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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
ジョブは関係がない 無職と英雄たち

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第11話 ジョルバ大陸上陸

 ジョルバ大陸は、火の大陸として有名だ。

 年がら年中暑い季節を体感できる。

 ・・・いや違う。

 暑いではなく、熱いだ!

 ただし、じめじめとした熱さでもなく、むしむしとした熱さでもなく、ただひたすらにカラカラと熱いのだ。

 喉や鼻にある水分を蒸発させるくらいに、沸騰するかのようにして熱いので、水分補給はしっかりしていないと、すぐに脱水を起こしてしまう。

 とっても危険な大陸ですよ。皆さん、注意しましょう。


 「あちいな……相変わらず熱い」

 「まあな、王都に行けば多少は和らぐからな。急ぐぞ」


 久しぶりに来たくらいでは、この大陸の熱さに慣れない。

 でも、王はこの熱さに慣れているようだった。

 さすがは、この大陸の王と交流のある人だ。


 四大陸にある飛空艇離着陸場は、必ず主要都市の近辺にある。

 それが一番効率的であるからだ。

 テレスシア王国の王都ダルトンは、ここより少し北西に歩いた先だ。


 王都ダルトンの場所はジョルバ大陸の北西にあり、湾岸の大都市だ。

 北から吹いてくる冷たい風を利用して、この熱さを和らげるために、大陸の北西に居を構えている。

 ここの気温は、言葉で言えば、熱さが暑さくらいに変わるのである。

 

 でも結局、暑いに変わりはない!

 

 「あちい~~~。暑すぎるわ。やっぱ」


 ◇


 オレたちは王都に入った。

 王城までの道のりを歩いている途中。

 テレミア王国一行の一番後ろにいるオレに対して、ターバンを巻いた人が話しかけてきた。

 雰囲気からして、どうやら商人らしい。

 オレが列の最後尾にいたもんだから、こちらの男性はオレの事を一般人だと思ったみたいだ。

 まあ、オレも兵士の服を着ていないし、王らの一行じゃないと決めつけられても、別に腹は立たない。


 「どうよ。兄ちゃん」

 「ん?」

 「買ってくかい。チケットだよ」

 「チケット?」

 「ああ、武闘大会の一等席だよ」

 「おお!」

 「どうよ。2万で!」

 「いらない」

 「なんでよ。この一等席、中段の中央やや東寄りだよ」

 「へえ、中段で一等席なの」

 「ああ、これ以上って言ったら下段の特等席か。室内の貴賓席しかないんだよ」

 「なるほどね・・・・でもいいや。オレ、もっといい近場の席に行くからいらないよ」

 「え!? これ以上!?」

 「オレさ。出場するからね。その武闘大会にさ」

 「え!? 兄ちゃんが・・・」


 オジサンは驚いた顔のまま立ち止まった。


 「おう。応援してよ! それにオレ、あの一行に遅れちゃいかんからさ。じゃあね」


 唖然としているおじさんは、売ろうとしたチケットを握ったままその場に立っていた。



 ◇


 オレを含めたテレミア王国の王族一行はテレスシア王国の王都城アースバルドに入った。

 オレの最初の仕事は、この国の王への謁見であるのかと思いきや、そうではなかった。

 

 オレら一行は、一度来賓の部屋に通されて、何やらペンダントの様なものを手渡された。 

 これを持っていれば、王宮で間者とみなされるようなことはなくなるらしく、顔パスで城の中に入れるというアイテムらしい。

 ここで生活するには、非常に重要なアイテムだった。


 「王様。オレもここの王の所に行かなきゃならないの?」

 「いや、ルルはいい。今回はオレとテレスシア王国のバルマ王だけで会うからな。皆はそれぞれ別な場所に案内される。王都内の宿を丸々借りてくれているらしいからな。兵士たちはそっちだ。他の者たちもな。俺の方には、親衛隊とタイルとブランくらいは残ってもらおうかな」


 オレは通常の兵と一緒にしてくれたようだ。


 「そうか・・じゃあ、そっちの宿でいいんだな」

 「ああ。それにどうせだ。お前はここにいろと言われても、この堅苦しい城は嫌だろ」

 「はははは。よくご存じで」

 「もう一年近く一緒にいたんだ。お前の事は大体分かるわ。ああ、あとバルマ王に図書館の事を聞いておくからな」

 「ありがとうございます。王様」


 やや大げさに感謝すると。


 「気持ち悪い・・普通にしてくれ」


 王は嫌がった。

 せっかく丁寧に挨拶したのに!



