第13回 劉焉、再び官を辞す
劉焉は、どうにもならない宦官とのやり取りに疲れを感じ出していた。
特にこの日は肉体的にも精神的にも疲労がひどく、帰宅早々に床に就いた。
すぐに眠りについた劉焉だが、遠くから呼ばれている様な気がした。
体は動かすことは出来ないが、次第にその声がはっきりと聞こえてきた。
間違いない、師の祝公の声である。
「君郎よ・・・。」
呼びかけられ、返事をしようとしたが声も出ない。相変わらず、体を動かすこともできない。
「君郎よ・・・。」
反応しようにも、反応できない。
更に呼びかけられた。
「君郎よ・・・。静かに聞け。」
祝公の声は続く。
「一旦、官のことは宋路に任せよ。お前は、陽城山にて学問を学びなおせ。そして、請われれば弟子を取り、教えよ。」
口を動かすことは出来ないが、師の声に心で問いかけた。
「師よ。私に隠棲せよ、と申すのですか。」
「そうではない。お前の機が熟すのはまだまだ先だ。故に、一旦官から身を引くのだ。」
「・・・。わかりました。師の言葉に従います。」
劉焉は目覚めた。異常なほどの汗をかいていた。体のこわばりも残っている。しかし、師に言われたことは、はっきりと覚えている。夢であっても、師に対してその言葉に従う、と言った以上、劉焉はその通りにすべきと考えた。
―翌日―
劉焉は包み隠さず、夢の話を宋路にした。
宋路は驚いた顔をして、言う。
「君郎よ・・・。実は私も師の夢を見たのだ。」
「兄者、本当ですか?どのような内容の夢です。」
「君郎、意味合いとしてはお前の夢と同じだ。宋路、お前は官に残り、君郎復帰の時を待て、と。」
「・・・。こんなことがあるのですね。兄者、私は師に従うつもりです。」
「無論、私もだ。君郎、私は官にて自分のできることをやる。お前も更に勉学に励むがよいぞ。」
こうして、劉焉は官途に復して一年余りで、体調不良を理由として、再び官を辞すことになった。そして、家族を伴い陽城山へ居を移したのである。




