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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

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第14話 異変発見

 八階の入り口。

 足を一歩踏み入れた瞬間に驚いた。

 この階層。

 モンスターの匂いで、階の匂いが埋め尽くされていた。

 数歩歩いただけで、モンスターと出くわすような。

 おそらくはそんな密集率だ。

 

 今いる入り口付近から見える光景でも戸惑う。

 モンスター同士が殴り合って、喧嘩状態だった。

 この状態は縄張り争いに近いのかもしれない。

 こんな事はダンジョンでは滅多に起きない現象だ。

 野良のモンスターがする事だ。

 

 

 「る、ルル殿。これはどうやって・・・」

 

 アマルが話しかけてきた。


 「この数はまずいわ。一回でも戦いに入ったら、一挙に周りとも戦闘に入るかもしれないな。やべえわ」


 アマルの不安を煽りたくないが、オレの内心の焦りが表に出た。明確な答えを返してやりたかった

 


 「ルル。これは様子がおかしいのじゃ」

 (お! レミさん。急になんだよ)


 普通に会話したら頭おかしい奴と思われるので、オレは小声で話した。

 

 「目を見ろ。モンスターの目が赤いのじゃ」

 (それはいつもの事だろ)

 「違う、よく見ろ。目の中にさらに模様があるのじゃ」

 (模様????)


 モンスターたちの目を観察してみる。

 スキル鷹の目を上手く利用して、敵の目を拡大した。


 赤い瞳はモンスターの証。

 でもそれは一色の赤が基本である。

 人間の血よりも少し暗い色の赤が基本形態だが。

 ここらのモンスターの目は、その赤い目の中にもう一つ明るい赤の目があった。

 二色の赤の瞳が不気味に輝いていた。


 「怯えかじゃ?・・・・それともなにかじゃ?」

 (うん。そうかもしれない。レミさんの言ったとおりかも。警戒しよう)


 レミさんの助言を有難く受け入れて、とある準備をする。

 マジックボックスから必要なものを全て取り出した。



 ◇


 「アマル。ルナさん。ここからオレたちは出来るだけ戦わないで走り去ります」

 「・・・ん?」


 アマルは頭を傾げた。


 「それは・・・そうした方がいいでしょうが。どのようにするのですか。ルル」

 「これです。オレたちはこの布を使って縦一列で走り抜けます!」


 ロングのバスタオルのような布を用意した。

 

 「こんな感じで、三人が一緒になって、静かに走る。桜花流の所作を応用します」


 オレは布を頭に被せて、走り方のお手本を見せる。

 足音を立てずに、体のブレを起こさずに進む動きだ。


 「ルル、そ・・・それは無理があるのでは。このモンスターの数ではすぐにわかられてしまう」

 「ええ。そうです。このままでは無理があります。ただ、こちらのモノがあれば別です」

 「「?????」」

 

 オレが取り出したのは緑の液体が入った小瓶。

 かなり独特で特殊なものである。

 これはジェンテミュールにいた時には使用しなかったものだ。

  

 「それはなんでしょう? ルル」

 「これはですね・・・モンスターの感知能力を乱す香水。自分と同種だと思い込む匂いでくれます。この匂いの成分の中にモンスターの認識能力をかき乱す成分があるんですよ」

 「え?? そんなのものがあるのですか」

 「はい。この液体を被った物や人は、モンスターから発見されにくくなる。だからこれは戦いを回避するためのものですね」

 「・・・・知りませんでした」


 ルナさんは、軍の知識にもないと真顔で悩んでいた。


 「これは以前、ジェンテミュールで活動中に覚えたスキルです。ジョブ『魔物使い』これの初期スキルの『気配消し』と呼ばれる調合薬ですね。魔物使いの初期スキルは、このスキルと、『使役』と呼ばれるものがあります」

 

 ジョブ『魔物使い』

 モンスターを使役することが出来る魔物使いは、使役するために自分の匂いを消してモンスターに近づかないといけない職業である。

 自分自身が強化されるスキルや戦闘スキルが少ないからこそ、命懸けの作業をしなくてはならない。


 彼らは、モンスターに近づいた後に餌付けをする。

 そこで、この職業の真の力が試される試練が訪れる。


 あげたエサが美味しいなどで、モンスターが次第にその人物に慣れてくれてれればチャンス。

 逆に不味い、気に入らないと思うと、モンスターは餌をあげた途端に暴れ出したりする。

 ドキドキの瞬間を毎回味わうスリリングな職業なのである。

 

 そこでオレは、その餌付けも学んだのだが、その難しい流れを会得出来ず、彼らの匂い消しの技術だけは覚えることが出来た。

 いつか使うかもしれないと、念のため取得しておいてよかったのである。


 魔物使いは特殊職。

 独特なジョブなために、この職業になれる人も珍しい。

 さらに魔物使いには、頂点たる英雄職がある。

 それは、ビーストマスターと呼ばれる職業で、伝説級のモンスターも使役できるとか言われている。

 案外極悪の職業であるのだ。

 その人の心が優しい人であったら、嬉しいですな。

 なんてったって、モンスターを悪用したら世界が破滅しそうだからね!!

