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二話 魔力の底上げ


 そういえば……。なんで争いが起きたんだ? 地球だと宗教観の違いとか、水とか石油とかの資源競争の末にってところだけど……。俺はこの世界のことはわからない。



 でも、転生直前に聞いた言葉から推測するに、ヴィーネは多分この世界の創造神。そうなると、宗教観の違いというのは考えにくい。同じ宗教で教えが違うタイプかもしれないけど、今は違うと思っておこう。

 だとしたら、資源を巡ってか?


『この国、エクレシアは鉱山資源に乏しいのよね。でもその隣国であるグランベリアには鉱山が多数点在している。そんな時に、国境付近に鉱山が見つかったものだから、どっちに権利があるかで揉めたみたい。地球のゴタゴタと違って、民間人を直接攻撃することは禁止されているけれど、さっきみたいな搾取は日常茶飯事ね。寧ろ口頭で脅すだけで済んだのが奇跡みたいなものよ』


『なんで止めないんだ? 自分で作った世界なのに』

『創造神の私が介入したら絶対めんどくさいことになっちゃうからよ。ちょこーっと手助けするのは良いんだけど、未来が変わっちゃうくらいの手出しは神界でも御法度ってわけ。神に祈っても直接助けてもらえないってのはそういうことよ』


 もしかして初詣のこと言ってるのか? 確かに助けられたことは一度もなかったし、望みも叶ったりはしなかったけど。そういうことか。神様も神様で苦労してるんだなぁ。


『じゃあ、逃げるまでは搾取されても問題ないくらいに、こっちで快適な生活を作れば良いってことか』

『そうなるわね。何かあったら私が教えてあげるから』


『手出ししないんじゃなかったのか?』

『助言するな、とは言われてないのよ。白寄りのグレーゾーンではあるわね』



 それはもう白で良いのでは……? まあ、そんなことはどうだって良い。今は生活改善のために無限牢獄と水、火属性の練習でもしよう。


『あ、もう一つ。俺の魔力? ってどれくらいあるんだ?』


『今の貴方じゃ通常魔法も長時間の維持は無理ね。人間はまだ知らない事なんだけど、魔力の量にも階級があって、通常は五級〜一級までの五つと、準一級のどれかに分類される。でも、守護者の場合は更に上の特級があるのよ。守護者だけは魔力が増えるから、今のうちから毎日使って魔力空にすると良いわよ。そうしたら少しずつ増えるの。今は大体四級レベルね』



 四級か。ここがマンガの世界なら、今の俺はかなりの雑魚キャラだな。五分の四は、通知表だったら喜んだんだろうけど。


 まず、自分の中にある魔力が何なのかを知る必要があるな。今まで魔法とは無縁で生きてきたわけだから。よし、前世で読み漁ったマンガの知識を総動員して……。



 瞑想瞑想瞑想…………

 魔力は、血液みたいなもの…………

 体を循環しているから流れを意識する…………


「びゃっ!」

「ど、どうしたフェリーチェ!」

「どこか痛いの!?」


 魔力らしきものを掴んだ循環、ビリビリとした電気の様な何かが俺の体を駆けた。その結果、とても自分が出したとは思えぬほどの声を上げてしまったというわけだ。

 だが、所詮は静電気ほどのもの。吃驚しただけである。赤子ではないので、泣くことはない。本気で俺を心配する両親が可哀想に思えてくる。



 魔力を掴んだので、まずは水魔法を使ってみることにした。四級というから、マンガみたいに滝とか洪水が発生することは多分無い。何を基準にしているかはわからないけど。


 ここには入れ物が無いから、ぷるんぷるんの膜に覆われた水をイメージしてみる。昔そんな感じのお菓子を食べたことがあったから、割と鮮明に想像できる。


 戸惑う両親そっちのけで意識を集中させる。手の平に収まるくらいの大きさが良い。

 暫くすると手首から下がじんわりと熱を帯び、小さな水の玉が出来上がった。これがイメージ通りにいくってやつか?



