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俺の周りは英雄職だらけなのに、俺だけ無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~  作者: 咲良喜玖
侍の里 剣聖の師は無職

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第13話 ズレていく感覚

 三角形の陣形を基本として、ダンジョンを突き進んでいるオレたちは、先頭がルルロア、左子方がルナ、右後方がアマルでバランスを整えている。

 冒険者じゃない二人が、ダンジョン内で先頭を行くのは危険。

 だからこそ、オレが先頭を担当している。

 性分に合わないけど、ダンジョン経験を活かして、皆で生き残るんだ。


 

 そしてオレのような死線を潜り抜けてきた冒険者でも、ダンジョンでの戦闘に慣れていない二人を連れていくのは非常に難しいことであった。


 オレが進む方角とは別な方に進もうとしたり、オレが怪しいと踏んだ場所でも行こうとしたりと・・・。

 あれ? それってルナさんが悪いんじゃないか。

 方向音痴だし。

 実際、アマルはオレの言う通りに動いていて手を煩わせていないぞ。

 あれ? 実はルナさんの方がやばいんじゃ。

 なんて思っていることは内緒にしよう。



 それとアマルもだが、ルナさんも戦いで苦労していた。

 軍で何百体とモンスターを討伐した経験があるというのに、ダンジョンでのモンスターの動きと、野良でのモンスターの動きの違いに混乱していたようだ。

 それにアマルにとっても、ゴブリンジェネラルのような単調な動きではないダンジョンのモンスターは厳しそうだった。


 でもなぜか、こんな苦戦状態でも、有難いことに順調な階層突破をしていた。

 モンスターも五体以上の複数出現はしないし、それに出現感覚も長く、体力の維持管理もしやすかった。

 

 だが、7階からは、がらりと雰囲気が変わるのである。


 「危ない! ルナさん。左を押さえこんで。アマルの方にいかせないでほしいです! そんでアマル、右は斬らなくていい。全部受け流してずっと防御に回れ。時間を稼げ」

 「ルル、任された」

 「ルル殿、了解」


 ルナさんの側面から急に飛び出してきたのはアルミラージクロス。

 アルミラージの最高ランク帯Bランクのモンスターで、得意攻撃は前蹴り。

 戦闘に乗り気な前傾姿勢のファイタースタイルだ。

 しかし、チルチルとは違い、どっしり構えてから、飛び跳ねてくるのが常である。

 

 突如として、ルナさんの方に同時に三体現れたことで彼女の足が止まる。

 そして、アマルの方にはスクエアスライム四体。

 四角い形の大型スライムで、物理攻撃に耐性のあるモンスターだ。

 サイコロみたいにパタン、パタンと移動してくる分、速度はないけど、物理攻撃があまり通らないモンスターで、冒険者のパーティーが物理メインだと苦労するモンスターである。

 刀攻撃がメインのアマルでは、倒すことは不可能に近いので、相手の攻撃をいなし続けろと指示を出した。


 「そしてオレはこいつかよ。一瞬で決着をつけたいのに・・・多い!!!」

 

 目の前にいるのは、スケルトンナイトで、Cランク帯の骸骨剣士だ。

 スケルトンシリーズは、スケルトン。スケルトンアーチャー。スケルトンナイト。スケルトンウィッチ。キラースケルトン。

 そしてあの『ブラッドレイン』である。

 奴が頂点にいるのがスケルトンシリーズだ。

 ダンジョンにいる今の状態であいつを思い出すことになるとは、苦々しい思い出は出来るだけ胸にしまっておきたい。


 30体以上ものスケルトンを前にして、後ろを気にしないといけない。


 「数が多い。時間がないのにさ。ふざけんなよ」


 獣化(ビースト)を解放。

 本来であれば仙人の力で一挙に片付けたかったのだが、それではこの先の戦いを続けられなくなると判断し、すぐに選択肢から除外した。

 だからオレは、自分のスキルの中で、最高クラスの戦闘スキルである獣化(ビースト)を選択したのである。


 「ぬわ。わらわら、どんだけいるんだよ」


 一体、二体・・・三体と、次々と斬っていくが、減っていかない。

 骨がうようよとオレの周りにいる。


 それに斬っていっても、得られる感触が、骨。骨。骨である!

 モンスターの肉を切るよりも気持ち悪い。

 それにこの骸骨は素材がないのです。

 冒険者ってのは、旨味がない。

 味のしないモンスターが嫌いである。

 オレは、特にこのスケルトンシリーズが大嫌いだ。

 何か落とせ。

 骨以外によ!!!!



 ◇


 「ぐっ! 桜花流 一分乱れ咲き」


 ルナの連続の横一閃の攻撃が炸裂。

 アルミラージクロスを二体撃破。

 ・・・だが、三体いた内の二体だ。

 残り一体を取り逃してしまう。


 「しまった! アマル! 気を付けなさい。あなたの背後にいきました」


 振り返りながらルナが、アマルに忠告した。


 「え!? 拙者の方に?」


 スクエアスライムの攻撃を左に右にと、アマルが攻撃を逸らしていた所に、声をかけられた。

 アマルが後ろを振り向くと、背後から来るアルミラージのキックが見えた。


 「む! これは。まずい」


 前方にはサイコロのように迫るスライム。

 背後には飛び蹴りのアルミラージ。

 どちらを対処すべきかと悩んだその時、アマルに不思議な感覚が訪れる。


 「遅い・・・動きが・・・あれ?」


 アマルの目に映る敵の動きが遅い。

 しかし、アマル自身の動きが遅くない。

 いつものように手も足も動くのに、他がゆっくり動いているように見えたのだ。


 「こ、ここか?」


 アマルは前方のスライムを先に攻撃した。

 だが、それは空振りに終わる。

 なぜなら、自分の動きと相手の動きが噛み合わなかった。

 相手の動きが遅すぎる上に、自分の攻撃が速すぎる。

 アマルはそのおかしな感覚に襲われていた。

 攻撃を外した後に立ち止まる。

 

