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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

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エピローグ

 「ルナさん!」


 オレとアマルは、デビルキメラ撃破後にすぐにルナさんに駆け寄った。


 「ルル、アマル・・・よくやりましたね」


 ルナさんは、右隣に来たアマルの頬に手を優しく添えた。


 「姉上。お怪我が……」

 「ええ。大丈夫。それにしても立派でしたよ。アマル」

 

 アマルを褒めるルナさんの表情はきつそうだった。

 ダメージが大きい。

 体を動かすのにも辛そうであった。

 

 「ルナさん、傷を見せてください。オレが診断します」

 「‥‥た、大したことはないですよ。うぐっ」


 彼女の服をめくり上げると、声や言葉では我慢をしていても、体では痛がる反応が出た。

 ダメージを負った部分の筋肉が僅かだが震えている。

 それに紫色に腫れあがっていて、左脇腹のダメージが大きい事を知る。


 あの時のオレでは、攻撃角度からいってもお腹を抉られたと、思っていたのだが、実際はギリギリのところで体を捻って致命傷を回避していたのだ。

 さすがは歴戦の侍であるルナさんだ。

 戦いにおいては素晴らしい人である。

 そう、戦いにおいてだけは信頼できる人だ。

 

 「これなら。医術・・・あ、イエロー反応だ。ちょい赤みが出ている・・・この程度であるならば」


 マジックボックスから、包帯とポーションを取り出す。


 「ルナさん。これをゆっくり飲んでください」

 「・・・ん。ポーションじゃないですか。貴重なものを」

 「貴重じゃないです。オレが作りましたから、まだまだあります。傷をこれで癒しましょう」

 「は? ポーションを? ルルが?」

 「ええ、錬金術のスキルも持っているのでね。材料さえあれば作れますよ」

 「はぁ。ルルはもう人の領域を超えてますね。相変わらずです。飲みます」


 そう言ったルナさんはポーションを飲んだ。

 若干体力が戻ったルナさんの目に生気が宿る。


 「だいぶ楽に」

 「次にこれを・・・・包帯を巻きますね」

 「・・・え?」

 「スキルの応急手当です。これの副次効果で、体力を少し回復させることができて、さらにこれ以上の出血を防ぐ効果があるので、今のルナさんの負傷具合ならば、かなり効果がありますし。打ち身にも若干効くので」

 「そ、そうですか。ではお願いします」


 お腹を出してもらったまま、オレはルナさんの手当てをした。


 「足手まといでしたね。拙者」

 「そんなわけありません。ルナさんがいなかったら、今のオレたちは、この15階まで来ていないですよ」

 「そうです。拙者はルル殿と姉上のおかげでここまで来ました」

 「そうですか・・・アマル、別人のようですね。立派な侍であります。嬉しいですよ。拙者はとても嬉しい。ちょっと頭をこちらに」


 ルナさんがアマルの頭を優しく撫でた。


 「良く出来ました。あなたはもう立派な里の侍ですね」

 「え・・・はい。そのようになるように精進します」

 「ええ、そうですね。拙者も精進します」


 そう優しく微笑んだのだった。



 ◇


 左肩を負傷しているオレは、ルナさんを安全におんぶするために、紐を利用して彼女をオレに巻き付けるようにして固定した。


 「アマルに頼みたい。下の階層では敵がわんさかいるかもしれん。お前が全て蹴散らしてくれないか」 

 「ん? 拙者が全て?」

 「ああ、すまん。オレ、あのスキルを六分も使っちまってな。実は体がボロボロなんだ。そんでオレは帰りの道中ルナさんをおんぶするから、戦闘全てをお前ひとりに任せることになるが大丈夫か?」

 「承知しました。拙者が斬り伏せます」

 

