「普通の魔鉱石と比べても、かなり光を発していて」



 魔法具に使用されていた実際の魔鉱石と、今回見つかった魔鉱石らしき物。サンの言う通り、見つかった魔鉱石は従来品と比べても数倍明るく発光している。ゲーミング鉱石だ。


『なあヴィーネ。この石って魔鉱石か?』

『うん? どれどれ……? ええ。魔鉱石よ』


『普通のより発光してるんだけど、これだけ何か違うのか?』

『うーーん……。もしかしたら、魔物が住んでいる大陸の魔鉱石だから、普通の物と違うのかもしれないわね』



 ヴィーネの推測が正しければ、明るければ明るい程魔鉱石が多くの魔素を含んでいる事になる。魔鉱石は日本で言うと、電池の様な役割を担う。


 そして、魔素の含有量が電池のもち、そして必要数に関わってくる。大きい物を動かしたければ、それ相応の魔素量が必要。



『魔族なら分かったりする物なのか? これ』

『分かるはずよ。その石よりも魔素量が多い魔族ならね』

『じゃあ、オブシディアンの所に持って行ってみるわ』



 ということで、竜ヶ丘へ。ヒリュウのお陰で、休まず徒歩で行って数日掛かる道のりも数分。地図タップ転移は使い勝手が良くないからありがたい。


 オリヴァー達には俺が竜ヶ丘に行っている間で立ち入り禁止の札を用意してもらっている。人気が無いとは言え、絶対に誰も来ない、という確信も無いので。



「何か分かるか?」

「うん。これ、魔鉱石だよ。魔素量はボクよりも下みたいだけど、ヒリュウやルナールよりは多いはず」


 俺が知っている魔族の中で一番魔素量が多い魔族、オブシディアンによって、謎の石の正体はアッサリと見破られた。それにしても、ヒリュウより上って相当高個体なんだな、この魔鉱石。



「こういうのがゴロゴロ埋まってるの?」

「らしい。普通の奴がこれなんだけど、これより光が弱い魔鉱石は今の所見つかってない」


「なら、ラ・モールの森とボクらの存在が大きく影響してるんじゃないかな。魔鉱石は鉱石と違って、魔素を含む者が一体でも居れば枯れない。ボク達と魔物がこの大陸から居なくならない限りは、こういった高個体を安定して産出出来る事になるよ」



 いつ覚えたのか、親指と人差し指でコインマークを作り、ニシシと笑うオブシディアン。


「ありがとう、オブシディアン。取り敢えず、試験採掘してみるわ」

「それなら、何人か魔族の子を付けると良いよ。人間じゃ分からない場所にある魔鉱石も、魔族なら感知出来るから」


「分かった。募集掛けてみる」

「……魔鉱石って、魔法具の材料になるんだよね?」

「ああ。心臓部だな。心配しなくても、分け前は用意する」



 手伝ってくれる訳だからな。属国でもないのに何でって感じで竜ヶ丘が他国からヘイトを向けられるのは本意じゃ無いから、表向きは貿易取引って事になるけど。



「じゃあ魔法具の改良とか、張り切って手伝わなきゃだね」

「それは頼む。技術面においては、人間じゃ小人族に勝てないからな」


 一次産業でも、二次産業でも、寿命でも惨敗。勝てるのは単純な戦闘力くらいだろうか。



「ボクの自慢の子達だからね」


 王、というより子供を愛する親の様になったオブシディアン。自分の方が圧倒的に年少者なのに。まあ、小人族の精神年齢が平均して中学生〜高校生くらいと幼いからなのだろう。稀に精神年齢大学生以上のポンみたいな小人族も居るが。



「せっかく来たんだし、ちょっとだけでも見ていく? 荷運び用の竜飛車がほぼ完成したんだ」

「じゃあ、少し見せてもらおうか」


 大きくても五メートル程度しか無い竜族なので、車体の大きさはあまり期待出来ないだろうと踏んでいたが、予想に反して荷台は大きかった。

 要因の一つが樹木型魔物の軽さは言うまでもなく、荷台自体に飛行能力を持たせたのも大きい。勿論、飛行機の様な精密機器では無く、熱気球の様な風船状の物が使われている。

 自力で進む事は出来ないが、竜族の負担は減るそうだ。背中の上でもバスケット状でも無く、馬車の様な構図で空に浮かぶ事になるらしいのでそりゃあ大変だな。



「これはもう少し調整を加えて、試験飛行を重ねれば、直ぐにでも実用化が出来るよ」

「俺が心配している事に関しては大丈夫そうか?」

「うん。皆も協力してくれて、バラしても仕組みが理解出来ない様に改造したから」

 改造? それで秘匿が出来るのか?


「ボクは魔族だからね。パーツの全部に魔素を含ませれば樹木型魔物が本来持つ微弱な魔素と、ボクら魔族の魔素がぶつかり合って、蜃気楼に似た現象が起こるんだ」

「つまり、本来の姿が捉えにくくなるってことか?」


「そういうことだね。実物を知っているならまだしも、全くのゼロから全てを理解するのは至難。船体自体を再現出来ても、肝心の竜族は従わないだろうしね。自分より強い訳じゃ無いから」



 凄いな、魔族。守護者如きには到底勝てない相手だ。味方に引き入れておいて良かった良かった。結束が固く、仲間意識が強い気質。そして人間より遥かに優れた身体能力と長い寿命。敵対し、その身を害そうとした人間に訪れるのは破滅一択だ。



「どうかな」

「ああ、最高だよ。良くやってくれた」


 ナデナデを期待して僅かに屈むオブシディアンの頭は、本人の気が済むまで撫でてやった。


「そっか。やっぱり魔鉱石だったんだね」

「ああ。オブシディアンに見せたら一発で分かった。加工には魔族の協力も約束してくれたよ」

「心強いね」

「俺に魔王様と同じくらいの魔素量が有れば……」



 今回あまり活躍出来なかった(本人談)ヒリュウは期待を膨らませる俺達とは反対に、少し落ち込んでる。

 その場で断定出来なかったのが悔しいのだろう。オブシディアンにも「ヒリュウやルナールよりも魔素量が多い」と言われていたし。

 自分の出自と実力に誇りを持つヒリュウからしたら、ただの石に負けるなど、屈辱以外の何物でも無い筈だ。俺としては、歩いて数日の距離有る竜ヶ丘まで運んでくれたし、十分役に立ってると思うんだけど。



「ヒリュウ。今回は俺にも分からなかった事だし、そんなに落ち込まなくて良いぞ。……というか、ヒリュウが分かったら俺ちょっと情け無くなっちゃうかも」


 ま、全然そんな事無いけど。王が出来ない事を臣下が出来ている事に対して恥じる必要は無いと思ってるから。そもそもの種族も違うし。


 でも、ヒリュウは俺よりも自分を下の存在と見ているから、こう言うのが一番効果的なのだ。ちゃんと納得して、次こそはと気持ちを切り替えてくれた。

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