第26回 劉焉、州都を綿竹に移す
思いもよらない賈龍ら豪族たちの歓迎を受けて、懸念されていた馬相との戦いをすることもなく、無事、益州に入れた劉焉は非常に幸運と言ってよい。
しかし、迎い入れられた州都である雒県は荒廃しており、州都としての機能を回復するには、相当の時間を要するであることとは、想像に難くなかった。
劉焉は、賈龍を豪族の代表として側近く仕えてもらうことを要請、ひとまずは武官である「校尉」に任命をした。
劉焉は、賈龍に聞く。
「賈龍よ。この雒県の荒廃した状態では、州都の役目を果たすことは出来まい。この近くで、他にふさわしい場所はないものか。」
「綿竹がよろしいかと存じます。」
「綿竹か。ここからの距離はどれくらいだ。」
「徒歩でも、一日あれば到着できる程度の距離ですので、州都の機能を移すのも容易だと思います。」
「なるほど。それでは早速であるが、州都をここ雒県から綿竹に移す準備をしてくれ。あとは、賈龍の方で雒県にゆかりの深い豪族らを選抜して、復興に当たらせるように。ここが重要な場所であることに変わりはないからな。」
こうして、劉焉は益州入りをして早々に州都の移転を決定するとともに、雒県の復興を急ぐように指示をした。
この決定と実行の速さに、益州の豪族は感服した。
そして、劉焉は董扶に聞く。
「董扶よ。今は賈龍をはじめとする豪族たちは、非常に協力的であり、我々に対する目は好意的であると感じている。しかし、この先、どうであろうか。」
「はい。当面は問題ないと思います。しかし、豪族は自らの領土で徴税を行っており、そのあたりの話が出てくると、どう動くかは定かではありませぬ。」
「徴税権か。税が無ければ、我々も何も出来ぬからな。まずはそこが問題だ。あとは、やはり自前の軍を持つ必要が当然あると思うが、趙韙、その当たり、何か意見はあるか。」
「はい。中原ではこのところ争いが絶えぬ故、東方や近隣からの流民がこの益州に流れてきております。そういった者の中から屈強なものを選び、劉焉様直属の軍として整えるのがよろしいかと。」
「なるほど。流民であれば、取り込むのは容易なうえに、益州にしがらみがない分、子飼いの兵として養うことは出来そうだな。」
劉焉は少し間をおいてから言う。
「董扶よ。お前には、税の件を任せる。いきなり豪族から徴税権を取り上げるなど、手荒な真似はするな。しかし、いくばくかでも、中央から任命されている益州牧に税を納めるのは当然、という方向で調整せよ。」
「畏まりました。」
「続いて、趙韙よ。流民たちを兵として取り立てよ。そして、優秀なものは優遇することを約してもらって構わぬ。我々自前の軍を、早急に用意するように。」
「畏まりました。」
こうして、劉焉は益州に入るが早々、活発に活動を開始していく。董扶にも趙韙にもはっきりとは言っていないが、この益州にて自分が理想としていた国を造ることが出来るのかどうか試してみたい、という気持ちが劉焉の行動力を加速させていくのである。