 「は、外した????」


 前後の敵に挟まれるアマル。

 両方の攻撃を止める手段はもうない。


 ◇


 「なにしてる。アマル! ちっ。一瞬解放!」


 オレは、仙人の力を解放して、敵に挟まれているアマルをギリギリで救出した。

 抱きかかえて後ろに後退した後、すぐに仙人の力を解除。 

 力の節約は出来た。


 オレはルナさんに指示を出す。


 「ルナさん、前方の骨を頼みます。あと6体です」

 「任されました。アマルは無事ですか」


 ルナさんは、こちらを向かずに言った。


 「ええ、無事です!」

 「ならばよし。ルル、あとは拙者に任せなさい! いきます」


 ルナさんは正面奥のスケルトンナイトの方に向かい。

 オレはアルミラージクロスとスクエアスライムを視野に入れながら、アマルと短い会話に入る。


 「アマル! ぼさっとするな」

 「ルル殿。拙者、おかしいのだ」

 「なに?」

 「拙者の目に映る相手の動きと、自分が体感する動きが一致しないのだ」

 「は?」

 「ゆっくり動く。周りが・・・戦う時に特に。遅い。遅すぎるのだ」

 「・・・・どういうこった?」

 「わからない。ど、どうすれば」

 「アマル、今は悩んでもいいけど。ここは、オレとお前で連携を取る。ちょっと手伝ってくれ」

 「わ、わかりました」


 アマルの言っていることは本当だと思う。

 アマルの顔が、モンスターにビビっているわけじゃなく、戸惑っていたんだ。

 自分の動きと目が一致しない? 

 敵がゆっくり動く?

 なんだそれは???


 オレは疑問に思ったことを押し殺して、準備に取り掛かった。


 「こいつら、両方厄介だもんな。よし、アマル前方に向かって走れ。敵に突っ込んで来い」

 「わかりました」


 素直なアマルは、真っ直ぐ走り出した。

 その姿を確認してオレは速攻で魔力を練る。


 「いくぞ。魔法使いの『魔法の本質』だ。初期魔法『アイス』」


 魔法使いの上級職。

 氷結魔法使い。灼熱魔法使い。雷鳴魔法使い。

 これらは応用魔法を行使できる魔法使いだ。

 応用とは、二種以上を混ぜて魔法を行使することだ。

 氷結は、水と風。

 灼熱は、火と風。

 雷鳴は、火、水、風。

 他にも組み合わせがあるけども、主なものはこれらだ。


 それで、アイスは氷結魔法使いの魔法。

 通常のアイスは、コップくらいの大きさの氷しか出ないが。

 オレのアイスはバケツくらいの氷のつぶてほどになる。

 魔法もだが、オレの職人気質の影響をもろに受けるらしく、修練すれば勝手に強くなってくれる事に、オレは自分のタレントに感謝している。


 「アルミラージの足を凍らす。先に斬れ」

 「うむ」


 コントロールされた氷がアルミラージの足に絡まり、どこにもいかないように固定。

 そこにアマルの一閃が入った。


 「よし、アマル。よくやった。次、スクエアスライムに行くぞ」

 「・・・拙者の攻撃では難しいのでは」

 「いける。オレが凍らせたところを突け!」

 「わかりました!」


 さっきよりも魔力を練り、氷のつぶてを大きく展開して四個。

 敵の核と見られる付近に発射。

 スクエアスライムにバチンと当たると、その表面が凍り始めた。


 「アマル! 凍った部分を突け。斬るんじゃない。突いて完全破壊しろ」

 「うむ」


 アマルは更に加速する。

 前に突き出した刀を地面と平行に持っていった。


 「桜花流 石割桜」


 アマルは、桜花流最速の突き攻撃を披露。

 一点突破の最大攻撃力の部分を、見事に敵の凍った部位に当てた。


 『バギッ』

 

 氷の部分だけ、肉体が脆くなっているスクエアスライム。

 刀の先が氷に入り込んでいって、すぐにコアまで到達した。


 泡となり消えるスライムを置き去りにして、アマルは移動を開始。

 連続で残りの三体に対して同じ動作で攻撃した。


 「た、倒せた」

 「よくやった。アマル。成長したぞ」

 「いえ、ルル殿のおかげで、拙者はただ突いただけであるので・・・」

 「いや、あそこに寸分違わずに攻撃できているんだ。あの攻撃は素晴らしいんだぞ。よくやった」

 「うむ。頑張らせてもらったのだ」


 アマルは油断をしないイイ男になった。


 「あ、ルナさん!」


 オレたちが会話をしている最中に正面から、ルナさんがやって来た。


 「骨、倒しました」 


 剣を鞘に納める動作が美しい。

 相変わらず戦う時だけは、ルナさんはとても頼りになる人だ。



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