 こうして、オレたちは、アマルを先頭にしてガルズタワーを降り始めた。

 よく考えてみたら、オレはあのスキルを六分使っても立っている。

 もしかしたら、今までの指導の日々でかなり成長しているのかもしれないと思った。



 敵を倒していくアマルを見つめて思う。


 アマルの実力は剣聖と呼ぶにふさわしい人物となった。

 元々オレが鍛えた段階で一級冒険者クラスの実力者であったが。

 才能開花の影響で今や、特級クラスの実力者となっていた。

 なぜなら、ここにいるモンスターどもはAランク帯はなかなかいないが、Bランク帯はうじゃうじゃいる。

 なのにアマルは余裕で斬っていった。

 あのひしめき合う八階のモンスターどもも楽勝で斬り伏せたのだ。

 これはモンスターパレードと同視してもいい状態なのに、彼は余裕であったんだ。

 ならば、Bランク帯のモンスターパレードの護衛任務を一人でこなすという神技を達成している。

 ということはこれはSランク護衛任務。

 アマルは、特級冒険者と同等となったのである。


 ◇


 帰りの道中。オレは呟いた。


 「オレは、とんでもないバケモノを生んだか・・・・まずいかな?」

 「いいえ。大丈夫でしょう。あなたのおかげであの子は真っ直ぐに育ちましたよ。綺麗な心を持ちました」

 「あ。ルナさん。起きましたか」


 オレの背中で、ぐっすり寝てくれていたルナさんが起きた。


 「ええ。拙者と兄上、それに父上ではあのように育ちませんでしたよ。あなたの指導のおかげです」

 「そうですかね」

 「そうですよ……ありがとうルル。拙者の家族の命は助かりました。これにて拙者も、帰れますね」

 「待ってますよ。師匠。寂しそうでしたからね。手紙も読んだでしょ?」

 「手紙・・・・・ああ、あのメモですね」

 「メモ? 師匠メモって言ってたけど、本当は手紙でしょ?」

 「いいえ、ルル。あれはメモですよ。『無事でいろ』 これしか書いてませんでしたからね。メモですね」

 「はははは。師匠らしい一文ですね」

 「はい。グンナーさんらしくて素敵でしたよ」


 師匠のぶっきらぼうな優しさを知るオレとルナさんは笑いあってこのダンジョンを後にした。


 ◇


 里に帰還したオレたちは、里中から大歓迎を受ける。


 「よくやったぞ坊ちゃん」「おお。長の孫! 偉いぞ!」

 「ルルちゃん、お団子。食べに来なよ」「これで我らの里も安心だ」

 「そうだな。剣聖がいるのだ。何十年ぶりだ」


 なんか途中でお茶屋のおっちゃんの声が聞こえた気がした。

 アマルだけじゃなくて、オレのことも心配してくれていたんだと思って、ちょっと嬉しかった。

 大パレードのような通りを抜けて、オレたちは屋敷に戻る。


 「よくやった。よくやったぞ。アマル。おおおおおお」


 鼻水まで出てる爺さんがアマルに抱き着く。

 その後ろでブランさんは涙をこぼして喜んでいた。


 「ああ、そうだ。よく無事だった。アマル」

 「はい。拙者。ルル殿と姉上のおかげで生き残りました」

 「そうか。そうか。立派になって」

 「爺さん。そこんところは後で説明してやるから、オレ、寝てもいい? 結構・・・やばっ。あれ」

 「「「ルル殿!!」」」「ルル!!」


 ここから記憶がない。

 安堵感に包まれたら一気に疲れが出てきて玄関先で死んだように眠ったんだ。

 次の記憶は三日後だ。



 ◇


 「起きろじゃ!!! 三日目じゃ!!! 暇じゃ!!! 暇!!! 余は話し相手がいなくて暇じゃ」

 

 理不尽な理由で起こされたのである。

 オレが倒れた時の師匠は、黙って見守ってくれていたというのに、この小鳥はやかましいったらありゃしないのだ。

 

 「クソ、やかましい・・・レミさんかよ。オレの親父みたいに騒ぐなよ」

 「お! 起きたのじゃ! ルル、余は暇じゃぞ!」

 「ああ、そうですか」

 「リアクション薄いのじゃ。久しぶりなんじゃから、感動せい!」

 「いや、起きてすぐに鳥が目の前ってね・・・誰も感動しないでしょ。ルナさんかアマルがいてくれるなら感動しますけどね」

 「おお、酷いのじゃ・・・おろおろ、あの時助けてやったのに・・・酷いのじゃ」

 「たしかにさ。あの時に助けてもらったけどさ。あれってさ、あんたがいなかったらエルジャルクは攻撃して来なかったんじゃないの?」


 そうだ。気になっていたんだ。

 あの時のエルジャルクは、レミアレスを出せと言っていた。

 つまり、レミアレスに用があったんだから、オレには用がない。

 じゃあ、レミさんいなかったら、あそこはスルーだったんじゃないの?


 「ギク!? そ、そんなことはないじゃろ」

 「いや、あんたさ。あの時にエルジャルクに存在がバレたって言ってたよね? あんたのせいじゃん」

 「ヒューヒュー」

 「口笛できない鳥ってどういうこと!? 鳴けないじゃん!」


 とまあ、レミさんはごまかしに入った。


 「そうだ。レミさん、エルジャルクとはどういう関係なのよ」


 レミさんが急に真顔になった。感情表現が激しい鳥である。


 「・・・余と奴は正反対なのじゃ」

 「正反対?」

 「うむ。奴は闇。余は光。相反する力を持つのじゃ。互いにとっての抑止力じゃ。じゃから奴は余を邪魔だと思っておるのじゃ」

 「はぁ? まあ、レミさんにとっての天敵でライバルみたいな関係ってことだな」

 「そうじゃな。簡単に言えばな」


 オレはここで奴との決戦での事を思い出した。


 「レミさん。そう言えば、あいつ。あんたのことをレミアレスと言っていたぞ。あれが本名か」

 「そうじゃ。隠しておこうと思ったのにじゃな。あ奴のせいで、ムカつくのじゃ」

 「なんで隠す必要があるのよ?」

 「だって・・・余、レミアレスの姿じゃないのじゃ」

 「は?」

 「余。ちっこくなってもうたんじゃもん。恥ずかしいのじゃ」

 「へ~、そうすか」

 「なんじゃ、その態度、失礼じゃぞ」

 「いや、別にちっこくても大きくてもレミさんはレミアレスだろ。なら恥ずかしがることないだろうが」

 「おおお。ルルは優しいのだな。褒めて遣わそうなのじゃ。ハハハハ」

 「はぁ、そうですか」


 感情どうなってんのよ。この小鳥。

 と思ったことは内緒にしよう。


 

