第31回 劉焉、王国を造り上げる
賈龍をはじめとする、有力な豪族たちの粛清は終わり、残りの豪族たちは劉焉への忠誠を誓った。
こうして、ここに、「劉焉の王国」が誕生するのである。
劉焉の独立性はここに極まったといえる。
さすがに「鈍い」中央も、劉焉がこのまま独立するのではないかという危惧が高まり、師である宋路の喪が明けた後、中央で官途についた四男の劉璋を「譴責」の使者として益州に送り込んできた。劉璋が言う。
「父上。率直に申し上げます。中央では、父上がこのまま独立王国を建てるのでは、と危惧しております。」
「独立王国・・・。それも、良いかもな。私は、自分の理想の国を造りたい、という気持ちを持っているのは事実だ。」
「では、本当に独立を考えているのですか。」
「ははは。それは、違う。あくまで、漢という国があり、私はそこで益州牧に任じられて、ここにいる。益州牧に任じられた以上、政治も軍事も責任をもって自らが統率するのが、我が職務であり、その遂行の仕方が徹底するあまり、中央ではあらぬ疑いを持ったのではないであろうか。」
「では、あくまで、益州牧としてのつとめを果たしている、ということでございますね。」
「もちろんだ。今の私の返答を書面にまとめ、随行してきた者に持たせよ。」
「・・・。何故でございますか。」
「お前には、ここに残ってもらう。」
「私は、お役目を果たすのに長安に戻る義務がございます。」
「しかし、その長安も、董卓が暴虐の限りを尽くし、天子様も肩身の狭い思いをしている、と聞いておる。天子様のおそばには、お前の兄である劉範、劉誕もおるであろう。」
「兄上たちは立派におつとめを果たしております。私も、それを見習いたいと思っております。」
「いい心がけだ。私の兄者であり、お前の師でもある宋路殿の喪も立派に果たしたと聞いている。そこで、そろそろ孝行の本質とも言うべき、親孝行をする時期に来ているのではないか。」
「・・・。父上は、私にここに残れ、というのでしょうか。」
「そうだ。三男の瑁はここにおるが、お前も知っておろう。あやつは体が弱く、私に万が一のことがあっても対応するのは難しい。季玉よ、お前になら任せられる。」
「兄上たちが何と言いますか・・・。」
「季玉よ、勘違いするな。お前をこの場で私の跡取りと決めたわけではないぞ。あくまで、可能性の問題だ。頼む、お前はここに残ってくれ。」
「・・・承知しました。」
こうして、劉璋は返書に劉焉は益州牧としての役目を果たしているにすぎない事と、自身は父である劉焉に孝行を尽くすためにこのまま益州に残る旨を記して、随行した者に持ち帰らせたのである。
そして、激動の西暦一九四年(興平元年)が訪れるのである。




