第48回 劉璋、劉備に涪城を与えたことを後悔する
劉備は涪城に拠点を移した。
そこで取り組んだのは、軍備の拡大などではなく、民に善政を敷くことであった。
劉璋から借り受けているに過ぎない城で、民の心を掌握する必要などないはずである。しかし、劉備は今後、この涪城を拠点として、益州での「活動」を活発化させるのに、自領の本拠地のつもりで民政にも力を入れたのである。
最初は他国の兵が入ってくるということで、住民たちは不安に思っていたが、心配されるような兵による略奪や乱暴は全く行われなかった。劉備と龐統の厳しい統制が、末端の兵士にまでいきわたっていたのである。
劉備の人気は日増しに高まり、劉璋の時より暮らしやすい、と評判になった。この話は、劉璋の耳に届く。劉璋が言う。
「劉将軍は、太守にでもなったつもりか。こちらが、どれだけ我慢して譲っているのか、劉将軍はわからんのか。」
黄権が言う。
「劉将軍は、太守のつもりではありません。国主になったつもりでいるのです。何故、早くこの国から追い出さないのですか。」
「追い出したら、誰が張魯の相手をするのだ。」
「それは、この国の問題。外の力を借りるものでもありません。既に、処断した張松、逃げ出した法正の画策で、劉将軍は野心を持って益州に入ったのは明白なのです。劉将軍の狙いは、漢中にあらず、この成都なのです。」
「黄権、お主たちは言いたい事を言えばいいだけではないか。もし、劉将軍を怒らせれば、その矛先はお主では無く、私に向かってくるのだぞ。」
「・・・。」
黄権はこれ以上、何かを言う気が失せてしまった。
そして、張松や法正の気持ちがわかってしまうほど、劉璋に呆れてしまった。もう今後、何も言うまい、と決めたのである。
劉璋が何も手を打たない間に、劉備は着々と周辺の民にまで好かれる存在になってきた。軍師の龐統が言う。
「劉将軍、機は熟したと言ってよいでしょう・・・。」
「そうか、わかった。」
いよいよ、劉備が本格的に動く時がやってきた。
西暦二一二年(建安一七年)、一二月であった。
************** お知らせ *****************
明日、第49回と最終回の第50回の2エピソードをアップしますので、お知らせ致します。