 ◇


 王との話を終えて、そばにいたヨルガさんと打ち合わせする。


 「ヨルガさん。図書館に行けるみたいですよ。あっちでの調べ物は順調でした?」


 久しぶりに会えて、進捗状況を聞いてみた。


 「いえ。それが、テレミア王国ではやはり当時の出来事が記載されているものが少なく、推測も検証も捗ってはいません。資料とかを、こちらで何とか揃えたいですね。まあ、見つからなくても私、諦めませんよ!」


 調べ物が、芳しくなくてもやる気はあるみたいで良かった。


 「お! やる気満々すね」

 「ええ。任せてください」


 ヨルガさんはあれ以来ずっと本とにらめっこしているらしい。

 読んで、推測。

 推測から検証。

 検証から失敗。

 これをヨルガさんは、日曜以外は自分の部屋で繰り返しているらしい。

 ファイナの洗礼を破る方法を得るために、小さなファイナの洗礼を作って、解析研究をしようとしているのである。


 「ファイナの洗礼は、おそらく光魔法が基礎だと思います。レミアレス殿はそう言ってませんでしたか」 

 「おお。そうかも。レミさんっているのかな? 見当たらないんだけど」

 「いるのじゃ! なんでルルは余がポケットにいるのを感じないのじゃ!」


 レミさんが胸のポケットから顔を出してきた。

 

 「まあまあ。そんな怒んなよ。で、レミさん。あれって光魔法が基礎なの?」 

 「うむ。基礎ではある・・・答えは教えられんのじゃ。あの子らの願いがそこにあるからな」


 レミさんが、こことは違うどこか遠くを見つめた。


 「って黄昏られてもなぁ・・・・困るぜ、連れてけよって言ってる癖によ」

 「……教えるのは無理じゃな。聞かれるのはいいのじゃ。そんで余をいつか連れてってくれ! なのじゃ」

 「だからそのいつかが、ムズイだろうが。他の方法だって、知らんもん」

 「え? 他の方法?」


 ヨルガさんは、オレが話している部分しか聞こえない。

 でも、オレとレミさんの会話の中身を聞いてきた。

 それとなぜか彼はオレを不気味がらない。

 独り言にしか聞こえないだろうにね。

 この人は、マイペースな人である。


 「ヨルガさん。それがですね。ファイナの洗礼以外にあっちの大陸に行く方法があるみたいなんですよね」

 「ああ。そんな事ですか。ありますよ。他の方法」

 「うえ!? え????」

 「はい。あります。ただし、ファイナの洗礼が一番安全なんですよ」

 「な、なに!?」


 オレは最初からヨルガさんに聞いておけばよかったと後悔した。



 ◇


 ヨルガさんが紹介してくれた方法。

 一。

 それは天からカーテンを降ろしている形となっているファイナの洗礼のさらに上を目指すというやり方だ。

 乗り越えた先から、ジークラッドの大地に降りるという手があるのだそう。

 しかしこれは、飛空艇でもいけない高さを乗り越えるので、技術的に無理なのだそう。

 そして超えても、地面に一直線ではないかとの事。


 

 二。

 どこかにある深海洞窟が、向こうの大陸に繋がっているらしい。

 しかし、これはその深海洞窟の場所が分からない上に、深海で長い間動ける人間がいないので、結局は死であるとの事。


 

 三。

 古い文献に記載が残っている。

 人間をまるごと移動させることが出来るアイテムがあるらしい。

 そのアイテムには空間移動魔法が付与されているようで、『アーティファクト』という名称の激レアアイテムだ。

 昔の人は大陸が一個だったために、移動距離が長く、端から端まで移動するのには時間が掛かり過ぎた。

 なので、そのアイテムを使用して、目的地まで移動していたのだそう。

 ただしそれはその当時でも極少数のものしかなかったので、現在はどこにあるのかさえ知らない超希少種のアイテムである様だ。

 そして、もう一つの難点は、移動する場所が、そのアイテムの中で指定されているので、そのアイテムの指定した場所が、ジークラッド大陸かも分からない。下手したらこちらの大陸だったり、こちら側の海だったり、空だったりと、一か八かの使用になるのである。


 「そうかぁ。三つも方法があったのか」

 「ええ、ファイナ以外の方法は、生存確率がほぼゼロですからね。なので、この中で一番いいのがファイナの洗礼の突破であります」

 「なるほど・・・それじゃあ、やっぱりオレは、ファイナの洗礼の下調べをヨルガさんにお任せしますよ。あなたの研究結果を楽しみに待つとします!」

 「はい。お任せを。私も今充実して仕事してますからね。気合いが入ってます」

 「ええ。それならよかったです」


 と言ってオレはヨルガさんと別れて、この場を後にした。

 宿の場所だけを兵士さんたちに聞いて、オレは都市を歩くことにしたのである。



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