 それくらいにビーストマスターが悪人だとまずいのよ。


 

 「これ、振りかけるために開けますよ」

 

 香水の瓶を開けると匂いが来る。

 ツーンと鼻を刺す臭いである。


 「くさ!!!」

 「う・・」


 アマルとルナさんが鼻をつまんだ。


 「しょうがないです。こればかりはね。向こうにはこの匂いは無臭なんですよ。でも人間にはこの匂いは臭い。厄介ですよね。鼻の作りが違うってね」

 「え、ええ。そ、そうですね。ルル、本当にこれで効果があるのですか」

 「あります。持続時間は二十分ほど効果があります。なので走り抜けますよ。時間がないのでこれを振りかけたら、急いで走ります。この分しか、オレも持ってないのでチャンスは一回です。いきますよ」

 「わかりました。やってください」


 液体を満遍なく布にかけて、染みた匂いを一旦乾かして効果を上げる。

 ここからオレが先頭に入り、アマル、ルナさんの順でタオルの中に入った。


 「それじゃ、いきます。息を合わせてください。アマル、ルナさんのフォローを受けろよ」

 「はい。姉上。お願いします」

 「わかりましたよ。アマル。気にしないで走りなさい。遅れそうになったら拙者が押してあげます」

 「はい」


 オレたちは歩幅を合わせて走った。


 「いきますよ。1,2と」


 最初の歩数さえ合えば、オレたちはスムーズに走ることが出来た。

 モンスター同士の小競り合いは近くに行くと大迫力。

 さっき戦った同種のモンスターたちもいたが、その他のもいた。


 「ルル殿。あ、青鬼です!?」

 「ミノタウロス亜種!? なんでだ。この階層でAランク帯がいるだと」


 まだ八階だぞ。

 なのにモンスターレベルが高すぎる。


 「ね。寝てるからな。こいつの強さには誰もちょっかい出せないんだな。でもどういうこった。どうしてこんな場所に・・・」


 階層で言えば中層くらいで出てくるはずのミノタウロスがなぜかここにいる。

 俺たちはそおっと隣を通り抜けた。


 「本当に気づかないのですね」

 「ええ。この匂い消しはあっちには無臭に感じるんですよ。ただ俺たちもサクラノの所作で、気配を出来るだけ消す技を持ってますからね。この匂いによる気配消しの効果がさらに高まってますね」

 「な、なるほど・・拙者も出来ているのですかね」

 

 アマルは聞いてきた。


 「ああ、出来てるぞ。お前、ここ最近になって所作が良くなってきたからな。やっぱさ。自信がお前を変え始めたらしいわ。アマル、勇気と自信は持ち続けろよ。あ、でも謙虚さもだぞ」

 「うむ。ルル殿、了解した」

 「ああ」


 ◇


 オレたちはこの匂い消しの力で、無事にこの現場を突破した。

 効果がなくなった布を取って、八階部分の階段で下を見る。


 「ひしめき合うというのは当たっていたか」

 「こ、これは」

 「はい、相当数いましたね」


 モンスターの群れは、先程から考えると五、六倍以上の群れになっていた。

 リーダー格が存在する群れ。

 通常であればこれほど密集していたら、どこかでモンスター同士の大乱闘が発生するだろう。

 オレでも見たことがないが。

 だけどここでは小競合い程度で済んでいる。

 それは何故か。

 冒険者をやって来たオレにも分からない。

 だけど……。


 「戸惑ってるのじゃ。こいつらも。ルルたちもな」

 (ああ。そのとおりだ。モンスターも戸惑う現象が・・・このダンジョンのどこかにあるんだな)


 レミさんの意見に賛成だ。

 目下のモンスターたちの戸惑いは、オレらにも感じられた。

 そして、次の階に行くと、戸惑いは爆発した。


 ◇


 「馬鹿な・・・」


 オレは目の前の九階の光景に驚き。


 「いません」


 ルナさんは冷静で。


 「本当だ・・・なぜいないのか」


 アマルはキョトンとしていた。


 でも、このフロアの現状は冒険者であれば必ず驚く。

 それはモンスターたちの気配のけの字すらないことだ。

 視野の端にもいない。匂いもない。出現する雰囲気もない。

 今まさにありえない現象がここにあるのだ。


 「どうしてだ・・・下の階層にはあんなにいたんだぞ・・・さっきいた五階層らへんの気配よりも、敵の気配を感じないってことは、モンスターが0って言ってもいい感じだ。どういうことだ」

 「ルル、いないなら行きましょう。早く行ってしまった方がいいです」

 「・・・た、たしかに・・・・んんん。まあ、悩んでも仕方ない。そうしましょう」


 オレたちは何もない九階を難なく突破した。

 だが、この状態に嫌な予感がする。

 ありえないことがダンジョンで起きるということは、それ以上にありえない事が起きるという事だ。

 大きな事が起きる予兆が、ここにある気がする。

 冒険者としての勘が、オレにそう囁いていた。



 ガルズタワーの十階の道は外にある。

 道は、螺旋階段のようにグルグルと塔に巻き付いているのだ。

 だからオレたちは外に出た。

 そして、外に出て・・・・・。


 「な!?」


 今までのダンジョンでの理解しがたい状態を、理解したのだ。

 

 「くそ! なんでこんな時にだ。信じられん!!!」


 頭を掻きむしるほどに焦った。目の前の光景が、異常事態だ!


 「ルル、どうしました?」

 「見てください。あの奥! あれは・・・・」


 塔の外から見える。

 赤い小さな風を指さした。


 「なにもありませんが?」

 「いいえ。あります・・・・あの現象、あれは赤い竜巻。その源になる風だ・・・」


 あれはそう。

 この大陸最強の災厄。


 「ジョー大陸の災害モンスターストームだ!」


 そう十階から見えた外の景色。

 それはジョー大陸の未曽有の災害。

 『モンスターストーム』である。

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