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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
ジョブは関係がない 無職と英雄たち

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第21話 久しぶりだな

 中段席の端の手すりに二人がいた。 

 見上げながら、声を掛ける。


 「フィン。マールダ!」

 「隊長! なぜこちらに」


 話したい気持ちが前に出ているフィンは、手すりから落っこちそうだった。


 「おお。フィン、元気だったか・・・まあ、成り行きだな」

 「・・・ふふ。隊長らしいですね」


 その隣に来たのが、かなりの美人になったマールダ。

 女性の変化は凄い。

 たったの三年で、容姿と所作まで変わるみたいだ。

 女性らしさが爆発している。


 「おう! マールダも元気そうだな」

 「ええ、元気ですよ。隊長! お話しできますか?」


 大会のリングと時計を見る。

 時間はまだありそうだ。

 二人と話しても良さそう。


 「ええっと、今が一回戦の始まりだからな。そうだな・・・じゃあ、選手控室の脇の休憩室に来いよ。あそこなら選手の知り合いの人が来てもいいみたいだからさ。ルルロアって言えば、たぶん係の人が通してくれるぞ!」

 「はい! わかりました。フィン。急いで行きましょう」

 「ああ。急ごう!」


 忽然と二人が消えた。

 パッと一瞬で消えたように思うくらいだ。

 以前よりも、かなりいい動きだ。

 もしかしたら、オレと同じ。

 準特級になってるかもしれん。



 ◇


 闘技場休憩室。

 ここは選手の家族や恋人。

 騎士団などであれば、その上司や部下が選手に会いに応援してもいい場所だ。

 オレ以外の選手も誰かと会っている。

 そこにマールダとフィンが来てくれた。


 「隊長!」

 「おお。フィン。立派になったな。動きに無駄がない。ロックハンターとして成長したな」

 「え。まあ。そうですかね」

 「ああ、立派な狩人だ!」


 フィンは照れて頭を掻いていた。


 「隊長。お元気で」

 「おお。マールダ。お前、美人になったな。びっくりしたわ。声で分からなかったら誰だか分らんな」

 「またまた。隊長は、お世辞がうまくなったんですね!!!」


 ね! とマールダが言いながら張り手してきた。

 肩に入ると赤くなるほど痛かったのである。

 体が横にズレるくらいに力が強え。


 「お。おお。力も強いな。さすが、ホーリーファイターだ!」

 「そうですか。私は軽くいったつもりでしたが・・・」


 マールダの鋭いツッコミに、フィンがたまらず言う。


 「いや、マールダ。お前は力が強くなったんだよ。俺たちの事も丁寧に扱ってくれよ」

 「なによ。フィン。あなたたちは私に冷たいからね。隊長よりもちょっと強めにツッコミを入れさせてもらってるの」

 「えええ・・・」


 前よりも二人が仲良くなっていた。

 オレは、それだけでうれしかった。


 「そうか。んで。なんでお前らここにいるんだ? ダンジョン攻略は?」

 「あ、はい。俺たちは今。ジョルバ大陸のダンジョンに挑戦してました。ですが・・・」

 「ん?」

 「資金面で苦労を」

 「は?」


 言いにくそうなフィンの代わりにマールダが前に出てきた。


 「隊長。実は私たち、お金のやりくりで失敗しましてね。隊長が出て行ってしまった最初の一年のことですが。あそこでジェンテミュールを維持するのに時間を使いました。それで分かったんです。隊長が全て計画的に行動を起こしていたんだって。隊長は無理なく全体を見つめて、団員を成長させながら、それに人員とお金を増やしていきながら、次の計画の管理までしてくれていたんですね」

 

 マールダが嬉しいのやら、悲しいのやら、複雑そうな顔で話していた。


 「それで私たちは気づいたんですよ。隊長がいかに素晴らしい人だったのかをです。何て惜しい人を失ったんだって。フールナたちは隊長の良さを理解してないけど、キザールやスカナ、ハイスマンは、私たちと一緒になっていつも隊長の事を思い出してます。私たちに必要だったのは、隊長だったんだって」


 嬉しい事を言ってくれるマールダであるが、オレが気になるのは金である。

 ジェンテミュールの会計をしていたので、気がかりになるのは仕方ないことだ。


 「そうか……金か。いや、オレが悪いな。金の管理を全部やってたのが悪かったな。他の奴に任せればよかったんだ。それに本職の商人も必要だったな。人材をしっかり見つけてくるべきだったな」