「フェ、フェリーチェ……?」

「ヴァン……。い、今のって魔法……よね?」


「ああ。僕ともセレンとも属性は違うようだが、今のは確実に魔法だった。しかも、無詠唱とは……」



 無詠唱? まだまともに喋れないんだから詠唱も何も無いけど、発動の前にあぶらかたぶらーみたいなこと言えば良いのか? 詠唱している間に捻り潰されそうだけど、そこは特撮的な感じで敵も待ってくれるのかな。



「フェリーチェの存在を隠した方が良いかしら」

「いや、そこまでする必要はないと思う。ただ、家以外で魔法を軽々しく使うのは控えてもらおう。外に出せる年齢になったら釘を刺しておこうか」


 俺は怪物か何か? 面倒なことにしたくないから外での使用は控えるけども。でも逆を言えば、家でなら好きなだけやって良いってことだよな。


 そんなことを考えていると急に視界がぼやけ始め、体がぐらりと傾いた。

 魔力切れか? と思う暇もなく、俺の意識は暗闇に落ちていった





「んぁ……」


 次に目が覚めたのは真昼。俺が魔法を行使したのが夕方くらい。確実に日は跨いでいる。でも多分一日くらいだろう。多分ね。確証はない。



「よ、良かった〜! フェリーチェ、心配したのよぉ!」


 母さんが寝起きの俺をブンブンと振り、綺麗な顔を涙でぐしゃぐしゃにしている。本物の赤ちゃんにそんなことやっちゃ駄目だからな。俺だから良いのであって。



「こ、こらセレン! 赤ちゃん相手にそんなことしたら駄目でしょう!」


 仕事をしていた筈の父さんが割って入って俺を救出、軽く母さんを叱った。仕事を中断してまで止めてくれる父親で良かった。多分、母さんは止めなければずっとやっていた。 


 揺すられたせいでまだ目が回って頭がぐらぐらするけど、なんとか視点が定まってきた。これが三歳児くらいだったら、会話が成立するんだけど。生憎、俺はまだ言語未習得。喋りたくとも喋れない。早く会話がしたいものだ。



「ごめんなさい……つい、取り乱してしまって」

「その気持ちもわかるけれど、次は気を付けてよ。何かあってからでは遅いからね」

「わかったわ。もう少し冷静になるべきだったわね」

「そう、わかったなら良いよ」


 何だこの夫婦。仲良すぎないか? 喧嘩とかするのか? 絶対しなさそう。ちゃんと自分の非を認められるし、後に引かないというか、引き摺らない。


 俺の両親もこうであって欲しかったものだ。フライパンの蓋とかぶん投げてないで。金切り声で怒鳴ってないで。




 二人のためにも、俺は早く魔力の底上げをしなければ。それまでは魔力切れでぶっ倒れるのにも慣れて欲しい。


 さて、次は何を作ろう。赤ちゃんの片手くらい小さい水の玉は作れた。この一年でバスケットボール七号球、中学生以上が使うボールサイズの玉は作れるようになりたい。流石に一歳でバランスボールとかの大きさは期待できないからな。


 魔力量の問題ではなく、体力的な問題で。歩けるようになったら体力トレーニングはするが、まだ一人で座るくらいしかできない。こうなることがわかっていたら、前世で調べていたんだけど……。不覚だ。こっちで試行錯誤を余儀なくされる。


 こっちと前世では体が違うから、もし調べていたとしても無駄になる可能性はあったけれど、予備知識はあった方が良かった。



 水の魔法ってあとどんなのがあるんだろうか。

 侵食、あとは刃、高圧洗浄くらいしか思い浮かばない。普段使いしないものばかりだが。こんなところでやって良いのがないな。もう一度、水の玉でも作って魔力を空にしよう。


 昨日と同じように魔力を練ると、割と早く玉になってくれた。しかも、昨日よりも楽。玉の大きさはあまり変わっていないが、効率自体は少し上がったように思う。



 よし、この調子でバスケットボールを目指そう。漫画みたいにバコンと一気に成長……なんてことはないだろうから。


 そうして、二個目の玉で力尽き、気絶。

 翌日以降もコツコツ魔力を底上げする練習をして、両親が俺の魔力切れに慣れてきた頃、俺は遂に偉業を成し遂げたのだった。


 バスケットボールサイズの玉を作る、という。一歳で、魔力とは何かというのを掴んでから約三ヶ月という短い期間で。


 お湯を出すのはまだゴルフボールくらいしかできないが、それもいずれ普段使いできるレベルまで上げられるだろう。次にやるべきは再生・治癒属性の底上げ。

 再生の魔法は物の時間を巻き戻して修理することが可能な魔法。食べかけの野菜も、一欠片でも残っていたら元通りになる、ということ。正に、万年金欠の我が家に必要な能力だ。



 欲しがりません、勝つまでは。なんて文言が対戦中、日本にあったらしいが、俺は欲しがる。

 勝っても負けても関係ない。欲望には忠実に、というのが俺のモットーだ。そのために被る面倒ごとなどは目を瞑れるほど。

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