 ◇


 オレの回復を待っていた四人と、大広間で会話をした。

 オレがそちらに向かうと、爺さん、ブランさん、ルナさん、アマルの順で並んでいた。


 「どうもっす。すみませんね。三日も寝てたみたいで」

 「いや、こちらこそ。あなたの体調を見抜けず……、その悪い中でもルナまで運んでいただき、感謝します」

 「いえいえ。当然のことですよ。ブランさん。ルナさんはオレの師匠の様な人ですからね。家族も同然です」


 ブランさんは丁寧に謝って来た。

 

 「ルル殿。此度の件、大変感謝する。サクラノの長としても、この子の祖父としても、ワシは感謝してもしきれない・・・でも感謝するしか言えないのだ。受け取って欲しい」

 「おう。受け取る! だから爺さん。そんな堅苦しくいかなくてもいいぜ」

 「うむ。だがな。恩人であるからにして」

 「まあまあ。そんなに気にすんなって・・・それよりもアマル、お前の気分はどうだ? 覚醒しちまってだいぶ感覚が落ち着かんと思うんだけど」

 「はい、その通りです。動きが違います。いえ、世界が違うと言った方が良いかもしれません」

 「なるほど。別世界に送り込まれたかのように、お前の目には今が映ってんだな。そうだな、今後の組手は大変になりそうだな。慣れていくしかないな」

 「はい。精進します」

 「ああ」


 アマルはやはり覚醒した影響で別人格のようになって、立派な武人だった。


 しばしの談笑後。


 「そこで悪いのじゃが・・・」


 爺さんが重い口を開いた。

 内容が頼み事だったから、言いにくそうにしていた。

 こんな大事を頼んだのに、またすぐにお願いするのがいたたまれない。

 そんな感じがする。


 「ルル殿、つ、疲れている所悪いが、王に謁見してくれないか」

 「王?」

 「うむ。テレミア王国の王ゲイン様にだ」

 「なんで、オレが? 必要ないだろ」 

 「それが、この国が剣聖を保有することになったので、アマルは王に謁見せねばならんのだ。そして、それを報告する際に、ルル殿が来てほしい。と王がご所望でな。ぜひ一緒に来てくれと」

 「アマルだけでいいじゃんか・・・オレ、王とか興味ないしな」

 「そこをなんとか、ワシの顔を立ててほしいのだ…」


 申し訳なさそうな爺さんが可哀そうだと思ったオレは、しょうがないと思いながら口を開いた。


 「そうか・・・じゃあ、いいよ。でもそちらさんの態度によってはあんまりいい感じにはしないぞ。オレって、おべっかは使わないからな」

 「分かっている。来てくれるだけでもいいのだ」

 「うし、じゃあ、アマルと一緒に行けばいいんだな」

 「そうだ。すまぬ」


 ここで気になることを一つ。


 「そうだ。ルナさんはどうするんですか?」

 「拙者ですか」

 「帰らないんですか?」

 「帰ります!! ルルのおかげで胸のつっかえは取れましたしね。グンナーさんの元に帰ります」

 「そうですか。それじゃあ、この手紙をお願いします」

 「ぶ、分厚いですね・・・束になってます」

 「ええ。これは師匠宛てとその他宛てに書いてますからね。師匠に他の人の分も渡してもらおうと思ったんですよ。それに前から手紙は書いていたので、結構かさばりましたね。ははは」

 「なるほど。わかりました。グンナーさんならば快くやってくれるでしょう」

 「はい。お願いします。それじゃあ、後の事はオレに任せて、ルナさんはグンナーさんの元へで!」

 「はい。これをしっかりお渡ししますね。ルル!」


 こうしてオレは全ての事をルナさんに託し、アマルと一緒に王謁見の準備に入った。


 三日後にルナさんが里を出るらしいので、それに合わせて、オレたちも王に会おうとの計画になった。

 それにだ。

 皆さんもご存じの通りだ。

 ルナさんはやばい。

 何がヤバいって、一人にしたらヤバいでしょ。

 一人だったら、どこに行くんだろうね! 

 ジャコウ大陸どころか、王都にも行けないんじゃないかな。

 うん。

 もしかしたら、間違えて魔大陸に行っちゃうかもしれないよ。

 


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