 「いえ。隊長は私たちの為に出来るだけの事をしてくれましたよ。後悔するのは隊長じゃなく私たちであります」


 マールダは気を遣ってくれていた。

 金の管理。

 たしかに、これはミー、イー、エル、レオには不可能だ。

 後任を決めてからやめるべきだったなとオレはここだけは後悔した。


 「それで、そこから立て直したのか?」

 「はい。俺たちはそこから上手くファミリーを回すために班編成をして動き回りました。より金の動きの良いジョルバに船で移り、ここを拠点にしたのです。あとここを拠点にした理由はお金だけじゃなくて、ここの四大ダンジョン『エルダケーブ』に挑戦しようとしてます」

 「なるほどな。それはいい手だ。んで、下見とか色々済ませて挑戦したんだな。三年もあったんだ。やったんだろ?」


 四大ダンジョン挑戦を三年も寝かすのは無い。

 挑戦しているはずだ。


 「はい・・・しかし、私たちは一回行ってみて失敗しました。下見の時は上手くいっても大勢を指揮しながら下に行くのは難しいのです。ここでも隊長の凄さを知りました。隊長は私たちの体力まで見て、ダンジョンを進んでいたのですね」

 「まあな。それをしないとさ。いくら一線級の冒険者がずらっと並んでいても、意味がないからな。ダンジョン攻略の基本だ」

 

 オレがそう言うと二人は顔を伏せた。

 上手くいかない具合はとんでもなかったようだ。


 「そこでですね。失敗の立て直しを図るために、今の勇者様たちは俺たちとは違う動きをしてます。各々でお金を稼ぎに行ってますね。それでレオン様は良いスポンサーを見つけたと」


 スポンサー??

 冒険者にスポンサー????

 怪しいわ。

 大丈夫か。レオたちはよ。


 「ミヒャル様はバイトと評して飛空艇のマジックタンクの人と一緒に働いてます」


 なるほど。金周りの良い飛空艇関係の仕事は、いいバイトになるな。


 「あとエルミナ様は、聖堂でお手伝いをしていると聞いたことがあります」


 そうだよな。聖女だもんな。

 それに女神のように優しいし、元々冒険者よりも向いてるしな。

 

 「・・・・イージス様は・・・無理ですね」

 「イーは無理か。当然だな」

 

 イージスは、どうせホームで寝ているのだろう。

 生活破綻者だからな。無理もない。


 「あ! 隊長、この大陸にいるなら、勇者様たちにも久しぶりに会ってあげてくださいよ」


 フィンがこう言ってくれて、少し助かる。

 自分からはいこうとは思わないからだ。


 「・・・そうだな。一段落したら、会おうかな」

 「何かお忙しいのですか? 隊長」


 マールダが聞いてきた。


 「ああ、ちょいとな。今立て込んでてな。もしかして・・・お前らは・・・」

 「隊長、どうしました?」

 「いや、何でもない。さすがに今のに、巻き込まれていると思わんからな。そうだな。今は忙しいから、もうちょいしたら会いに行くって、レオたちに伝えておいてくれよ」

 「「わかりました!」」


 二人は敬礼してまでオレに返事をした。

 そんな忠義心。 

 オレに向ける必要ある?って思っていることは内緒にしておこう。


 「そうだ。フィン」

 「はい!」

 「数年後の話だけどさ・・・オレの知り合いに冒険者になりたい子がいるんだ」

 「はい」

 「その子、弓を扱ってるからさ。お前が師になってくれないか。数年後。ジャコウの日曜学校にシエナって子が入学すると思うからさ。その子の師匠になってくれよ。頭がいいから手がかからないと思う」

 「そうですか。隊長が言うならやってみます・・・シエナですね。名前を憶えておきますよ」

 「ああ、オレンジが大好きな女の子だ。オレのこのリストバントと同じものをつけている! あと、何だったらその子をジェンテミュールに入れてもいいぞ。その子かなり強くなると思うわ」

 「有望な子を育てろってことですね・・・わかりました。俺の技術を叩き込んでやりますよ」

 「ああ。頼むわ・・・・」


 フィンにシエナの事を頼んでいると休憩室の扉が開き。

 

 「ルルロア選手いますか。次の次の戦いが最後の一回戦なので、二回戦の準備をお願いしたいです」

 「ああ。はいはい。いきます! 二人ともじゃあな」

 「「はい。頑張ってください。隊長!!」」


 二人の声援をもらって、元気が出てきた。




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