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蜀主二代ー三国志・劉焉と劉璋ー  作者: 涼風隼人


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第38回 劉璋、自分の無能さを知る

 現在、中原では官渡の戦いで「曹操」が「袁紹」を倒し、曹操軍による袁紹軍の掃討戦が行われているという。

 もし、その戦いが曹操の勝利に終われば、曹操の目は「南方」に向かうのか、「西方」に向かうのか。

「南方」に向かうのであれば、荊州、揚州。

「西方」に向かうのであれば、関中、涼州。あとは、漢中、益州ということになる。

 

 劉焉が益州入りを果たしてから、既に一三年の時が経過している。劉璋の統治も既に七年に及んでいるわけだが、何らまとまった治績を挙げることは出来ていない。ただ、ただ、益州を混乱させ、疲弊させているばかりである。

 このままでは、曹操はおろか、漢中の張魯が本気で攻め込んできた場合、対処できるのか、という問題もある。


 劉璋の最大の悩みは、大きく二つある。

「自分の無能さ」と「人材不足」である。

 まずは、自分自身の能力のなさ、決断力のなさ、実行力のなさ。師である宋路は、自分のことを「大器晩成」と言ってくれていたようだが、そんな自信は既にない。

 父親の劉焉も、現状維持を自分に命じてその生涯を終えた。やはり、自分が無能であるということをわかっていたのであろう。

 忠臣であったはずの趙韙も、反乱の原因は自分の無能さであることの指摘をして死んでいった。


 宋路の「大器晩成」という言葉は、無能である自分を諦めさせないための言葉であり、劉焉の現状維持、という言葉は自分に対する戒めであり、趙韙の無能であるとの指摘は、現在の劉璋に自分の無能さを自覚せよ、という最後通牒であったのであろう。

 

 劉璋は心の中で笑った。言われなくともわかっている。

「自分が無能である」ということを。

 しかし、無能であるが故に、もし、優秀な人材が自分のもとに集まってくれるのであれば、その者たちに全てを任せたい、と考えている。

 

 しかし、人材と言える人材がいない。

 現状、人材と言える筆頭は龐羲であるが、龐羲に全てを任せようとは思えなかった。

 引退して既にこの世を去った董扶や、かつての趙韙が持ち合わせていた「誠実さ」というのを龐羲からは見出すことが出来ないからである。


 その様に悩んでいる最中、ようやく若い人材が現れる。

 まずは、「黄権」である。

 黄権は文武にわたる才覚があり、まさに益州の将来を背負わせるに相応しい雰囲気を今からすでに醸し出していた。

 

 そしてもう一人は「王累」である。

 王累はまさに忠義の塊のような剛毅で真っすぐな性格であり、劉璋が求めている「誠実さ」を強く感じさせる。

 実際、将来的にこの二人は益州の命運を背負う人材となるが、その将来は全く違うものとなるのである。

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